読売巨人軍の次期監督。40歳。選手生活18年で平均打率0.291、本塁打321本、2000本安打まであと247本を残して現役を引退した。守備は外野。

 高橋の監督就任の記者会見にほとんど笑顔はなかった。私はテレビで見ながら、高橋が巨人入りしたときのことを思い出していた。

 六大学野球で輝かしい成績を残してきた高橋の獲得に多くの球団が名乗りを上げた。だが高橋の意中の球団は野村克也率いるヤクルトだった。野村も後に「彼は私の前でヤクルトに行きますと笑顔で言ってくれた。背番号は3で内定していた」と語っている。

 だが、ドラフト直前に高橋は会見を開き「読売ジャイアンツを逆指名させていただきます」と発表した。悲壮感溢れる決断の背景には父親の多額の借金問題があったといわれる。当時メディアは、巨人にカネで無理矢理入団させられたのではないかと報じた。

 後年、朝日新聞が高橋入団時の契約金が最高標準額を大幅に超える6億5千万円であったことを報道し、巨人側も婉曲的にこれを認めた。

 98年はまだ私も熱烈な巨人ファンだったから、よく覚えている。監督の長嶋茂雄から「21世紀のスター」と期待された逸材は、開幕戦で先発出場していきなりヒットを打ち華々しいスタートを切った。長嶋の入団当時を髣髴(ほうふつ)とさせる甘いマスクと長打力で、先輩の松井秀喜とともに巨人の看板選手になり、長嶋から「ウルフ」のニックネームが与えられた。

 だが選手生活は順風満帆とはいかなかった。入団翌年に打球を追いかけて外野フェンスに激突し鎖骨を骨折したのをはじめ、ケガや腰痛に泣かされた。

 ここ数年は代打での出場が多くなった。今季から一軍の打撃コーチを兼任していた。原辰徳監督が引退するため後任の監督探しが始まったが、大本命の松井が渋ったため高橋にお鉢が回ってきた。本人は現役を希望していたが巨人首脳陣に押し切られた形だ。

 素質はいいものを持っていて、それなりの記録は残したが“記憶に残る選手”にはなれなかった

 高橋に決まるまでにメディアでは江川卓(すぐる)や川相(かわい)昌弘の名前があがった。川相は観客動員力に疑問符が付くからはじめからないと思っていたが、江川の可能性はあるのではないかと思っていた。なぜなら読売新聞の渡辺恒雄主筆の盟友であった故・氏家齋一郞(うじいえ・せいいちろう)日本テレビ放送網代表取締役会長から、だいぶ前にこういう話を聞いていたからである。

 「江川を巨人の監督にしたいのだが、桑田(真澄・当時は巨人軍投手)の不動産でつくった大きな負債を巨人が肩代わりしたので、江川の抱えている負債まで出せない。江川も監督よりカネになるテレビの仕事を離れるわけにはいかないから、なかなか難しいんだ」

 今回江川の名前が浮上したのは、彼の借金問題が障害にならなくなったからだろう。だが『週刊ポスト』(11/6号、以下『ポスト』)によると、かつて渡辺氏は「江川はヘッドコーチにはするが監督にはしない」と語っていたという。最後は渡辺氏の鶴の一声があったのかもしれない。

 不思議なのは今回桑田の名前が上がらなかったことだ。彼が巨人の反対を押し切って大リーグへ行ったことなどが取り沙汰されているが、帰国後早稲田大学大学院スポーツ科学研究科に入学したり、東京大学の硬式野球部で特別コーチを務めるなど、監督を意識して勉強していることは間違いない。年齢も47歳と適齢期だと思うのだが名前すら出なかった。

 ともあれ高橋は球団創設以来初めてといってもいい弱小巨人を率いることを選択したのだ。私は長嶋茂雄が川上哲治から監督を引き継いだときのことを思い出す。ONを率いて9連覇を成し遂げた川上巨人が中日に10連覇を阻まれ、長嶋に後が託された。

