大企業に女性登用の数値目標を設けることを義務付けた法律。2015年8月に成立した。その骨子は、(1)従業員301人以上の企業と国・地方自治体は、2016年4月1日までに女性管理職比率などの数値目標を盛り込んだ行動計画を策定し、届け出・公表をする、(2)従業員300人以下の企業の場合は努力義務とする、(3)罰則規定はない──というものだ。

 「女性の活躍推進」は安倍政権が成長戦略で柱の一つに掲げている政策で、女性の社会進出を後押しするものとの位置づけだ。

 もっとも、「活躍を後押し」というより必要に迫られての施策というのが実情だ。

 日本では出生率が下がり、高齢化が世界トップクラスのスピードで進んでいる。経済成長を持続させ、年金や高齢者医療を堅持するには、女性労働者を増やすしかないのである。安倍政権は女性の就業率について2012年の68%を2020年には73%に引き上げ、企業などで指導的な地位に占める割合についても30%程度とする目標を掲げている。

 取り組む側の企業としては、管理職の割合や全雇用者に占める女性比率などを数値目標にするようだが、企業側からは「一口に女性登用といっても人材不足で、売り上げなどの数字に責任を取らされる管理職なんか、なりたくない、という女性も少なくありません」(中堅商社幹部)、「ただ女性というだけで、能力もないのに管理職や役員になるケースも出てくる」(流通企業幹部)といったぼやき声も聞こえてくる。

 「女性活用推進」といっても実態は企業任せの部分が多い。罰則規定もないため、効力があるかも疑問だ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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