鈴木敏文氏(83)は1956年に中央大学を卒業して東京出版販売(現トーハン)に入り、63年にイトーヨーカ堂に入社する。同社の創業は1920年で現名誉会長の伊藤雅俊氏(91)の縁戚が、東京・浅草で「羊華堂洋品店」を開業したのが始まりという。

 彼を有名にしたのは、73年にアメリカのコンビニエンスストア「7-Eleven」(アメリカ・テキサス州オーク・クリフにあった氷の小売店から始まった)と提携して日本初のコンビニ「セブン-イレブン」を立ち上げたことである。社内には時期尚早と反対の声も多くあったが押し切り、82年にはPOSシステムを導入、01年にはセブン銀行(設立時はアイワイバンク銀行)を設立するなど次々に新しいことにチャレンジして成功させ、日本一のコンビニに育て上げた

 アメリカの「7-Eleven」は後に鈴木氏が指導して買収し、今は株式会社「セブン&アイ・ホールディングス」(以下「セブン&アイ」)の被持ち株会社となっている。出藍の誉れである。

 「セブン&アイ」グループを売上高10兆7030億円(2016年2月期連結決算)、営業利益3523億円の日本最大の小売業に育て上げた功労者であり名経営者である。

 カリスマ、超ワンマンといわれていた「セブン&アイ」 の会長兼CEOである鈴木氏が、4月7日に突然記者会見を開いて「退任する」と表明したのだから世間は驚いた。

 それも「セブンイ-レブン」の井坂隆一現社長に対して、COOとしては物足りない、7年もやったのだからもういいだろうと内示を出したのに、2日経ってから、あの内示は受けられない、私はまだ若いしマンションの支払いもあるとけんか腰で向かってきたと、日本を代表する企業の会長とは思えないブチ切れ会見に、記者たちも唖然とした。

 『週刊現代』(4/23号、以下『現代』)によれば、鈴木氏は井坂社長を退任させ、腹心の人間を後任に昇格させる人事案を提出したが、否決されてしまったために辞めることを決意したというのだ。

 超ワンマンが自分の思うとおりに人事を行なえないから辞めるというのはよくあるケースであるが、その背景には、イトーヨーカ堂の創業家との確執や、鈴木氏の息子を将来社長にしたい思惑があるといわれる。

 このようなやり方に反鈴木派は、外資系ファンドを巧みに利用しながら、人事に揺さぶりをかけたというのである。

 『週刊新潮』(4/21号)は4月7日に「セブン&アイ」の本社で行なわれた取締役会の模様をくわしく報じている。鈴木会長が井坂社長の退任を求めた2度の指名報酬委員会で、2人の社外取締役が、好業績が続いている「セブン-イレブン」の社長を交代させる合理的な理由がないと反対したため開かれた。

 表決は取締役15人の投票によって行なわれ、鈴木会長の提出した新人事案に賛成が7票、反対が6票、棄権が2票で、わずかだが過半数に達しなかったため人事案は否決された。そして取締役会後に鈴木会長は「オレは辞める。勝手にやってくれ」と言って、その日の午後、先の記者会見となったのだ。

 鈴木会長が息子の康弘氏を社長にしたがっているというのは事実のようだ。『現代』によれば、創業家の伊藤氏には次男の順朗氏(57)がいて、鈴木氏には次男の康弘氏(51)がおり、ともにホールディングスの取締役・執行役員についているが、康弘氏の評判が芳しくないというのだ。

 「康弘氏はオムニ7というネットショッピング事業を統括していましたが、昨年度は80億円以上の赤字を出し、経営手腕に疑問符がついている。にもかかわらず、今回の人事案が出る10日ほど前から『セブンの社長は、ワンクッションおいて俺で決まり』と社内で吹聴していた。敏文会長は会見で世襲の思惑を否定していましたが、心の隅に息子に継がせたいという気持ちがなかったと言えば嘘になるでしょう。でも康弘氏が社長の器だと考える社員はほとんどいなかった」(「セブン-イレブン」の関係者)