 当然だが長嶋茂雄のいない巨人を率いるのは難しかった。王にも衰えが見え始めていた。結果、監督1年目の長嶋巨人は最下位に沈んだのである。

 高橋は長嶋ほどの存在ではないが、頼れる選手がほとんどいない今のチームを率いるのは長嶋の時以上に大変だろう。

 『ポスト』で、毒舌でなる巨人OBの広岡達朗氏はこう話している。

 「現状の彼に巨人の監督の資格はない。何億円ももらっておきながらあそこが痛い、ここが痛いとロクに練習もしないサボり魔ですからね。選手もそんな彼をよく知っている。だからまずは自分の態度を改めることから始めるべき。そして謙虚に指導者の勉強をしなさい」

 同誌でやはり巨人OBで400勝投手の金田正一氏もこう言う。

 「今の巨人の戦力ではだれがやっても勝てんよ。チーム全体のタガが緩んでいるからね。(中略)大変だろうが一から出直すつもりでやらなきゃいかん」

 子どもの頃は野球が好きではなかったが、父親を喜ばすためにやっていたといわれる。高校野球で活躍したのにプロの世界に行かず慶應大学を選んだのも、野球以外の道を探るためだといわれている。

 そして入団の経緯から、ケガに泣いた選手生活。現役を続けることを希望した本人の意思を無視した形で監督に据えられるなど、高橋由伸には“悲劇”が纏わり付いているようだと見るのは穿ち過ぎであろうか。

 来季、監督・由伸の顔にどれくらい笑顔が浮かぶのだろうか。それを見に久しぶりに東京ドームへ足を運ぼうと思っている。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 最大手三井不動産の「傾斜マンション」問題は他人事ではない。これからマンションを買おうと考えている人は、何を信じて買えばいいのか思案に迷っているに違いない。姉歯(あねは)一級建築士の耐震偽装にも呆れたが、不動産業界のいい加減さは度を超している。
 今週はたっぷり週刊誌の記事を読んで、そうした災難に遭わないためにどうするかを考えていただきたい。

第1位 「まだある欠陥マンション あなたはどうする」(『週刊現代』11/7号)/「三井不動産“傾斜マンション”大騒動 絶対に騙されないための『10の鉄則』」(『週刊文春』10/29号)/「横浜『杭打ち偽装』で再点検する『欠陥マンション』悲劇の後日談」(『週刊新潮』10/29号)
第2位 「武豊フェロモンお天気アナと裏切りの六本木」(『女性セブン』11/5号)
第3位 「知ってました? 最近の冷凍チャーハンものすごく美味しくなってます」(『週刊ポスト』11/6号)

 第3位。『ポスト』が、最近冷凍チャーハンがうまくなっているという特集を組んでいる。以前もパンが美味しく焼けるトースターを特集していて、私も買ってみたがなかなか優れものである。
 こうした日常生活での「良品」を取り上げるのは賛成だ。『ポスト』は売り物になるかもしれない「視点」を見つけたように思う。
 『ポスト』曰く、売上ナンバーワンとパッケージに書かれた「本格炒めチャーハン」(ニチレイフーズ)を試してみたそうだ。

 「食べてみると、その理由はすぐにわかった。不思議なことに、きれいに水分が飛んで米がパラパラ。卵はふわふわしていて本来の甘みがあり、角切りのチャーシューは噛むと肉汁がしみ出すほどジューシーだ。さっきまで凍っていたとは思えない。焦げたタレの香ばしさが食欲をそそる」(『ポスト』)

 近所の中華料理店と比べても遜色ないといっても過言ではないとまで誉めている。
 売れ筋冷凍チャーハンのランキングは、2番目に「具だくさん五目炒飯」(味の素冷凍食品)。3番目が「ザ・チャーハン」(同)。4番目が「あおり炒めの焼豚炒飯」(マルハニチロ)。5番目に「本格炒め炒飯 塩」(ニチレイフーズ)が入っている。
 今晩は冷凍炒飯でも買って帰って、侘しい食卓を少しでも華やかにするかな。

