「子どもの貧困率16.3%」「6人に1人の子どもが貧困状態」

 これは、どこか遠い途上国の話ではない。世界で3番目にGDPが高く、経済大国と言われている日本の子どもの貧困率だ。

 7月15日に厚生労働省が発表した「国民生活基礎調査」によると、2012年の日本の相対的貧困率(平均的な所得の半分以下で暮らしている世帯の割合)は16.1%。記録が残る1985年以降、過去最悪となった。子どもがいる現役世代に絞ってみても、貧困率は年々増加しており最悪の15.1%。なかでも、母子家庭などのひとり親世帯は54.6%と高い貧困率を示している。だが、両親が揃っていても12.4%が貧困線(平均的な所得の半分の額、2012年は年収122万円)以下で暮らしていることも明らかになっている。

 こうした貧困率の高い家庭で暮らす18歳未満の児童の割合を示したものが、「子どもの貧困率」だ。2012年は全体の貧困率を上回って16.3%となっており、実に6人に1人の子どもが貧困状態にいることになる。

 子どもの貧困率が上昇している背景にあるのは、扶養者である親の労働環境の悪化だ。総務省の「労働力調査」によると、2013年は労働者全体の36.6%が非正規雇用で、中でも、年収200万円未満で働く人の割合は、男性が57.7%、女性が85.6%となっている。

 一昔前までは、派遣社員やパートタイマーで働く人の多くは女性で、安定した収入のある夫に養われる妻が家計を助けるという位置づけだった。しかし、経済界の都合のいいように労働者派遣法などを改正した結果、いまや正社員への道は厳しいものになっている。前述のように、全労働者の約4割は非正規雇用だが、男性が派遣やパートについた理由は「正規雇用の仕事がない」が最も多い。

 仕方なく不安定な低賃金労働をするしかないために、貧困線以下で暮らす人々が増加。その結果、子どもの6人に1人が貧困という連鎖をつくり出しているのだ。

 諸外国と比較してみても、日本の相対的貧困率はOECDに加盟する34か国中ワースト6位で、下から数えたほうが早い(2010年)。OECDの『対日審査報告書2013年版』では、日本の貧困の特徴として、「日本は、勤労者世帯や子どものいる世帯で、税及び給付を考慮した後に貧困率がより高くなるOECDで唯一の国である。さらに、相対的貧困率は働く一人親世帯で60%程度とOECDの中で最も高く、子どもの貧困の高い発生や世代を超えて貧困が受け継がれるといったリスクを引き起こしている」と指摘している。そして、次の3つの問題点を挙げている。

(1)格差を是正する上での税と給付制度を通じた再配分効果が小さい
(2)日本の2極化した労働市場が賃金格差を拡大させている
(3)教育制度が民間支出に著しく依存し、その結果、教育成果の格差に繋がっている

 適切な教育を受ければ、この国の未来を背負って立つ優秀な人材に育つかもしれない子どもたちが、親の所得によって教育を受ける機会を奪われるのは国家として大きな損失のはずだ。

 未来ある子どもたちを貧困から救うためには、国が所得の再配分機能を強化させ、早急に労働法制や教育支出を見直す必要があるのではないだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
ジャパンナレッジとは

ジャパンナレッジは約1700冊以上(総額750万円)の膨大な辞書・事典などが使い放題のインターネット辞書・事典サイト。
日本国内のみならず、海外の有名大学から図書館まで、多くの機関で利用されています。

ジャパンナレッジ Personal についてもっと詳しく見る