休日のランチタイム、あるいは週末の早い時間帯に、居酒屋を楽しむファミリー層を「いざか族」と呼ぶ。「居酒屋に子どもを連れていくなんて」という意見もあるが、居酒屋側としては、その議論は困るといったところだろう。子ども連れをいかに引き寄せるか、その戦略に勝てない限り、外食産業は生き残れない。もとより、住宅地に位置する居酒屋ではランチが充実していて、そこで店の雰囲気がわかった上で夜に利用するというパターンは多い。いまどきは「上品でない」居酒屋を避けて通ることが容易なのだ。個室が整っていることも多く、酔っ払いが目立つ遅い時間にはもう帰るのだから、家族にも「健康的な」外食の場となりえる。

 これまでも『旬wordウォッチ』では、居酒屋のあり方が変わってきた現状を紹介してきた。仕事帰りのサラリーマンが安く飲むための場としては、ファミレスなど競合する店が増えてきているし、そもそもしがらみのない自由な家飲みスタイルが定着しつつある。居酒屋経営は日に日に苦しくなっているわけだ。そこで、幅広い層を貪欲に取り込むことで、時代に合ったビジネスを展開するほかはない。ノンアルコールや子ども向けのメニューが充実している店は、内装なども親子連れに嫌われない工夫が多く見られる。1990年代以降の居酒屋ブームにいた世代が、ちょうど親になっていることもあり、いま、新しい居酒屋の姿が受容されやすい絶好のタイミングとなっているのだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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