議論の背景にあるのはICT(情報通信技術)化の波。教育現場でも、授業で電子黒板やタブレットの普及と積極的な活用が見込まれるからだ。映像や音声を使うことで子どもが授業に関心を持ち、理解を手助けすることが期待されている。たとえば「英語の授業で端末を使ってネイティブスピーカーの発音を聴き取ることで、リスニング力が身に付く」「理科で実験の様子を、動画を使ってわかりやすく説明できる」といった具合だ。

 ただ、こうしたデジタル教材やソフトは現在はあくまで補助教材としての位置づけだ。文科省のねらいはこれを国の検定を受けた正式な教科書に格上げしようというわけである。

 正式な教科書となれば、子ども一人ひとりにタブレット型情報端末が支給されることになるが、その使用の在り方をめぐって懸念する向きがある。有識者会議でも「情報端末への依存症やインターネットを経由した有害情報(アダルト情報など)へのアクセスをどうするか」「視力低下など児童生徒への健康面への配慮をどうすべきか」などが検討課題として提示されている。

 さらに言うと、教科書となれば義務教育の小中学校では国が公費で購入し、子どもに無償配布することになる。高額なタブレットやその維持管理費をどう負担するのかも論議を呼びそうだ。

 有識者会議は2016年度中に報告書をまとめる予定。文科省は報告書を受け、早ければ2020年度からの導入を目指すという。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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