人通りもまばらで、少し薄暗い印象のあった鉄道のガード下が、物件不足に悩む都市部においては出店の狙い目となっているらしい。いかにも「ガード下の飲み屋」といった店舗に代わって、若者向けのこじゃれた店も次々と開店している。立地的には、駅と駅との間にあるので「駅間」→「駅カン」と呼ばれることが多い。

 マイナス面として、電車の通過する音とともに室内が揺れる「あの感じ」があるわけだが、近年の技術によってだいぶ抑えられるようになった。とはいえ、絶好の環境ともいえないので、賃料が安い。そこは考えようによってはメリットだ。この立地でも商売が成功することは、駅周辺の活性化にもつながるので、鉄道会社にとってもありがたい。「駅カン」は、いま東京でもビジネス的に要注目のスポットなのだ。

 ちなみに、利用はビジネスだけにとどまらない。学童保育や図書館の窓口といった、公共的な施設が設けられる動きも出てきた。地域住民の生活を充実させる「駅カン」の利用は、都心の鉄道の高架化(踏切がなくなるので交通の流れがスムーズになる)にともなって、ますます増えていきそうである。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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