漫画やアニメを「二次元」、演劇を「三次元」とするならば、そのあいだに位置する舞台作品こそが「2.5次元ミュージカル」。イケメン俳優たちが、まるで二次元から飛び出してきたような活躍をみせてくれる。それは従来の演劇のリアリズムとはあきらかに異なるものだ。原作のイメージをそのまま舞台上に投影しようとする試みで、夢と現実のはざま、まさに「2.5次元」としかいえないような独特の世界観である。

 「テニミュ」と略されるミュージカル『テニスの王子様』は、2003年のスタートから2015年3月まで、全シリーズの累計動員数が200万人を突破している。エンターテインメント業界ではすでにショービジネスの一ジャンルとして認知され、2014年には一般社団法人「日本2.5次元ミュージカル協会」も設立された。

 男だらけの舞台は、いまでこそ熱心な女子のファン層を確立している。が、最初から順風満帆というわけではなかった。テニミュのように知名度のある原作でも、そのファンたちに観劇の習慣があるわけではなく、最初は空席も目立ったと語られている。しかし結果として、口コミで客足が伸びた。ビッグネームの俳優に頼らない舞台のあり方を目にして、関係者は鉱脈を掘り当てた気持ちになったに違いない。現在では若手役者が名を売るための場となっている。

 東京・渋谷区にある「AiiA Theater Tokyo(アイアシアタートーキョー)」が、2015年から1年間このジャンルの専用劇場として運営されるなど、ここ数年はまさに飛ぶ鳥を落とす勢いである。今後は海外展開も視野に入っているという。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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