日本のメディアは機能していない。本来メディアは情報を伝えるだけではなく、権力を監視するという重要な役割がある。だが、今のメディアのほとんどが権力に取り込まれ“ポチ”化し、御用メディアと堕している。その典型なのが、安倍首相が強引に会長に据えた籾井(もみい)NHKであることは言うまでもない。

 『週刊ポスト』(4/15号、以下『ポスト』)は、NHKに報道局員だけが知る「秘密のルール」があると報じている。

 政治報道部には国会中継「する日」「しない日」の決め方があるという。NHKは首相の所信表明演説や重要法案の審議がある日は国会から生中継する。国会中継には「全会派(全政党)が審議に出席する日を選ぶ」というルールがある。

 だが、安保法案審議で大荒れになった昨年7月15日の衆院安保特別委員会をNHKは放映しなかった。視聴者の抗議が殺到したが、NHKはその理由を「全会派がそろうかどうか、直前まではっきりしなかった」ためと弁明した。

 このルールを“利用”すると、与党側は都合の悪い審議を放映中止に追い込めると『ポスト』は言う。実際、13年5月8日の参院予算委員会で自民党の川口順子(よりこ)環境委員長(当時)が国会の許可なく中国滞在を延長したことに全野党が反発、安倍首相を追及していたが、自民党はこの審議を中継させないために「与党議員の審議拒否」という前代未聞の汚いやり方をして、NHKは「全会派出席ではない」として中継を中止したのだ。

   NHKはかつて番組制作費の不正支出問題などで海老沢勝二会長(当時)が参考人招致された国会の中継をやらずに批判を浴びた。そのため籾井勝人(かつと)会長の下で起きた数々の不祥事が国会で追及されたときには、籾井氏の答弁を中継している。

 そのとき、籾井氏の後ろの席からメモを渡すNHK職員の姿が雑誌メディアに報じられたため、「答弁待ちの時は会長が映らないように気をつけている」(NHK関係者)そうだ。これを「モミールール」という。

 籾井会長が就任当初「政府が右と言っているものを左と言うわけにはいかない」と発言して問題になり、撤回して謝罪したが、原発再稼働や安保法制反対のデモに対しては、デリケートな対応を迫られるそうである。

 今は重要なデモは報じるが、「ただし、同時に番組内で政府の立場・主張もしっかり取り上げることでバランスに配慮している」(30代NHK職員)。報道しないで視聴者に怒られるのは怖いが、政府に睨まれるのはもっと怖いということだ。

 政治家を呼んできて議論させる『日曜討論』という番組があるが、これに「NHKの杓子定規な『政治的公平の原則』」がよく出ていると『ポスト』は言っている。

 司会者が自民から共産、社民まで出席者を順に指名し「原則、出演者は秒単位まで同じ時間発言させる」(NHK報道スタッフ)ことを徹底させているそうだ。この番組のときは画面には映らないスタジオのカメラマンたちもスーツ着用が原則だという。

 NHKの予算・決算は国会承認が必要だから、国会議員、特に与党議員に弱いといわれるが、衆参の予算審議の模様は深夜0時過ぎから4~5時間、ノーカットで録画放映される。これにもルールがあると野党の総務委員経験者が明かしている。

 「NHKは自社の予算案を通してほしいから、この深夜の国会中継では与野党の総務委員全員の顔を公平に同じ時間だけアップで映してサービスする習慣がある」

 各党も委員全員を質問に立たせ、地元支援者に「真面目に仕事をやっている」ことをアピールするのだ。

 選挙報道は、民放などでは各党党首の街頭演説をニュースで流すとき、隣にいる候補者の顔や名前の書かれたタスキにモザイクがかけられることが多いが、NHKではこのモザイクは極力使わないという不文律があるそうだ。なぜなのだろう。そのために、カメラに映ろうとしてくる候補者を、カメラ操作や編集でわからないようにするのが大変だという。

 NHKは企業名や商品名、キャラクター名を使わないことで知られる。そのため商標である「テトラポッド」を「消波ブロック」と言い換えたり、山口百恵が紅白で歌った歌詞にある「真っ赤なポルシェ」を「真っ赤なクルマ」と歌わせたりしたことがある。

 だが最近は変わってきているようで、ツイッターやフェイスブックはそのまま社名を使うことにしているそうだ。当然だろう。そのために年に数回、全国の支局デスク宛にFAXで「用語統一連絡」が伝えられるそうだ。

 最近はスタジアム名に企業名が入ったものも多くなってきている。「ヤフオク!ドーム」や「味の素スタジアム」、大阪場所の会場である大阪府立体育会館も昨年から「エディオンアリーナ大阪」になった。どうしても使用しなければならない場合のみ、原則1回だけにしているそうだ。

