8月20日、広島市で起きた土砂災害は多数の死者・行方不明者を出すとともに、安佐(あさ)南区、安佐北区の太田川沿い南北10kmの住宅を押し流すなど甚大な被害をもたらした。

 今回の土砂災害は被災者生活再建支援法が適用されており、住宅が一定以上の損害を受けた場合に「被災者生活再建支援制度」から支援金が給付される。だが、この支援金は最大でも300万円で、マイホームを再建するにはとても十分とは言えないだろう。そこで、こうした自然災害のときに、思い出してほしいのが個人で加入している火災保険だ。

 火災保険は、自宅から出した火事や隣家などからの延焼による損害をカバーするための損害保険で、「建物」と「家財」に分けて加入する。だが、補償範囲は火災だけではない。補償内容は加入している保険によって異なるが、いちばんシンプルなタイプでも、火災のほかに、落雷、破裂・爆発、風災、雹災(ひようさい)もカバーされていることが多い。さらに、今回のような土砂災害やゲリラ豪雨による水災(水害)がセットされているものもあるので、保険証券などで、自分がどのようなタイプの火災保険に加入しているのか確認してみるといい。

 ただし、風水害の補償で気をつけたいのは、10年以上前に加入した「特約火災保険」「住宅総合保険」「住宅火災保険」と呼ばれるものだ。土砂災害などで住宅が流失したり、倒壊したりしても、最大で保険金額の7割までしか補償されないので、万一の場合の住宅再建費用が賄えないことも考えられる。

 風水害などの自然災害の被害予測を地図にしたハザードマップを確認し、川の氾濫による浸水、土砂災害などが心配される地域に住んでいる場合は、水害時にも十分な補償が受けられるタイプの火災保険への見直しを検討してみよう。

 ハザードマップは、市区町村が広報などとともに配布しているほか、ホームページなどでも確認できることが多い。また、国土交通省の「ハザードマップポータルサイト」(http://disapotal.gsi.go.jp/)の「土地条件図」を見れば、土地の形状、地盤、埋め立ての歴史などもわかるので、被害程度を推測することも可能だ。

 ちなみに、地震、津波、噴火による損害は、地震保険に加入しないと補償は受けられない。この3つの自然災害が原因で火事や水害にあっても、火災保険では補償されないので、別途、地震保険に加入する必要がある。

 人間の力で、自然災害をなくすことはできないが、日ごろから被害を想定した準備は誰でもできることだ。そのひとつが火災保険をはじめとする損害保険への加入だ。いざというときに「こんなはずではなかった」とならないためにも、ライフスタイルに合わせて定期的に火災保険を含めた補償を見直すようにしたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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