 第2位。『女性セブン』(以下、『セブン』)が騎手の武豊(たけ・ゆたか)(46)とフリーアナウンサーの「手つなぎデート」を報じている。
 お相手のフリーアナウンサーは美馬怜子(みま・りょうこ)(31)。彼女は『朝ズバッ!』(TBS系)のお天気キャスターを務めていたことで人気者になり、スポーツに詳しいことからスポーツ番組のキャスターとしても活躍しているそうである。
 『セブン』によれば、10月3日に阪神競馬場で行なわれたG3レースで、JRA重賞300勝という前人未踏の大記録を達成した武は、その翌日は中山競馬場に来て騎乗し、その夜もフランスで行なわれた「凱旋門賞」を中継する競馬番組に生出演した。

 「日付が変わってしばらくした深夜2時の六本木の路上。黒縁の丸メガネ、ネクタイに細身のスーツを着た武がほろ酔い加減で歩いていた。
 その隣にピタリと寄り添うのは、胸元が大きく開き、深いスリットの入ったセクシーな黒いドレスを着た若い女性だ。
 ふたりは人目も気にせず、指と指を絡ませるように手を握り合っている。
 武は上機嫌で、時折つないでいる手を離しては、歩きながらスリットの間からのぞく女性の素肌に手をはわせていく。腰から太股へ、太股からお尻へ。その時、10cm以上の高いヒールを履いても身長170cmの武より背の低い女性は、トロンとした上目遣いで武の顔を見上げていた」(『セブン』)

 手を握り合ったふたりはその後、タクシーに乗り込んで麻布十番のドラッグストアで買い物をし、武が宿泊するホテルへと向かったという。
 武の妻になった佐野量子(りょうこ)(47)と武が、結婚する前に「お泊まり愛」したのを激写したのは、私が編集長をしていたときの『フライデー』だった。このところ競馬が好調な武は、女性のほうもまだまだ盛んなようである。

 今週の第1位はやはりこれ。業界最大手の三井不動産レジデンシャルが販売した横浜の「パークシティLaLa横浜」のウエストコート(西棟)が、基礎工事の施工不良のため傾いてしまった騒動は、決して他人事ではない
 『文春』、『新潮』、『現代』からこの問題を考えてみたい。
 このマンションを購入した動機は三井というブランドを信頼してというのが一番多いが、ご多分に漏れず施工主は三井住友建設、欠陥杭の打設を担当したのは下請けの旭化成建材と、責任を下に押し付ける構図は今回も同じだ。
 旭化成建材の前田富弘社長は、「何らかの不良を隠すため、悪意を持って」現場責任者がやったことだと、一人の人間のせいにしようとし、三井不動産側は「ウチの社員ではない」と建材に罪を被せようとしている。
 だが、三井不動産の体質にこそ問題ありだと『文春』で同社のOBがこう語っている。

 「三井不動産はとにかく下請けを叩く。超一流のブランドを看板に、コストをどんどん削って二次・三次に至るまで下請けを締め上げます。(中略)お客さんは『三井だから良い素材と良い人材で作っている』と思っているかもしれないが、そういう思いに胡座(あぐら)をかいて値段を吊り上げているだけですよ」

