「男爵」だとか「侯爵」だとか「~貴族」だとかの、なんとなく高貴な雰囲気が漂う爵位的なネーミングをストレートアヘッド(そのまんま?)に店名とする喫茶店のこと。広義的には「バロン」のようになんとなく仰々しそうな名前を店名とする喫茶店も含まれる。

 店名のロゴは、薔薇の茎部分のように刺々しい感じであるケースが多く、おもに24時間営業で、なぜかラブホテル街やホストクラブ街の手前あたりによく店をかまえていたりする。

 店員はかならず黒の蝶ネクタイで、コーヒーの味はそこそこだが、ナポリタンだとかハンバーグカレーだとかゆで卵つきのモーニングだとか、やはりそこそこな味のくせにソソるメニューが目白押しであるのが特徴。あと、禁煙や分煙とはまったく無縁であるのも特徴。

 今、筆者は、ある爵位系茶店でこの原稿を書いているのだが、年輩のワケありカップルのひそひそ話やホストと客の痴話喧嘩や怪しげなセールスのテンション高めなトークや得心のいかない借金話ほか……いつ行っても極上のネタがごろごろと転がっているのが大きな魅力だと言える。ただし、あまりに周囲が面白すぎて原稿に集中できないときもままあったりするので、両刃の剣だとも言えなくない。

[反意語] スターバックスコーヒー・カフェ

※昨今、スタバやチェーン系カフェ激増の影響で、爵位系茶店が次々と閉店を余儀なくされている。このまま喫煙者を含む“非効率的な人種”を“閉じ込める”スポットがなくなっていけば、街の風紀の乱れ(ポイ捨てなど)もいっそうひどくなるのではなかろうか?
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


山田ゴメス(やまだ・ごめす)
日曜日「ゴメスの日曜俗語館」を担当。大阪府生まれ。エロからファッション、学年誌、音楽&美術評論、漫画原作まで、記名・無記名を問わず幅広く精通するマルチライター。『現代用語の基礎知識』2005年版では「おとなの現代用語」項目、2007年版では「生活スタイル事典」項目一部を担当。現在「日刊SPA!」「All About」の連載やバラエティ番組『解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ)の相談員で活躍。著書に『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)など。趣味は草野球と阪神タイガース。
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