温泉に入ることで病気の治癒をうながす「湯治」。人里離れた湯治場で自炊をしつつ、長期にわたって逗留するのが本来のスタイルだ。しかし、湯の効能に対する研究が進んで、短期間の温泉療養でも病状の改善が見られることがわかっている。ならば、忙しい現代人が週末・連休などを使って、仕事への活力を得るために温泉を利用することも、科学的な根拠のある立派な「湯治」であるといえよう。このようなライトな湯治を、最近は「プチ湯治」と称することが多い。

 プチ湯治は旅行が主たる目的ではないので、あまりアクティブにならないことが重要だ。移動時間も考え、観光は基本的に入れないのが鉄則。ゆったりとしたスケジュールを心がけるとよいだろう。また、温泉はとにかく長い時間入っていればいいというものではない。泉質にもよるし、度が過ぎると逆効果になる(世の中にはからだに耐性ができている「温泉マニア」という人種がいるが、うかつにマネをしてはいけない)。一日二度ぐらいの入浴に抑えて、休息を十分にとることが必要とされる。

 温泉それ自体も癒やされるが、ストレスフルな生活を抜け出して、温泉地のような自然の多い場所に行くのは「転地効果」があるという。環境の変化が自律神経にプラスに作用するのである。プチ湯治で、なんとか現代日本の荒波を乗り切りたいものだ。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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