7月1日から、国の医療費助成を受けられる難病の範囲が広がった。

 難病は、原因不明で治療法が確立しておらず、患者の数も少ない希少性の病気だ。長期の療養を必要とし、患者の医療費の負担も重くなる。ベーチェット病や潰瘍性大腸炎など一定の病気については、これまでも医療費助成を受けられる仕組みがあった。

 しかし、難病対策は根拠法のない「事業」という位置づけで、都道府県が運営主体。国が予算を絞れば、しわ寄せは都道府県にいく。財政が厳しい自治体は十分な難病対策がとれないでいたのだ。

 また、同じように原因不明の病気で苦しんでいても、国が認めた対象疾患でなければ医療費助成を受けられなかったため、公平性の観点からも見直しを求める声があがっていた。

 こうした難病対策の問題点を抜本的に改革するために、2014年5月、難病の調査研究の推進や医療費助成などについて定めた「難病の患者に対する医療費等に関する法律」(難病医療法)が成立。

 いわゆる「難病」と言われるもののなかで、次の要件を満たすものを「指定難病」と位置付け、医療費助成の対象とすることになったのだ。

(1)発病の機構が明らかでないこと
(2)治療法が確立していないこと
(3)長期の療養を必要とすること
(4)患者数が日本国内で一定の人数に達しないこと(人口の0.1%程度以下)
(5)診断に関し、客観的な指標による一定の基準が定まっていること

 昨年7月に発足した指定難病検討委員会では、この定義にしたがって、まず今年1月1日に指定難病を、それまでの56疾患から110疾患に拡大。そして7月1日からは196疾患が追加され306疾患が医療費助成の対象になる。

 小児慢性疾患についても、これまでの514疾患から、1月に704疾患に対象が広げられた。

 患者負担も見直され、自己負担割合は3割から2割に。毎月の自己負担限度額は、入院、通院の区別なく、所得に応じて6段階に分類された。たとえば、年収約160万~約370万円の人の場合は、どんなに医療費がかかっても毎月の負担は1万円(一般の場合。高額長期、人工呼吸器などをつけている人には、さらに負担軽減措置もある)。

 これまでも医療費助成を受けていた人のなかには、制度改正によって自己負担が増える人もいるが、3年間の経過措置が設けられている。

 ただし、健康保険が適用されない医療費(保険適用外の治療や薬、差額ベッド料など)、医療機関までの交通費、難病以外の病気の治療費などは助成対象にはならない。

 また、医療費助成を受けるためには、難病指定医による診断書が必要だ。この診断書と必要書類を合わせて、住所地のある都道府県に申請する。

 この7月から指定難病として医療費助成が受けられるのは306疾患だが、原因不明で治療法の確立していない難病は5000とも、7000とも言われている。

 そのため、難病医療法の付帯決議(衆議院厚生労働委員会)には、「指定難病の選定に当たって、診断基準の作成に係る研究状況等を踏まえて対応するとともに、疾病数の上限を設けることなく、医学、医療の進歩等を踏まえて、指定難病の要件に該当するものは対象とすること」を求めている。

 原因不明の病気で苦しむ人が、この法律によって一人でも救われるように、さらなる制度の充実を期待したい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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