 一方、順朗氏は人望も厚く、今後経営の中心になっていく可能性が高いと評価されているというのである。

 息子を後継者にという考えが強くなっていったのは、鈴木氏の体調の問題も絡んでいるといわれる。

 昨年11月に鈴木氏は「硬膜下血腫」で倒れてしまった。「鈴木会長は焦ったでしょうね。自身の健康に不安が生じ、おちおちしてはいられなくなった。自分の意識がしっかりしているうちに、早く息子に継がせる体制を整えなければならない、と考えたはずです」(「セブン&アイ」の関係者)。それだけに鈴木会長が簡単に経営から手を引くとは思えないという声は多いようだ。

 『現代』(4/30号)と『週刊ポスト』(4/29号、以下『ポスト』)はともに鈴木氏の直撃インタビューをしている。だが、『現代』は前号の記事が鈴木氏の気分を損ねたようで、話してはいるが内容はあまりない。

 『ポスト』も立ち話程度だが、鈴木氏はいったん拒絶した後、再び家の前に出てきたというから、かなり話したいのだろう。

 やはり息子を後任に据えたくてゴリ押ししていると言われていることにこだわっているようで、「親族が後を継ぐことには、基本的に僕は反対。セブンの場合でなくてもね」と何度も言っている。

 鈴木商店と言われているだけに、社内に鈴木復帰を求める声は少なくないようだ。だが、鈴木氏にはショックだろうが、彼の退任発表後に株価は上がったそうだ。市場が鈴木氏退任を評価したのだ。

 「セブン&アイ」は4月19日に取締役会を開き、「セブン&アイの新社長に井阪隆一セブン-イレブン・ジャパン社長(58)が就く新体制を決めた。一方、取締役を退く鈴木敏文会長(83)の処遇は持ち越しとなり、人事を巡る混乱は完全な収束には至っていない」(朝日新聞4月20日付)

 だが、新体制では新設の副社長に後藤克弘・取締役常務執行役員(62)が就任する。後藤氏は管理部門に加えてネットと店舗の融合戦略を担当するそうだが、配下には鈴木氏の次男の康弘氏(51)をつけた。

 また井阪氏の後任の「セブン-イレブン」社長には、鈴木氏と近い古屋一樹副社長(66)が昇格したから、鈴木氏の影響力は残り続けることになるはずである。

 こうした曖昧な人事は実に日本的だが、カリスマを排除できずに何も決められない会社が凋落していったケースは枚挙にいとまがない。

 それに「セブン-イレブン」は好調だが、ヨーカ堂のほうは昨年上半期で91億円の赤字を出し、多くの店舗を閉鎖している。

 名経営者であっても晩節を汚すケースは多い。鈴木氏はダイエーの中内功(いさお)になるのか、すっぱり65歳でホンダから身を引いた本田宗一郎になるのだろうか。

 最後に鈴木氏は出版流通大手の「トーハン」の役員もしているが、こういう声が出版業界にあることを付け加えておく。「『セブン-イレブン』は雑誌で何とか生計を立てていた零細書店を破綻に追いつめていった張本人であり、昨年の『ブラック企業大賞』に選ばれたのも『セブン-イレブン』である。その理由は、加盟店を長年搾取し続けた構造の根深さに加えて、その『負の連鎖』が全国のアルバイト従業員にまでおよんでいるというものだ」

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 新聞の最大のタブーは押し紙である。押し紙とは、新聞社が販売店に買い取りを強制し、配達されないまま古紙業者に回収されていく新聞のことをいう。どこの新聞社もやっていると言われるが、中にいる人間でさえも詳しく知る者がいない。その押し紙問題に公正取引委員会のメスが入ろうとしている。それも朝日新聞に、である。だが、公取委は総理大臣直属の行政委員会でもある。最大のタブーを表に出すと脅しながら、新聞を自分の都合のいいように操る。日本のメディアは不倫や男女の不都合な関係は報じることができるが、権力を揺るがす報道はできない。映画『スポットライト 世紀のスクープ』を観てつくづくそう思った。

第1位 「桃田賢斗スナック美女との『乱倫淫写真』とヤクザ交遊!」(『アサヒ芸能』4/21号)/「『桃田選手』が撮られた『美人ママ』とキス以上の現場写真」(『週刊新潮』4/21号)
第2位 「藤原紀香は知っているのか? 片岡愛之助『隠し子の母』怒りの告発」(『週刊文春』4/21号)
第3位 「朝日新聞またも危機!『押し紙問題』の不可解な裏事情」(『週刊ポスト』4/29号)

