東日本大震災を契機とした原子力発電所の事故、火力発電所の被災などによって電気の供給力が大幅にダウンした2011年。

 国は、東京・東北電力管内の大企業などに対して、電気事業法第27条による電力使用制限令を発令。さらに、電力使用量が増える夏や冬の間は、数値目標を設定して、企業や国民に節電を要請した。

 その年の夏の節電の数値目標は、東北・東京電力管内はマイナス15%、関西電力管内はマイナス10%。その他の電力会社管内は、数値目標は設定されなかったが、無理のない範囲での節電が要請された。

 冬は、原子力発電所の再稼働停止で電力需給が危ぶまれた関西電力管内がマイナス10%、九州電力管内がマイナス5%の数値目標が設定された。

 国による電力需要抑制は翌2012年も続き、夏は東京・東北電力管内をのぞく地域でマイナス3~15%、冬は北海道電力でマイナス7%の節電の数値目標が設定された。

 2013年以降は一応の需給見通しがついたとして、2013年冬の北海道管内をのぞき数値目標付きの節電要請は行なわれなくなり、この冬も具体的な節電目標は見送られた。

 しかし、この需給見通しは、震災以降に企業や家庭で行なってきた節電が定着したものとして、電気が足りるという見込みを出している。節電の定着分は、2010年度と比べて、東京電力管内はマイナス7.7%、関西電力管内はマイナス4.8%などと織り込まれており、震災以前のような電気の使い方をすると、需給バランスが崩れて電気が足りなくなる可能性が出てくるのだ。

 そのため、数値目標こそ設定してはいないが、今年の冬も、国は無理のない範囲で国民に節電を呼びかけている。

 一般家庭で、冬にいちばん電力を使う時間帯は、家族が家に帰り、夕食の支度などが行なわれる18時~21時頃。冬の夜(19時頃)に使われる電力は、エアコン30%、照明13%、冷蔵庫11%、テレビ6%の4つで消費電力の半分を占めている。

 部屋には厚手のカーテンをかけたり、着るものを工夫して、エアコンの温度は低めに設定。照明やテレビはこまめに消す習慣をつけたい。待機電力をカットしたり、電球を発光ダイオード(LED)に変えたりすることも有効だ。タイマー予約を上手に使えば、家庭内で電力使用のピークシフトもできるので、この冬も変わらずに節電を心がけたい。

 東日本大震災から4度目の冬を迎え、「もう、節電しなくてもいいのでは?」と、気の緩みも生まれてくる頃だ。しかし、いまだ東京電力福島第一原発の事故処理は終わっておらず、放射性廃棄物の行き先も決まっていない。まだ何も終わっていないのだ。

 国による冬の節電協力の要請期間は、2014年12月1日~2015年3月31日の平日(12月29日~31日、1月2日はのぞく)の9時~21時まで(北海道・九州電力管内は、8時~21時まで)。とはいえ、この期間が終われば、この国の未来のエネルギー問題がすべて解決されるわけではない。

 燃料費の値上げと、消費税の引き上げによって、電気代はじわじわと上がっている。これまで節電してきた人も、家計の負担は重くなっている可能性もある。

 国による節電の数値目標はないが、家計を守るためにも、電気の使い方を再点検する冬にしてみてはいかがだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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