 ゴールデンウィークがNHKでは「放送禁止用語」だって知ってました? オイルショックの頃、ゴールデンウィークと言ったら、「のんきに休んでいられないのに何のつもりだ!」と視聴者からお叱りを受けて以来「大型連休」と言い換え、以来、今に至るまで変えていないという。

 普段何気なく見ているニュースだが、「おはようございます」「こんにちは」「こんばんは」は、どこで線引きをするのか、なかなか難しい。素朴な疑問にNHK放送文化研究所のサイトでは、「一概には決められません。(中略)地域・季節によって異なるのです」と書いてあるそうだ。

 天気予報にもNHKルールがある。台風などの報道の場合、民放はアナウンサーが暴風雨の中で吹き飛ばされそうになりながら決死的生中継を行なうのがウリになっているが、さすがにNHKはこうした上陸ポイントからの実況はやらない。

 「視聴者に『外出は危険』と呼び掛けているのに、わざわざ記者を危険な波打ち際に立たせたら、同じように見物に行く人が出てしまう。それでは防災や減災に逆行する」(報道デスク)

 これは納得。とまあ、NHKならではの“掟”があるようだが、国民がNHKに望んでいるのは、われわれの側に立った正確な報道で、権力者の言いなりになり、彼らの都合のいい情報だけを垂れ流すNHKでないことは言うまでもない。

 この春の番組改編でNHK『クローズアップ現代』の国谷裕子(くにや・ひろこ)氏、TBS『NEWS23』の岸井成格(しげただ)氏、テレビ朝日『報道ステーション』の古舘伊知郎氏が降板した。中でも岸井氏の発言に過剰反応した高市早苗総務相が、政治的な公平性を欠けば電波を停止するなどと暴言を吐いたり、ウルトラ保守の集まりである任意団体「放送法遵守を求める視聴者の会」が、TBSに対して放送法に違反する、スポンサーに圧力をかけるなどと声明を出した。

 TBSは放送法違反を否定した上で、声明について「弊社番組のスポンサーに圧力をかけるなどと公言していることは、表現の自由、ひいては民主主義に対する重大な挑戦であり、看過できない」などとするコメントを発表した。当然のことである。

 だが、間違いなくテレビ局への安倍政権の圧力は強まっており、現場が萎縮してきている。安倍首相らが言う「公正中立な報道」とは、政府の言うことをそのまま垂れ流していればいい、ということである。NHKのようになれ、ということである。そんなテレビ局や新聞がいくつあっても国民の知る権利に応えられはしない。参議院選で大勝して憲法改正を目論む安倍首相と対峙してどう切り結ぶのか。戦後、メディアにいる人間の覚悟が今ほど求められている時代はない。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 テレビ、新聞にできないことをやるのが週刊誌の役割である。このところ「不倫報道」にばかり偏りすぎたきらいはあるが、ようやく週刊誌本来の「政権批判」が誌面に載りだしてきた。元々『文春』と『新潮』は保守派『現代』と『ポスト』はリベラル派だが、このところリベラル雑誌の旗色が悪かった。「死ぬまでSEX」や株が上がるか下がるかにばかり誌面を割いていたからであろう。ようやく軟派ネタも尽き、株で一儲けもできそうもないと悟ったのであろうか、安倍政権批判に腰を入れだした。注目である。

第1位 「吉田羊『40代オトナ女子の恋』は20歳年下男子と肉食7連泊!」(『週刊ポスト』4/22号)
第2位 「安倍政権が『選挙対策』で隠蔽する『年金運用失敗で5兆円消失』」(『週刊ポスト』4/22号)
第3位 「自民大敗65議席減 民進74議席増」(『週刊現代』4/23号)/「衆参同日選『安倍首相のホンネ』」(『サンデー毎日』4/17号)

 第3位。衆参同日選挙が既定路線のように言われてきているが、『サンデー毎日』だけはやや違った見方をしている。同日選挙最大の障壁は公明党だ。山口代表が「首相が決断すれば、与党はそれを受けて対応する」と発言したことから、同日選挙容認かととらえられているが、公明党の中堅議員はこう言う。

 「その場で、山口さんは安倍さんにダブル選挙について、『政権を失うリスク』という発言もしている。ダブル選になると投票用紙は4枚になる。公明支持層が、その投票用紙に『公明党候補』『自民党候補』などを書き分けるのは大変だし、地域によってそうした態勢は簡単にはとれない」

