2015年2月26日、いわゆる「空き家対策特別措置法」の一部が施行された。

 総務省の「平成25年住宅・土地統計調査(速報集計)」によると、日本の住宅総数は6063万戸。これに対して、総世帯数は5246万世帯なので、すでに住宅は供給過多に陥っている。その結果、全国の空き家は820万戸。昭和33(1958)年から一貫して増え続けており、いまや全国の住宅の13.5%を占めるまでになっているのだ。

 空き家の中には、所有者がきちんと管理をしておらず、廃屋同然で、倒壊の恐れがあるものも少なくない。不審者の侵入によって、犯罪の温床になる恐れもある。防災、衛生、景観など、周辺住民の生活環境に深刻な影響を及ぼすこともあるが、空き家といえども個人の財産なので、他者が勝手に処分することはできないのが難点だ。そのため、これまでは地方自治体が問題のある空き家に対して、条例を作って、行政代執行などで対処してきた。

 しかし、条例だけでは、対応に限界がある。すでに人口が減少に転じている日本で、今後も空き家が増加することは確実だ。国にとっても空き家対策は急務の課題で、根拠法の制定が求められていたのだ。

 そこで、今後は倒壊など保安上の危険や衛生上有害となるなど問題のある空き家を、法律によって「特定空家等」に認定。地方自治体が立ち入り調査、指導、勧告、行政代執行などを行なえるようにしたのだ。また、空き家を地域の集会所や交流スペース、農村宿泊体験施設などとして活用することなども検討課題にあげられている。

 地域の安全、環境を守るために、こうした法律の制定は必要なことだが、空き家を所有している人が注意しなければならない点もでてきた。それが、固定資産税への影響だ。

 これまで固定資産税は、住宅が建っていれば、更地の最大6分の1に軽減されていた。しかし、特定空家等に認定されると、税制優遇は適用されなくなり、税負担が重くなる。

 市区町村が空き家かどうかを判断する基準は、1年間を通して人の出入り、水道光熱費の使用がないことなどが示されている。

 亡くなった両親の家をとりあえず相続したけれど、田舎にはずっと帰っておらず、今は誰も住んでいないといったケースでは、今後、固定資産税の負担が重くなる可能性が高くなる。

 全国的に住宅の供給過多となっている今、地方の住宅は売ろうにも売れないことが多く、高い固定資産税に悩まされることになるかもしれない。

 売却できない場合は、定期的に田舎に帰って家を管理したり、家賃は安くても誰かに住んでもらったりするなど、なんらかの対応を迫られそうだ。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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