外国人旅行客が驚くことの一つに、コンビニで飲むコーヒーのうまさがあるらしい。かなりクオリティが高いというのだ。一応は「客観的評価」といえるもので、日本のコンビニ業界の味へのこだわりを示しているといえよう。2013年1月、セブン-イレブンが「セブンカフェ」を展開したことで、各社競合が勃発し、コンビニにおけるコーヒーの質がグンと上がった。これと同じような状況がいま、ドーナツをめぐって起こりそうだ。

 2014年の試験販売を経て、セブン-イレブンが本格始動した「セブンカフェ ドーナツ」は、2015年を代表するフード分野でのヒットとなっている。「レジ脇でドーナツを売る」という商法をみごとに確立させた。これに追随してドーナツの専用ケースを設けたローソン、そして現状はパンコーナーでドーナツを売っているファミリーマートと、三社が火花を散らしている。

 安閑としていられないのはミスタードーナツである。かつてはライバルだったダンキンドーナツは1998年に撤退。しばらく業界に脅威になる存在はいなかったものの、もはやコンビニドーナツの隆盛をただ見ているわけにはいかないだろう。目下、アメリカの名店・ドミニクアンセル ベーカリーの日本進出など、ドーナツ自体が流行中といえる状況。歓迎すべきブームの一方で、「敵」は急激に増えている。

 ミスタードーナツのような専門店と、コンビニドーナツの売り方はもちろん異なる。コンビニのドーナツは「ついで買い」商品で、現状は専門店の味に至ってはいまい。逆に言うと、コンビニドーナツには美味しさの改良というゾーンがまだまだ残っている。ドーナツ戦争の行方は、しばらく予断を許さない。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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