スーパーマーケットで、「つれてって!それ、フードレスキュー」と書かれたシールが貼られた食品を見かけたことはないだろうか。

 消費期限や賞味期限が迫った商品に貼られる値引きシールに、「フードレスキュー」というメッセージを加えて、スーパーなどの店頭での廃棄食品を減らそうという取り組みだ。このプロジェクトは2016年2月に東京都環境局により始められた。

 農林水産省の「食品ロス削減に向けて」(2013年9月)によると、日本の1年間の食品廃棄物の排出量は約1700万トン。そのうち、年間約500万~800万トンがまだ食べられるのに捨てられている「食品ロス」だ。

 世界の食糧事情は改善傾向にあるとはいえ、いまだ約8億500万人、9人に1人が飢餓に苦しんでいる。かくいう日本も他人事ではなくなってきており、6人に1人の子どもが貧困で、満足に食事ができない状態となっているのだ。

 2015年9月に国連総会では、貧困や飢餓をなくすための「持続可能な開発目標」を採択した。そして、具体的な行動指針のひとつに、「2030年までに、小売・消費レベルにおける世界全体の一人当たりの食料の廃棄量を半減させ、収穫後損失などの生産・サプライチェーンにおける食品ロスを減少させる」ことが盛り込まれた。

 これに先んじて、フランスでは2015年5月に、大手スーパーマーケットに対して、まだ食べられる食品を廃棄処分することを禁じる法律が制定された。そして、2016年2月に施行され、これまで廃棄されていた食品はフードバンクなどに寄付され、食料を必要とする人に配られることになった。

 地球規模で食糧問題が注目されるなかで、日本でも始まったのが冒頭の「つれてって! それ、フードレスキュー」だ。

 食品を買うとき、賞味期限や消費期限の迫ったものから購入することで、期限切れで廃棄される食品を減らすことが可能になる。その日のうちに食べるなら、消費期限が短いものでも問題はないはずだ。

 消費期限の短いものは値引きされることも多いため、家計も助かる。また、私たちが食品ロスを減らしていけば、ゴミの削減、食糧の生産や流通過程で排出される二酸化炭素の削減にも貢献できる。

 第二次世界大戦後、世界では大量生産・大量消費が豊かさの象徴となり、そこからはじかれたり、余ったりしたものは、廃棄されることが当たり前になってしまった。だが、生まれる国が違えば、おなかいっぱい食べられることは当たり前ではない。

 貧困や飢餓をなくし、環境に大きな負荷を与えずに持続可能な暮らしをしていくためには、これまでの消費サイクルを見直す必要があるだろう。

 そのためには、フードレスキューは大いに活用したいもの。自宅の食品庫に残っている乾物や缶詰なども考慮しながら、食べる予定に合わせて、食品は買いすぎないことを習慣にしたいものだ。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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