2011年に福岡ソフトバンクホークスから米国大リーグへと渡った「ムネリン」こと川崎宗則内野手(33)によって、多くの野球ファンへと浸透していった造語。

 「スタメン」が「スターティングメンバー」の略であるのに対し、「スタベン」は「スターティングベンチ」の略。つまり、平たく言ってしまえば「補欠」のことを指す。

 川崎選手は試合中、たとえスタベンであっても常に自分の最高のプレイをイメージしつつ独特のストレッチで身体を温め、いきなりでも出られる準備を……というよりは、すでに試合に出ている感覚をキープし続けているのだという。「オレなんて補欠だし……と暗い気持ちになるより、オレ補欠だけど試合には出てるぜ……と気分的に盛り上がっているほうが絶対にハッピーだし」(本人談)。

 スタベンでくさるわけでもなく、かといって「チームさえ勝てれば自分は補欠だってかまいません」的な優等生を気取るわけでもない、案外ニュータイプのプロ団体競技選手なのではなかろうか? ちなみに筆者が某草野球チームの監督をやっていたころ、試合の日に10人以上のメンバーが集まってしまったとき、こういうメンタルを持つヒトが采配上では、正直一番ありがたかった。

 あと、筆者のファーストミットには川崎選手からもらった直筆サインが。スタベンでくさりそうになったときはいつもこのサインを見ながら、みずから進んでスコアブック係を買って出るのであった。
   

   

ゴメスの日曜俗語館 / 山田ゴメス   


山田ゴメス(やまだ・ごめす)
日曜日「ゴメスの日曜俗語館」を担当。大阪府生まれ。エロからファッション、学年誌、音楽&美術評論、漫画原作まで、記名・無記名を問わず幅広く精通するマルチライター。『現代用語の基礎知識』2005年版では「おとなの現代用語」項目、2007年版では「生活スタイル事典」項目一部を担当。現在「日刊SPA!」「All About」の連載やバラエティ番組『解決!ナイナイアンサー」(日本テレビ)の相談員で活躍。著書に『「若い人と話が合わない」と思ったら読む本』(日本実業出版社)など。趣味は草野球と阪神タイガース。
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