自民党の文部科学部会が2015年7月、「選挙権年齢の引き下げに伴う学校教育の混乱を防ぐための提言」をまとめ、安倍晋三総理大臣(自民党総裁)に提出した。

 そのポイントは、(1)「政治的中立」の確保を掲げ、教育公務員特例法を改正し、特定のイデオロギーを押し付けるなどこれを逸脱した教員に対しては罰則を設ける、(2)高校生の政治活動は基本的に抑制する──ことだ。

 提言は選挙権年齢を18歳以上に引き下げる改正公職選挙法の成立を受けて行なわれた。自民党は来年夏の参院選に間に合わせるため、法改正の準備を進める方針だ。

 選挙年齢が18歳に引き下げられることで提言は「学校現場が混乱することはあってはなりません」としている。しかし、罰則の新設や高校生の政治活動の抑制は逆に学校現場に混乱を生じさせる可能性がある。

 与党内でも公明党の井上義久幹事長は記者会見で、「公務員には服務規程がある。それで十分ではないか」と指摘、法改正の必要はないとの考えを示した。自民党内には公立高校の教員に加え、私立高校の教員の政治活動も規制すべきだとする意見もある。公明党の支持母体・創価学会は系列に私立高校を抱えており、看過できないはずだ。

 また提案は教職員組合に収支報告を義務付けることを求めている。「政治的中立」を求めるとしながらも、民主党の支持組織・日本教職員組合(日教組)を牽制する狙いが透けて見える。

 安全保障関連法案を巡り、反対のデモ活動を行なうなど高校生の間でも政治意識が高まっている。政府が高圧的に高校生の政治活動を上から抑制しようとすれば、「高校生の主権者権利を踏みにじるもの」として高校生からも反発を呼びそうだ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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