「日銀は16日、日本で初めてのマイナス金利政策を開始した。金融機関が日銀にお金を預ける当座預金の一部に0.1%のマイナス金利を課す仕組みで、金融機関が融資や投資にお金を振り向けるように促す。ただ海外要因による市場混乱が続くなかで、日銀の思惑通りにお金の流れが活発になり、景気や物価を下支えできるかは未知数だ」(2016/2/17日本経済新聞電子版より)

 アベノミクスが断末魔を迎えようとしている。日銀の黒田東彦(はるひこ)総裁は「マイナス金利は検討していない」と言った。それから2週間も経たないで制度導入を発表したことでも、そのあわてぶりがわかる。

 マイナス金利は多くの国で導入されているようだが、その効果は芳しくないようだ。銀行にカネを貯め込まないで貸し出せと促す政策のようだが、銀行は早速動いた。三井住友銀行が普通預金金利を16日から、これまでの0.020%から0.001%と過去最低水準に引き下げたのだ。

 100万円を預けたとすると年間金利はわずか10円。ATMで振り込みや時間外にお金を引き出したりして、手数料を取られれば損になる。その手数料も値上げしようという動きがあるというのだから、銀行に預けている自分のカネを引き出すたびに預金が減っていくことになる。

 年金はもっとひどいことになると『週刊現代』(2/20号、以下『現代』)が報じている。

 「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が今年度の第2四半期で7兆8899億円の損失を出したのは周知のとおり。今年に入ってからの日経平均株価の下落で、一説には16兆円を溶かしたとも言われる。(中略)
現在の経済状況の延長線上で考えるなら、年金財政は(年金積立金が枯渇するといわれている)’51年を待たずに必ず破綻する」(『現代』)

 唯一の朗報は住宅ローンの金利が安くなることのようだ。

 「5年前に固定金利3%で借りたローンの残高が2500万円、支払期間が25年残っていたとする。返済の総額を計算すると、利子を含めて約3550万円になる。
 これを同じく25年の支払いで2%の固定金利のローンに切り替えることができたらどうなるか。支払総額は約3180万円となり、370万円もの差が生まれることになる。月々のローン支払いに換算して、約1万3000円も安くなる」(同)

 借り換えの手数料を70~80万円程度と見積もっても300万円得するというのだ。

 庶民のささやかな資産防衛は、財布の紐を固く締めて1円でも安い生活必需品を求めて東奔西走するしかないようだ。これでは国内消費が上向くはずはない。

 その上、中国経済の落ち込み、原油安が止まらず、アメリカ経済も不況の足音が聞こえてきていると『現代』(2/27号)が報じている。

 「アメリカの景気後退懸念からドル売り(円高)の圧力が高まっているところに、日銀のマイナス金利政策がこれに拍車をかけています。日銀は円安誘導のためにマイナス金利策をとったのでしょうが、逆に日本の金融機関が米国債を買う流れが加速。米国債の利回りが急低下し、むしろ円高を誘引しています。そこへきて、3月にアメリカが利上げできないとなれば、より一層ドル安(円高)が進み、日経平均株価が1万2000~1万2500円あたりまで落ちる可能性も出てくる」(エモリキャピタルマネジメント代表の江守哲氏)

 禁じ手のような政策をとったにもかかわらず、市場の反応がない理由を、朝日新聞(2月17日付)で植田和雄東大教授は「日本に限らず『さらなる緩和策』を求める市場に応えてきた中央銀行に残されたカードは、そんなにありません。それを見抜いた市場に相対する金融当局は、かつてない苦境が続くとしかいいようがありません」と語っている。

 同じ朝日新聞でエコノミストの加藤出(いずる)氏も「結局、金融政策だけの『一本足打法』に頼ってきたアベノミクスの限界が露呈したということでしょう。金融政策は、カンフル剤的な効果はあっても、潜在成長率を高めるものではない」と言っている。

 日本だけでなく世界経済全体を見渡すと、先行きの不透明さという問題をより拡大させている「4つの不信」があると『ニューズウィーク日本版』(2/23号、以下『ニューズ』)が書いている。

 1つ目は、中央銀行とその金融政策への不信。まさに今の日本人が抱く日銀への不信感そのものである。
 2つ目は、中国の経済当局の管理能力と、中国が発表する指標が信用できないというもの。「公共投資頼みのいびつな成長路線から国内消費の拡大への方針転換は失速する経済の軟着陸に不可欠だが、その過程で生じる痛みに国民と政権が耐え切ることができるかは疑わしい」(『ニューズ』)

