小学校や中学校、高校などの教育現場で、「スクールセクハラ」の被害にあう生徒があとを絶たない。

 文部科学省の「公立学校教職員の人事行政状況調査について」によると、2013年度にわいせつ行為等で懲戒処分を受けた公立の小中高校、特別支援学校などの教師は、過去最多の205人。そのうち117人が免職という重い処分だ。

 わいせつ行為の相手は、自校の児童が16人(7.8%)、自校の生徒が77人(37.6%)で、処分を受けた教師のなかの約半数が、自らの教え子にセクハラ行為を行なっていることになる。

 わいせつ行為の内容で最も多いのが「体に触る」で56人、ついで「盗撮・のぞき」が37人、「性交」が30人となっている。このほかにも、「接吻」、「会話などにおける性的いやがらせ」「裸体等の撮影」などの行為もあった。

 だが、スクールセクハラは、突然、噴出した問題ではなく、これまで隠蔽されてきたものが厳しく処分されるようになり、私たちの目に触れるようになったと考えるべきだろう。

 共同通信記者の池谷孝司(いけたに・たかし)氏が、学校現場で教師によって行なわれたセクハラについて長年の取材をまとめた『スクールセクハラ なぜ教師のわいせつ犯罪は繰り返されるのか』(幻冬舎)には、衝撃の実態が描かれている。

 小学生の教え子との間に恋愛関係があると勝手に思い込み、3年もの間、ホテルでわいせつ行為を繰り返した教師。

 高校2年の女子生徒を「カラオケに行こう」と誘ってホテルに連れ込み、強姦しておきながら、「自分が誘われた」と被害者面をする担任教師。

 複数の女生徒を順々に個室に呼び出し、「先生を信用しているなら服を脱げ」と下着姿にさせて抱きしめ、絶対服従を誓わせる中学校の部活顧問。

 もはやセクハラの一言では片付けることのできない、犯罪というべきゾッとする光景だ。

 いずれのケースでも共通するのは、「教師」という絶対的な立場を利用して、「指導」という名のもとに生徒を自分の意のままにしていることだ。

 まだ社会を知らない生徒たちにとって、学校の先生は絶対的な存在だ。進学のための内申書、部活動の選手選びなどは、教師の手に握られており、絶大な権力がある。そのため、生徒たちは教師から理不尽な目にあわされても、「逆らえばひどい目にあう」と萎縮してしまうのだ。そして、素直な生徒ほど逆らうことができず、その魔の手に落ちていく。

 だが、教師は自らが握っている権力について無自覚だ。生徒からすれば、教師が握っている権力が恐ろしいため、いうことを聞いているに過ぎない。「先生だから」という理由で寄せていた尊敬、信頼、感情を、「先生ではない」自分自身に向けられた愛情と勘違いし、わいせつな行為を正当化し、スクールセクハラは繰り返されてきた。

 こうした生徒と教師という権力関係ゆえに、生徒たちは被害にあったことを誰にも相談できずに、悩み、苦しむケースが多い。そもそも、自分が性的な被害を受けたことを、口に出して誰かに話すことは、とても勇気のいることだ。

 「子どもの言っていることだから」と大人に信じてもらえず、生徒が被害を訴えても、報告を受けた学校が隠蔽してしまうこともある。学校という構造そのものが、教師のわいせつ行為をなくせない理由にもなっているのだ。

 スクールセクハラを受けた生徒たちにとって、なによりも辛いのは、勇気を出して被害を報告しても、大人たちに信じてもらえないことだ。そして、被害者なのに、「君にも落ち度があったのではないか」「なぜ、断らなかったのか」「服装が派手だったのではないか」と反対に責められることだ。そうしたセカンドレイプが、さらに生徒たちの心に一生消えない深い傷を負わせることになる。

 だが、服装が派手な人をレイプしたり、セクハラしてもよいという法律はない。絶対的に、レイプやセクハラをした側が悪いのであり、生徒たちには罪はない。レイプ被害者を二重に苦しめるような言動は、絶対に慎まなければいけない。

 スクールセクハラは、レイプなどの重い罪だけではなく、「体にさわる」「頭をなでる」「肩をもむ」「必要がないのに、肩や背中をさわる」「身体的な特徴を指摘する」なども含まれる。

 教師側は親しみを込めて行なったものでも、された側がいやな気分になるものはハラスメントだ。教師の何気ない行為、言動が、子どもたちの心に深い傷を負わせる可能性があることを、教師たるものは肝に銘じるべきだろう。

 こうしたスクールセクハラの実態が明るみになるにつれ、文部科学省でもセクハラ防止対策を行なうように、全国の学校に通知を出している。しかし、その数は減るどころか、増加の一途をたどっている。

 スクールセクハラを撲滅するには、学校が抱えている隠蔽体質を根本から改め、第三者委員会の介入、問題教師への厳しい処罰などの対策が必要だ。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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