1991年にリサイクル法(再生資源の利用の促進に関する法律)が施行され、ペットボトルや缶などの容器包装、衣類、家庭用電気製品などのリサイクルは日本でも徐々に進んできている。その成果もあり、家庭や事業所などから出されるゴミ(一般廃棄物)は、環境省によると2000年の5483万トンから、2010年度には4536万トンまで減少した。とはいえ、その後は横ばいで、いまだに1年間に東京ドーム122杯分ものゴミが出されており、資源の再利用化が徹底されているとは言えない状況だ。

 ゴミの減量が頭打ちとなっている背景にあるのは、不用品や廃棄物の輸送、再資源化にかかるコストの問題だ。一度、製品化されたものを原料レベルまで分解し、再生するには、時として焼却処分する以上にコストがかかることもある。そうしたコストは製品の価格に反映され、従来品よりも割高になるため、リサイクル品が広まっていかない理由のひとつとなっている。

 だが、このリサイクル品に付加価値をつけ、デザイン性に優れた魅力ある商品に生まれ変わらせる「アップサイクル」という新たな試みが注目されている。

 たとえば、トラックの幌布と自動車のシートベルトを再利用したバッグは、デザインだけではなく、耐久性や実用性にも優れていてファンも多い。有名なデザイナーとのコラボレーションで、本来なら廃棄されるはずだったものを、デザイン性豊かなバッジやハンガーなどに生まれ変わらせたりしている団体もある。これらは、再利用品だけあって、同じ柄のものは他にひとつとないというオリジナル性も持ち合わせている。

 また、古着から再生ポリエステルの製造に成功した繊維メーカーでは、耐久性や機能性に優れた繊維を開発することで割高でも消費者に選ばれるアップサイクルを実現。原料となる古い商品を回収するシステムも作り上げ、アメリカやヨーロッパ、アジアへとその販路を広げている。

 いずれにも共通するのは、デザイン性に優れており、少々高くても消費者に「選びたい」と思わせる魅力あふれる商品作りを行なっていることだろう。資源の枯渇が心配される今、アップサイクル商品の開発は、単なる素材の原料化、その再利用という従来の「エコ」を抜け出し、新しいビジネスの息吹を感じさせる。

 捨てられる運命だったものに、再び命を吹き込んで蘇らせる「アップサイクル」。折しも来週はクリスマスだ。大切な人へのプレゼントに選んでみてはいかがだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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