 3つ目は、各国政府の政策に対する不信だ。「日本では、日銀の量的緩和を含むアベノミクスの発動後に株価が大幅に上昇した。経営が上向いた企業が従業員の給料を増やし、それが消費の拡大につながるという効果が期待されたが、実際には消費者が好景気を実感することはできなかった」(同)

 さらに、こうした中で経済を立て直すには、少子化対策や規制緩和を含む構造改革を行なわなければいけないのに、政治家は言葉だけで行動が伴っていないと批判する。

 4つ目は、世界経済の実力そのものへの不信だ。

 「そもそも緩和政策で世界経済が回復してきたという認識が間違っていたのかもしれない、と考える人が増えているということだ。緩和によって通貨の流通量が増えて投資は活発になったものの、それが実態を伴わない虚像で結局のところ残ったのは各国政府の借金だけ、となればあまりに悲劇的だ」(同)

 アベノミクスは一部の大企業を優遇してきたが、消費者という国民には目を向けなかった。もはや打つ手がなくなった安倍首相と日銀総裁にはお引き取りいただいて、5年~10年は消費税を減税するというような大胆な政策を実行できる政治家に出てきてもらいたいものだが、どこを見渡してもそのよう人物はいないようだ。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 今や『文春』は神になった。「イクメン」宮崎謙介氏の辞任記者会見をニコ動で見ていたら、こんなコメントが載っていた。神は次に誰を血祭りに上げるのだろうか。そんな中、私も知っているジャーナリストが亡くなった。糖質制限ダイエットをブームにまでした男だ。死因はわからないが、医師の中には過剰に糖質を制限したためではないかと見る向きもあるようだ。何でも行き過ぎてはいけないということだろう。 
 
第1位 「育休国会議員宮崎謙介(35)の“ゲス不倫”撮った」(『週刊文春』2/18号)
第2位 「サンダースは米大統領になれるか?」(『週刊文春』2/18号)
第3位 「『糖質制限ダイエット』第一人者が急死」(『週刊現代』2/27号)

 第3位。私もよく知っているノンフィクション・ライターの桐山秀樹氏が2月6日未明に逝去したと『現代』が報じている。享年61。
 最近、彼が注目を浴びたのは炭水化物を一切取らない「糖質制限ダイエット」を始め、激痩せしたときだった。
 2010年にダイエットを始めたが、それまでは身長167.5cmで体重は87kg、ウェストは100cm以上あったという。彼がこう話していた。

 「咳が出るので、最初は風邪だと思っていたんです。だが症状は次第に重くなる。呼吸も苦しくなり、食べたものを咳とともに吐くようになった。
医師から告げられた病名は『糖尿病』──」

 何しろ血糖値が215、2か月の血糖平均値、HbA1c(ヘモグロビンエーワンシー)は9.4と非常に高い数値が出たそうである。血圧は上が200以上、下が100近くあった。立派な生活習慣病である。
 その日以来、あれほど食べていたご飯やそば、パスタは一切食べないようにして、代わりに主食として食べるのは、豆腐やチーズ、肉、魚。酒は焼酎、ウィスキーはオーケーで、赤ワインも少量なら問題ないそうだ。
 そして日々の散歩も欠かさないように努めたら結果はすぐ出た。なんと1週間で5kg痩せ、3か月後に血糖値は93に半減、体重は15kgも減ったという。
 この糖質制限ダイエットは他のダイエットに比べて、圧倒的に楽で誰でも簡単に始められるというのでブームになった。
 彼と同じように肥満で糖尿病を患う中年男性たちと「おやじダイエット部」を結成し、みんなで集まり楽しく食事をしながら、我慢せず痩せるダイエットを実践してきた。
 その活動を綴った『おやじダイエット部の奇跡』はシリーズ化され、テレビでも取り上げられたという。
 しかし、この糖質制限ダイエットについては専門家の間でも賛否が真っ二つに分かれている。
 京都大学大学院の森谷敏夫教授はこう話す。

 「言っておきたいのは、脳を動かすエネルギーは100%、『糖』だということです。炭水化物を食べずに、脳を正常に保つためには、1日に大量のたんぱく質や糖質を摂らなければなりません。数kgもの肉を食べ続けることは現実的じゃない。
 痩せたのは脂肪が落ちたからではなく、体内の水分が無くなっただけなんです。糖エネルギーが不足すると、それを補うために、筋肉を分解してアミノ酸に変えて脳に送ります。その時に水分を使用するので、体重が落ちるんです。でも脂肪は減っていない」

