メールによってほとんど事足りてしまう現代にあっても、紙のはがきや手紙は存在感を堅持し続けている。特にビジネスの現場においては、いまや「紙派」がマイノリティになった感もあるので、なおのことありがたみが増すという言い方もできる。

 ミロク情報サービス(東京都新宿区)では、2015年1月8日から「和紙でありがとうの気持ちを伝える」ツールとして「ありがとうポスト」の提供を始めた(http://www.aripo.jp/)。パソコンやスマホから文面・宛先を入力するだけで、和紙によるお礼状の印刷から発送代行まで行なってくれる。値段は高くなるが、プロ筆耕士による手書きにすることも可能である。

 用いられる紙は、埼玉県小川町の細川紙などから選べる。細川紙といえば2014年、島根県の石州半紙、岐阜県の本美濃紙とともに「和紙:日本の手漉(てすき)和紙技術」としてユネスコ無形文化遺産に登録された逸品だ。「まずは御礼まで」とメール一本で済ませるよりも、品質の優れた和紙のはがきが届いたほうが、先方の印象に確実に残るであろう。様々な文書の中から、廃れつつある「お礼状」に目をつけたところがビジネスとしてユニークだ。「気持ち」という目に見えないものを扱うことが、おもてなしの国・日本はうまいのかもしれない。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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