ヘルパンギーナは、夏風邪の一種で、おもに乳幼児に多く発生するウイルス感染症だ。患者数は、例年5月頃から増え始め、7月にピークを迎えて、8月から減少して、9月には収束する。

 国立感染症研究所の発表によれば、29週目(7月14~20日)のヘルパンギーナの患者数は1万5547件だったものが、翌30週(7月21~27日)は1万2979件に減少。今年も、そろそろピークは過ぎ去りそうだが、免疫力が低下していると感染リスクも高まるので、夏の疲れが出てくるこの時期は油断禁物だ。

 冬の風邪がコロナウイルスやライノウイルスを原因とするものが多いのに対して、夏風邪のヘルパンギーナは、高温多湿の時期に活発になるエンテロウイルスの感染によって発症し、中でもコクサッキーウイルスA群・B群やエコーウイルスが主な原因となっている。感染すると、2~4日の潜伏期間を経て、突然、発熱するのが特徴。おもな症状は次の3つだ。

(1)38~40度近い高熱を出す
(2)口腔内に複数の水泡ができたり、口内炎ができる
(3)喉や口蓋垂(のどちんこ)が赤く炎症する

 乳幼児の場合、ヘルパンギーナにかかると、高熱による熱性けいれんを起こすことがある。また、水泡が破れたり、喉に痛みを感じるため、おっぱいを飲まなくなったり、食事を嫌がったりすることによる脱水症状を起こすこともある。いずれも適切な治療を行なえば、回復に向かうが、まれに無菌性髄膜炎、急性心筋炎などを合併することもある。夏風邪と油断せず、ヘルパンギーナが疑われる場合は医療機関を受診し、注意深く観察するようにしたい。

 いまのところ、ヘルパンギーナの特効薬や予防のためのワクチンはなく、罹患すると熱を下げたり、水泡の痛みをとったりするための対症療法しかない。

 できるだけ感染しないためには、夏でも油断せずに、うがい・手洗いを心がけたい。また、エンテロウイルスは発熱や水泡などの症状が治まったあとも、2~3週間以上、便から検出されることも多い。大人への二次感染を防ぐためには、ヘルパンギーナに感染した乳幼児のおむつ交換には注意を払い、使い捨ての手袋を使ったり、手洗いするように気をつけたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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