 このダイエットをしていると慢性的な眠気を抱えるが、これは脳が極力エネルギーを使わないよう指示を出すためだそうだ。
 愛し野(いとしの)内科クリニック院長で、糖尿病を専門に診ている岡本卓(たかし)医師は、「糖質制限ダイエットは死を招く恐れまである」と忠告する。

 「06年に『ランセット』『ニューイングランド・ジャーナル・オブ・メディシン』という世界の二代医学誌に、糖質制限ダイエットを厳格に実行すると、体内に老廃物が溜まり、体が酸化し非常に危険な状態に陥るケースが報告されました。
 スウェーデンの医師は、たんぱく質ばかりを摂ることで、悪玉コレステロールが溜まり、動脈硬化を招き、心筋梗塞や脳梗塞が増えたという結果を発表しています」

 痩せることより、長生きすることのほうが重要なのですという言葉があるが、その通りである。ダイエットはやり出すとストイックになる人がいる。食べることを楽しんで、適度な運動をして体力を維持するのがベストなのではないか。
 桐島氏とは『月刊現代』時代によく会って話をした。人なつこい笑顔が素敵な人だったが、残念である。

 第2位。私が今一番興味をもっているのはアメリカ大統領選である。なかでも民主党のサンダース上院議員(74)に注目している。大統領になれば史上最高齢になる。
 『文春』も取り上げているが、彼はユダヤ系ポーランド人移民の労働者階級の出身で、親戚にはホロコーストで犠牲になった者もいる。父親はペンキ販売員で家庭は貧しかったから、小さい頃から常に経済格差を身近に感じてきたという。
 高校時代はマラソンの選手で、シカゴ大学を出て大工やジャーナリストとして活動した。
 40歳でバーモント州バーリントン市市長選に出馬。わずか10票差でアメリカ初の「社会主義市長」となった。
 市長として、ケーブルTV料金や家賃を引き下げたり、高級住宅地の開発を白紙撤回させて市民のための公園にしたりした。また、アメリカで初めて電力を100%再生可能エネルギーに切り替えたのである。
 大統領に立候補したときは、ヒラリーの対抗馬になるなどとは本人以外誰も思ってはいなかった。だが彼が掲げた「最低時給を15ドルに引き上げる」「医療の国民皆保険」「公立学校の授業無償化」は、若者や女性たちから熱狂的な支持を受けている。
 『ニューズウィーク日本版』(2/16号)は、そのほかにも「家族のための有給休暇」「大企業への増税」「警察・司法の『制度的人種差別』の撲滅」を訴え、大企業のウォールマートに対して「従業員が生活できるだけの賃金を払え」と攻撃しているという。
 毎回演説は「人民の人民による人民のための政治を実現させる」で始まる。興奮した若者たちが「バーニー、愛してる!」と絶叫するという。
 アイオワではヒラリーに肉薄し、ニューハンプシャーでは圧勝した。暴言の数々が話題になる共和党のトランプとは支持のされ方が違う。保守系『ニューズウィーク』でもこう書いている。

 「彼の主張する『政治革命』によって、アメリカ政治がすぐ変わることはないかもしれない。しかし、サンダースに刺激を受けた支持者が民主党の活動に積極的に関わるようになれば、長期的には変わり得る。彼を支持するスタッフやボランティアや活動家が次世代の民主党を担い、今回の経験を将来の大統領選に生かすだろう」

 変わりつつあるアメリカがうらやましい。サンダースがもし大統領になればアメリカが変わり、日米関係も変わるはずだ。貧富の格差の是正、富裕層からの富の再配分は、日本においても至急手を付けなくてはいけない重要課題である。安倍首相にこの国をまかせておいてはダメだということがハッキリした今こそ、日本にもサンダースが出てきてほしいと思う。

 第1位。『文春』の快進撃が止まらない。スキャンダルは週刊誌の華。スキャンダルを忘れた週刊誌など裏のお山に捨てたほうがいい。
 今週は「イクメン」として有名になった宮崎謙介衆院議員(35)の「ゲス不倫」である。彼の妻は同党の金子恵美衆院議員(37)。
 昨年12月23日に宮崎氏は、妻が出産間近なので出産したら約1か月の「育児休暇」を取ると宣言した。
 これに対して国会内外で賛否両論沸き上がった。その反響の大きさに宮崎氏は、

 「ここまで批判があるなら、絶対に折れるわけにはいかない。女性だけに産め、働け、育てろなんて不可能だ。男性の育児参加がなければ、女性活躍と少子化対策の一方は諦めなくてはならなくなる。議員の育児参加が無理なら、政策決定の場に育児や両立の当事者がいなくなってしまう」

