一度は都会に出てきたが、人それぞれの理由から地元に戻るのが「Uターン」。これに対して、最近注目されている「孫ターン」は、移住先が実家=親のいる田舎とは限らない。祖父母の暮らす地方に居を構えることを意味している。

 孫ターンをするのは、都会に住んでいた子育て世代(おもに30代から40代)という。これまで地方への移住といえば、都会での生き方を変えたいシニア世代が中心だったわけで、そうした感覚が変容を遂げつつあるらしい。公園での遊びまで騒音とみなされる都心部は、幼子(おさなご)を教育する場としては微妙なところがある。それに、親の収入が高くない場合でも、物価が安い地方では過度に苦労することがない。地方で子育てするメリットが都会人に理解されつつあるのだ。それでも、いきなり見知らぬ土地へ行くのは気が引ける。ならば、長期休暇などに何度か子連れで訪れている土地であれば、空気感がわかるので安心だ。さらに、ふだんの生活から祖父母の協力だって得られる、というわけである。

 いま地方は人口減にあえいでいるため、移住の促進に対する施策を充実させている。交通網の発達した現在では、都会と田舎の距離が感覚的に近いこともあって、孫ターンは生き方の選択肢としてリアルなものになっているようだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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