2014年の『NHK紅白歌合戦』は、薬師丸ひろ子の初出場(2013年はあくまで『あまちゃん』の劇中人物として歌ったもの)、中森明菜の復活劇、松田聖子の大トリと、80年代のアイドルたちによって大いに盛り上がった。いまはAKBなどアイドルグループ隆盛の時代とされているが、熱心なファンがひとりで何枚もCDを購入する一方、楽曲自体はなかなかお茶の間に浸透しているとはいえない。また、集団である以上、メンバー個々人の存在感もどうしても薄くなる。それに引きかえ、80年代のトップランナーたちは、そもそも知名度的な引きが強いのだ。

 当時のアイドルファンたちも、いまや40代。購買力も高く、ベスト盤などのアルバムの売り上げが手堅いセールスを残しているという。現在のような音楽配信の時代ではなかったので、「新しいCDが出たら買う」という行為がごく自然なことも、レコード会社にとってありがたい。さらに、連続テレビ小説『あまちゃん』など、40代になったエンタメ業界の担い手がアイドルネタをどんどん仕掛けてくることで、往事の人気が忘れられた文化になることを抑止している。

 加えて、アイドルから女優、あるいは母として過ごしていた時期を経て、再び歌の世界に戻ってくる例も多い(工藤静香、荻野目洋子など)。今後、80年代アイドルが音楽市場を底支えしていく状況はまだまだ続きそうである。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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