自民党の「郵政事業に関する特命委員会」(細田博之委員長)が2015年6月、ゆうちょ銀行の貯金限度額の3000万円への引き上げを柱とする提言をまとめた。

 提言によると、現行1000万円の貯金限度額を9月末までに2000万円に引き上げる。その後、2年後までに3000万円に再び上げる、という段取り。かんぽ生命保険も現行の加入限度額1300万円を9月末までに2000万円へ上げる。

 引き上げは過疎地対策という。過疎化や高齢化が進む地方では、地域の郵便局が唯一の金融機関であることが少なくない。確かに車の運転ができない高齢者にとって郵貯の限度額が1000万円に抑えられているのは、不便なことだろう。「限度額が1000万円では老後の生活に用いる退職金を預けられない」との声も聞こえる。

 これに対し、民間金融機関は「民業圧迫だ」と反発する。3000万円まで限度額が引き上げられると、ゆうちょ銀行への資金シフトが発生し、地域金融機関の融資機能が弱まる恐れがある。そうなると、地域金融機関から融資を受けている中小・零細企業の経営にも影響する。政府が旗振りする地方創生事業の足かせになりかねない。そのため、自民党内にも異論が少なくない。

 限度額の引き上げは、自民党の有力支持組織「全国郵便局長会」が働きかけてきた経緯があり、提言は同党が来年夏の参院選をにらんだパフォーマンスとの見方もある。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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