「医薬分業」は診察した医師が処方箋を書き、それを患者が、街の調剤薬局に持ち込んで薬を受け取るシステム。その狙いは、薬の適正使用や医師の処方の妥当性、薬の飲み合わせについて、薬剤師がチェックすることだ。

 かつては病院が調剤も担う「院内処方」が普通だった。しかし、医師が過剰に薬を出す「薬漬け医療」が批判を招き、厚生労働省は1974年から「医薬分業」を推進してきた。最近は調剤薬局チェーンが躍進し、その結果、現在では「院外処方」の割合は7割近くに達している。

 ところが、である。ここにきて政府部内で「医薬分業を部分的に見直すべきだ」との議論が浮上した。政府の規制改革会議で議論が行なわれており、具体的には、病院など医療機関の敷地内に経営的に独立した薬局を置くことを認めようというものだ。

 確かに病院で診察を受けた後、道路を挟んだ薬局まで足を運ぶのは不便である。また、あまり知られていないが、患者の窓口負担は院外処方のほうが院内処方より高くつく。

 規制改革会議関係者がこう指摘する。

 「患者の利便性を考えれば、医薬分業は規制緩和すべきだ。病院内にコンビニや花屋さんだってあるじゃないですか」

 こうした動きに対し、医薬分業を推進してきた厚労省は「規制は必要」とあくまで見直しに慎重な立場だ。規制改革会議は2015年6月にも医薬分業の見直しについて答申をとりまとめ、安倍晋三首相に提出する。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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