 『新潮』は、欠陥マンションを買ったために悲劇に襲われた人たちをインタビューしているが、語るも涙、聞くも涙である。
 05年に耐震偽装が発覚した「グランドステージ住吉」(東京都江東区)の元住人・花岡剛史氏(53・仮名)は、当時区から退去勧告が出されたが、4000万円から8000万円の物件を買ってローンを組んでいる人が多いため、新しく買うなんてできはしない。だが区と話し合って仮住まいの費用の一部を出してもらっただけで、どうしていいか皆目見当がつかなかった。
 施工側の「ヒューザー」はあっけなく破産。そこで更地になった跡地にマンションを建てるために銀行と掛け合ってローンの支払いを待ってもらい、新たに融資を頼み込んだという。
 当座の資金にも困って、部屋の玄関ドアやトイレの便器などを外して中古業者に売ったそうだ。2年後に新たなマンションが建ったが、かかった費用は元のマンション価格の5割程度。「4000万円の部屋に住んでいた人なら2000万円。5000万円なら2500万円を支払うことになった」(花岡氏)。だがローンが払えず“夜逃げ”した人やマンションができるとすぐに売り払った人もいるという。
 民間ではなく国が建てた物件でもとんでもない目に遭ったケースがある。UR(都市再生機構)が分譲した東京・八王子の「ベルコリーヌ南大沢」がそれだ。
 このマンションの売り出し価格は5000万円から7000万円だというから、かなりの値段である。だが、「新築なのに雨漏りがひどくて、押し入れの布団は台風が来るたびに水浸し。あるときなどは、壁板を外してみると滝のように水が内壁を流れているじゃありませんか」(元住人の国本裕美さん・60=仮名)
 国本さんは建て直しか購入時の価格で買い戻しを求めたがURはともに拒否。仕方なく10年後に半値で引き取らせたそうだ。
 このようなケースは枚挙にいとまがない。先の旭化成建材は杭工事をした全国3040件の内訳を公表したが、具体的な物件名は示さなかったため、騒動は収まるどころか不安はさらに広がっている。
 『文春』では欠陥マンションを買わないための「10の鉄則」を紹介しているが、マンション購入を考えている人は必読であろう。
 『現代』は取材時間があったためか、多方面にわたって分厚い取材をしている。
 まずは現在マンションに住んでいる人間には関心事である、旭化成建材がつくった「マンション一覧」から。
 旭化成建材が過去10年間に杭工事をした全国3040件の内訳は明らかにされたが、そのうちマンション(集合住宅)だけで696件あるそうだ。
 そこで『現代』が大手デベロッパーに「緊急アンケート」をした。旭化成建材が杭打ちを担当した物件が過去、現在を含めて「ゼロ」と回答したのは森ビルと森トラストの2社だけ。近鉄不動産、大和ハウス工業、三菱地所レジデンスが「現在販売中」のマンションを購入した人も、不安になる必要はないという。この3社の現在販売中のマンションも、旭化成建材が杭打ちに関わった物件は「ゼロ」であるという。
 住友不動産が過去10年に販売した約300の物件のうち、旭化成建材が関わったのは3件ある。住友不動産は当該マンションについて既に管理組合理事会に連絡済みだというから、連絡が来ていないマンションの住民はセーフだろう。
 不安なのは回答しないと答えた大京、タカラレーベン、野村不動産である。何か都合の悪いことでもあるのだろうか。
 今回の三井不動産側の対応には問題ありとするのは、企業の危機管理に詳しい経営コンサルタントである。

 「今回、三井不動産は住民側に『全棟建て替え』と『高額買い取り』を提示しました。これが非常にしたたかな戦略だと専らの評判なのです。
 一つ目のキモは、『全棟』。傾きが確認された西棟だけではなく、傾きが見られない森棟、中央棟、南棟を含めた全4棟すべてを建て替えるプランが提示されたことで、『4棟の全住民の5分の4』と『各棟の住民の3分の2』の合意が必要になりました。この全棟プランを『三井の誠意ある対応』と報じるメディアもありましたが、本当は合意のハードルが上げられただけなのです」

 この合意形成には数年を要するというのが専門家たちの読みだという。合意形成に時間がかかるほどに、途中で嫌気がさしてマンションを離れる決断をする住民が出てくることは必至だ。

 「そういう出ていきたい人たちには、『買い取り』に応じるのが二つ目のキモ。この仕組みだと、最終的にマンションに残るのは『建て替えしたい人』と、『建て替えはしたくないけど住み続けたい人』になるからです。
 この2グループは歩み寄りができないので、住民は分断される。結局、建て替えは合意できないから、西棟の修繕だけはやってくれと住民たちが音を上げる。そんなシナリオに落ち着く公算が高くなるのです。
 では、その修繕費は誰が出すのかというと、旭化成建材が支払うと明言している。となれば、三井不動産の出費は、出ていった住民への補償だけで済まされる。仮に100世帯が出て行けば、買い取り費用は30億円ほど。数百億円はかかるとされる建て替え費用に比べれば、ずいぶん少額です」(同)