 と、さらにぶち上げたのである。
 そして2月5日の朝方、妻は都内の病院で無事男児を出産したのだ。宮崎夫妻にとってめでたしめでたしとなるはずだったのに、そうはいかなかった。

 「この男にそのような高邁な理想を振りかざす資格などない。敢えて言おう。宮崎氏は国会議員である以前に、人としてあまりに“ゲス”であると──」(『文春』)

 何がゲスなのか? 『文春』によれば、宮崎氏は平日を妻と一緒に東京・赤坂の議員宿舎で過ごし、週末は選挙区のある京都の自宅に一人戻ることが多いそうだ。
 この部屋の存在は地元でもあまり知られていないという。それをいいことに、宮崎氏はここで不倫相手と会っているのだ。関係を続けている不倫相手は宮沢磨由氏(34)。あまり知られていないが、芸能活動を続ける現役タレントで、身長168センチ、バスト90センチのプロポーションを売りに、グラビアや舞台などで活躍している女性だという。

 「実家は代々の資産家。着物の着付けもプロ並みという、女子力の高い美女です」(宮沢氏の知人)

 巻頭のモノクログラビアでは宮崎氏と宮沢氏が別々にマンションから出てくるところがバッチリ写っている。
 宮崎氏の経歴は、幼少時代をフィリピンで過ごし、早大商学部を卒業後、IT関連会社などを経て人材紹介のベンチャーを起業して、06年に加藤紘一元幹事長の三女鮎子氏と結婚した。加藤姓を名乗っていたが、わずか3年で離婚している。
 鮎子氏との離婚も女性問題が原因の一つだといわれているそうだ。
 二人のなれ初めは、昨年冬頃、ある会合で宮崎氏に声を掛けられた宮沢氏が一目で彼のことを気に入り、すぐに深い関係になったという。彼女は彼が結婚していることも、妻が出産を控えていることも知りながら「絶対に別れたくない」と言って、周囲を心配させているそうである。
 イクメンからゲスメンに成り下がった宮崎氏はどう答えるのか。『文春』は宮崎氏の携帯に電話をかけた。すると、

 「いやいやいや……もう勘弁してくださいよ。どういう時期か分かってるでしょ!」

 深いため息をついて一方的に電話を切ったという。
 別の日に、妻の見舞いを終えて病院から出てきた宮崎氏を改めて直撃。

「──宮沢さんという女性のことはと聞くと、
 『知らないよ。知らない、知らない』」

 知らぬ存ぜぬで切り抜けられるはずはないのだが、宮崎氏とすれば、これから起こるであろう諸々のバッシングに頭の中が真っ白になっていたに違いない。
 男の子買春議員、パンツ盗人議員、あっせん利得疑惑議員の次は、ゲスメン議員か。これだけ自民党議員にスキャンダルが頻発しているのに、安倍内閣の支持率が下がらないというのは「異常」というしかない。
 宮沢氏の母親がインタビューにこう答えている。

 「娘から何となくは聞いています。でも、その議員さんは子供が生まれたばかり。結婚も二度目でしょう。娘は独身ですが、分別ある年齢です。まさかそこまで馬鹿じゃないと思う。私は娘を信じています」

 だがあまりにもふざけた振る舞いに宮崎議員への風当たりは強く、安倍首相も庇いきれなくなったのだろう。2月12日に宮崎議員が国会内で記者会見して、議員辞職することを表明した。
 不倫相手とは1月4日に着物の着付けをしてもらったことで知り合い、会ったのは3回。京都へ行こうと誘ったのは自分からだったと認めた。妻のお産に立ち会い無事産まれたが、妻の産後が思うように回復していないのに、このような不適切な行為を行なったことを申し訳なく思い、妻と子どもには一生涯償っていきたいと、時折大きく息を吸い、目を潤ませながら何度も頭を下げた。
 私はニコニコ動画で中継を見ていたのだが、野々村某とは違って潔く自らの愚行を認め、辞職したのは男らしくてよかった。
 不倫を報じられた国会議員が、記者会見を開いて謝罪し辞職するというのは初めてではないか。いい前例になったと思う。買春疑惑、盗人疑惑の自民党議員も記者会見を開き、疑惑を認めるなり反論するなりしたらどうだろうか。
 放映中にコメントが次々に流れたが、「もう『文春』は神」「センテンススプリングの破壊力」など『文春』を評価するコメントが多かった。他の週刊誌の諸君はこれを見てどう思ったのだろう。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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