現在、世界の多くの国で使われている暦は、グレゴリオ暦。1582年にローマ教皇グレゴリウス13世が制定したもので、平年は1年を365日、4年に一度の閏年は366日にして時を刻む方法だ。地球が太陽の周りを回る周期をもとに作られているので太陽暦ともいう。

 日本では、明治維新による西洋化の一貫として、1872(明治5)年にグレゴリオ暦が採用され、現代ではあたり前のように太陽暦が使われている。

 だが、日本で古くから使われていたのは「太陰太陽暦(旧暦)」だ。月が地球を1周する「太陰暦」と地球が太陽を1周する「太陽暦」を組み合わせて作られたもの。

 地球から見た月は満ち欠けを繰り返しているが、その動きには地球と太陽との位置は関係ない。月の運行だけを追った暦は、いつのまにか季節の周期にズレが生じてしまうため、太陽の運行をもとにした二十四節気を導入し、できあがったのが太陰太陽暦だ。

 農耕を営む民族が生み出した知恵の結集で、日本の風土に合った暦である。

 『日本書紀』によれば、中国から伝わった太陰太陽暦が使われるようになったのは飛鳥時代。以降、8回の改暦が行なわれて、弘化元年(1844)から使われていた天保暦は天文学的にもっとも優れた太陰太陽暦になったと言われている。

 こうした古代の暦を踏まえて、新たな暦として考え出されたのが「地球暦」だ。 農業を営む杉山開知(すぎやま・かいち)さんが、古代の暦と天文の関係を学ぶなかで考案したもので、太陽系の惑星の動きを縮尺した太陽系時空間地図とも呼ばれている。

 地球暦は、太陽を中心に、水星、金星、地球など太陽系の惑星の動きをひとつにまとめた円形の暦で、始まりは3月21日の春分。1周すると地球の1年間が経過する。

 これまでの暦は、あくまでも地球からみた太陽や月の動きをもとに導き出したものだ。7日ごとに休日がやってきて、政府の都合で祝日が決まるカレンダーは、人間の都合に合わせて作り出した意図的なものともいえる。

 一方、地球暦は、「今、地球はどのあたりに位置しているのか」と宇宙から地球の位置を俯瞰するというコンセプト。地球にいる自分が、宇宙のどこにいるのか、今が連続する1年のなかのいつなのかを知り、地球の動きにタイミングを合わせていけば、無駄なエネルギーを使わなくても農作物を育てたりすることが可能になる。

 時間はすべての生き物に平等に流れているという考えのもと、国籍や民族を超えて、地球で暮らす人なら誰もが共通して使うこともできる。

 地球暦を眺めていると、世界中で行なわれている小競り合いや個人の悩みなどが、いかにちっぽけなものかに気づかされる。地球で暮らす一員として、今、何をすべきなのか。大きな視点で捉えられそうだ。

 来週月曜日、6月22日はもう夏至。1年でもっとも昼が長く、夜の短い日だ。春分から約3か月が経過し、この日を境に、再び、昼が短くなっていく。

 ときには、グレゴリオ暦のカレンダーから離れて、太陽と地球の自然のリズムに身を任せ、これからの暮らし方を考えてみてはいかがだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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