 山口代表の真意は、自民党との選挙協力は厳しくなりますよと言いたかったというのだ。
 参院選に勝つためには手段を選ばない安倍首相が、負けるリスクまで冒して同日選をやるかどうかは、ギリギリまで情報戦が続くだろうと『サンデー』は見ている。
 自ら憲法改正するチャンスは次の参議院選で勝つことしかない。そのためにバラマキ、保育園支援拡充、学生の奨学金を給付型にと、選挙での争点潰しに躍起になっている。とどめは消費税増税を延期したいが、その判断を国民に問うという自分勝手なテーマを掲げて参議院選を闘うというシナリオは固まっているのであろう。私も同日選はやや遠のいたのではないかなと思うのだが。
 それに『現代』は、7月10日に衆参同日選挙を安倍首相が強行したとしても、言われているような自民大勝ではなく、大惨敗すると予測しているのだ。
 共産党が民進党を中心とした「野党連合」に協力すれば、『現代』のシミュレートによれば、自民党225議席(マイナス65議席)、民進党169議席(プラス74議席)になるというのだ。
 自民党は2回の直近の総選挙で約2550万票前後獲得しているが、民進党と共産党を合わせると1900万票、社民党、生活の党、旧維新の党の票が加われば、2000万票を超えるからそうなるという。
 投票率がどうなるかにもよるが、前回のような低いものにはならないだろう。組織票に若者たちの票が新たに加われば、さらに大きな票を野党が得る可能性はある。
 そうした「リスク」を考えても、安倍首相が同日選に踏み切る度胸はないのではないか。

 第2位。『ポスト』が報じているようにGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が、株で運用している部分で大きく損失を出していることは間違いない。
 そのために「厚労省から出向している三石博之・審議役を中心に、内部の会議で年金積立金の運用実績の公表を参院選後の『7月29日』に延期する方針を決定した。『選挙が終わるまで国民に巨額損失を隠し通す』という露骨な選挙対策である」(『ポスト』)
 ではどれぐらいの損失になるのか。

「野村證券チーフ財政アナリストの西川昌宏氏の試算によると、15年度の年間年金運用実績は外国株式がマイナス3・6兆円、国内株式はマイナス3・5兆円、外国債券マイナス5000億円で3部門合わせると7兆6000億円の大赤字だ(東京新聞、4月3日付朝刊)」(『ポスト』)

 国内債券がかろうじて2.6兆円の黒字だから、損失額は5兆円ということになる。これが裏付けられれば、消えた年金どころの騒ぎではなく、安倍内閣は崩壊すること間違いない。
 選挙前に発表しなくても、これだけ株価が低迷しているのだから、相当な損失を出していることはみんなが知っている。
 アベノミクスが完全に失敗したことは隠しようがない。安倍には早く退陣してもらうのが、日本、否、世界のためだと思う。

 第1位。週刊誌に必要なのは「選択と集中」だ。スクープを連発している『文春』にばかり優れた記者が多いわけではない。それを今週は『ポスト』が見せてくれた。『ポスト』に拍手だ。
 吉田羊(「ひつじ」ではなく「よう」と読む)は年齢を明らかにしていないらしいが、ネットには42歳と出ている。
 今年は映画『嫌な女』『SCOOP!』など4本の公開を控え、NHKの大河ドラマ『真田丸』にも出演、CMも12本というまさに売れっ子の羊ちゃんである。
 だが、彼女の女優人生は順調ではなかったという。小劇場の劇団員として鳴かず飛ばずだったが、今の事務所のマネージャーが目を付け、二人三脚で活動を続け、14年に放送されたフジテレビ系のドラマ『HERO』で木村拓哉の同僚の検事役でブレイクしたという。
 酸いも甘いも噛み分けたアラフォーが選んだのはどんな彼氏か?
 3月下旬の夜10時過ぎ、吉田の自宅マンションから長身の若い男が出てきた。彼から遅れること15秒後に、吉田も出てくる。
 2人が向かったのは近くにあるアジア料理店だった。店を出た2人は手を握り、吉田の自宅に戻り2人きりの時間を過ごしたという。この日から2人の「7日間にわたる“連泊”が始まった──」(『ポスト』)というのだ。7日間も見張っていたのかね? ご苦労なことだ。
 この相手の男はジャニーズ事務所所属の『Hey! Say! JUMP』の中島裕翔(ゆうと)(22)というそうだ。誰でもいいが、グループ名はもう少しわかりやすくしてくれないかね。何と読むのか?(編集部註:ヘイ! セイ! ジャンプ)
 実に年の差は約20歳。これまで吉田は8歳下の男と付き合ったことは話しているそうだ。2人は行きつけのバーのオーナーを介して仲が深まったという。
 吉田の知人が、吉田は振り回されるのが好きで、相手次第でMにもSにもなれるという。だから年下でも大丈夫なんだそうだ。肉食系が草食系に見える若い彼氏を調教しているということか。それとも調教されているのだろうか。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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