安倍政権が政府機関の一部移転を検討している。政権が看板に掲げる「地方創生」の一環で、移転により地方活性化を後押しする狙いがある。東京一極集中を是正する意味合いもある。

 東京圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)以外の道府県に募ったところ、42道府県から計69機関の要望があった。内訳は国関係が27、独立行政法人が42。中央省庁では例えば、気象庁が三重、観光庁が北海道と兵庫、消費者庁が徳島、文化庁が京都などといったところだ。このうち移転の可能性があるのは、京都府への文化庁と徳島県への消費者庁の二つだ。

 文化庁は「国宝の5割が関西に集積している」などとして京都府が要望。文化庁の一番の業務は文化財保護だが、馳(はせ)文科大臣も全面移転に向け旗を振っている。

 一方の消費者庁。徳島県は所管の独立行政法人「国民生活センター」とともに移転を要望している。徳島県は、「消費者行政の全国モデルとなる各種施策を展開している」と強調する。しかし、消費者庁職員の間には反対の空気が充満し、消費者団体も反発している。そりゃ当然だろう、消費者庁は他省庁との調整も多く、消費者団体からの相談事も多い。職員からすれば、転勤や子どもの引っ越しなど人生設計も大きく変わる。地方勤務となれば、消費者庁を志望する若者も減り、人材不足に陥る。国民生活センターは、メディアの力を借りて広報、PRすることも多いが、徳島に移転されてはメディアの足も遠のくだろう。こうしたことから自民党内からも「(移転は)消費者庁をつぶすことにつながりかねない」(船田元・自民党消費者問題調査会長)とクギを刺す声も。

 「地方創生」という美名の下、受け狙いのポピュリズムで消費者対策の司令塔が潰れてはどうしようもない。

編集部注:文化庁を数年以内に京都府へ全面移転させることが3月22日決定。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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