 『現代』によれば、こんなケースがあるという。10月14日、東京高裁で三井不動産と住民が争うある裁判の控訴審判決が言い渡されたという。
 三井不動産が分譲した千葉県浦安市の住宅が、大震災の液状化被害を受けたことをめぐって、対策の是非を住民側と三井不動産が争っていたのだが、この日下された判決は控訴棄却。三井不動産側の完全勝利だったそうだ。

 「素人が専門家のデベロッパー相手に技術的な問題を立証するのは極めて困難なうえ、引き渡しから10年を過ぎた物件では売り主の瑕疵(かし)担保責任を追及できなくなるので、住民側は売り主の不法行為責任を立証しなければいけない。これはさらにハードルが高い」(欠陥住宅被害全国連絡協議会幹事で弁護士の高木秀治氏)

 業者と対峙するには「住民同士が結束していることがポイントで、いかに管理組合を機能させるかが重要。管理組合の理事は基本的には持ち回りで、長期闘争になると引き継ぎに問題が生じやすい。そこで、管理組合の下にプロジェクトチームを設置して、問題に中期的に取り組んでもらう」ことが必要だとNPO法人「建築Gメンの会」理事長の大川輝夫氏は言う。
 話し合いをするときはデベロッパーだけではなく、ゼネコンの担当者も呼ぶのが大事だそうだ。さらに交渉で引き出すべき条件は「建て替え」ではなく「買い取り」がお得だという。

 「金銭的な面で住民が一番お得なのは、やはり売ってしまうことです。欠陥がわかればマンションの資産価値はゼロになる。仮に建て替えたとしても、風評は残るので、資産価値は期待できない。
 そうであれば欠陥物件は買い取ってもらい、なおかつ、そのデベロッパーに安く新しい物件を紹介させるというのが一番いい」(不動産コンサルタント・オラガHSC代表の牧野知弘氏)

 しかし、『現代』によれば、こういう「闘争戦術」が全く有効でない物件があるという。タワーマンションだそうだ。
 タワーマンションの建て替えは事実上ほぼ不可能だからだ。

 「タワーマンションは、住民構成が複雑すぎるのです。高層階に多いのは、相続税節税目的で買った富裕層や、投資目的の中国人。低層階に下がっていくほどに、ローンを組んで無理して買った普通の住民が増えていく。年収から生活習慣、マンション購入動機、国籍までがまったく違う人たちが、建て替えに必要な合意をする。その合意形成はどんなマンションよりも難しい」(牧野氏)

 住民の合意形成ができずに修繕が行なえないとなれば、マンションは欠陥を抱えたまま、壊れてスラム化していくという最悪のシナリオが現実化する。
 買って10年以内であれば、売り主は無償で修理をする瑕疵担保責任を負っているが、それをすぎていればそれはできない。

 「マンションビジネスは、極言すれば売りっぱなしの商売。売った後も業者がきちんとケアしてくれると勘違いしていると、痛い目を見る」(『現代』)

 最後にかつて耐震偽装事件で騒がれたヒューザー元社長の小嶋進氏の言葉を紹介しておこう。

 「耐震偽装事件においては、姉歯元一級建築士が耐震強度を偽装した構造計画書を提出しましたが、元請けの設計士も、検査業界も見抜けませんでした。それでいて、合格確認済証や検査済証を出しても罪ではないとして、建設業界も検査業界も建築業界も誰一人罪に問われませんでした。根底には今回の施工不良事件に通じるものがあるのかもしれません」

 サラリーマンにとって人生最大の買い物である住まいが、売る側のあくどい施工の手抜きで欠陥だとしたら、自分の人生すべてを否定されたような気持ちになるのではないか。
 災難などと諦めずに徹底的に売り主と戦ってほしいものである。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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