 第3位。『ポスト』の巻頭は朝日新聞の押し紙問題である。公正取引委員会が、朝日新聞の販売店が、新聞の注文部数を減らしたいと申し入れたにもかかわらず、同社の営業社員は考え直せと突っぱねたので、たまりかねて公取委に申告したのだ。
 そこで公取委は、放置すれば違反につながると朝日新聞側にイエローカードを出したというのである。
 ここには新聞業界最大のタブーとされる「押し紙の問題」がある。押し紙は販売店の損失になるが、これまでは折り込み広告の利益や、押し紙一部につき月1500円の補助を出していたから続いてきた。
 『ポスト』によれば、慰安婦問題などで14年に約740万部あった部数が同年10月には700万部とわずか4か月で40万部減らし、現在は約660万部まで落ちているという。しかもそのうちの25~30%が押し紙だというのだから、実数は500万部を切るのではないだろうか。
 これは部数1位を誇る読売新聞とて同じである。新聞の窮状が伺えるが、もう一つ見逃せないのが、公取委が押し紙問題に積極的になった背景である。
 公取委は総理大臣直属の行政委員会なのだ。したがって、自分の気に入らないことを書く朝日新聞に圧力をかけるには、安倍首相にとって好都合なのである。
 「いまや新聞は安倍政権に完全に生殺与奪の権を握られたのである」(『ポスト』)
 権力は強く、怖い。押し紙をたった今なくせと言われれば、新聞全体が立ち行かなくなる。新聞界最大のタブーが自分の首を絞めることになっているのだ。

 第2位。今号の『文春』のスクープは、藤原紀香と結婚を発表した片岡愛之助の「隠し子のDNA鑑定を要求していた」である。
 私は忘れていたが、愛之助は5年前に、大阪・北新地のホステスとの間に男の子がいると報じられていたのだ。その大宮美絵さん(47・仮名)が、『文春』に対して愛之助の実のなさを告白している。
 その前に愛之助の経歴をさらっておこう。彼は一般家庭の出身で、松竹芸能で子役として活躍するうちに、故・十三代片岡仁左衛門の部屋子となり、片岡千代丸として歌舞伎デビューした。高校を卒業すると仁左衛門の息子の片岡秀太郎の養子となり、六代目片岡愛之助を襲名する。
 美絵さんが愛之助と出会ったのは18年ほど前。親しくなった愛之助は、難波の松竹座の近くにあった彼女のマンションに泊まるようになる。彼女は愛之助の実家の実父母も公認の仲で、実母は彼女が妊娠中にがんで亡くなっているが、彼女が看取ったと話している。
 子どもが生まれると、愛之助は大阪府内にマンションを購入して、彼女もホステスを辞め、3人で暮らし始めたという。

 「息子の名前は彼の実のお父さんがつけはったんです」(美絵さん)

 愛之助は釈明会見で、母子とは3、4か月暮らしただけだと説明していたが、美絵さんによると、「彼が出て行ったのは息子が幼稚園の年中(四~五歳)のとき。もちろん父親が誰かということはわかっています」。彼女はマンションを貸してアルバイトをしながら夜間学校に通って資格を取ったという。
 息子にお金が必要なときはその都度愛之助にメールをして振り込んでもらった。14年の年末になって、「お金のことでゴチャゴチャ言われるのもいややから」と弁護士を立ててきて、それからは定期的に養育費を支払うようになったという。
 愛之助は紀香との交際が発覚したときも、当時付き合っていたタレント熊切あさ美のマンションから何も言わずにいなくなっている。この男、相手が嫌になると説明責任を果たさず、屁のように消えるのが得意技のようである。
 そしてよりによって結婚会見の翌日、美絵さんは代理人の弁護士から「先方が(息子の)DNA鑑定をしてくれと言っている」と聞いたというのである。

 「五年前、隠し子騒動として報じられたとき、自分の息子だと発表したにも拘わらず、今さら何で? と強いショックを受けました。(中略)息子をどうするつもりなんでしょうか」(美絵さん)

 読んだ感じだが、このDNA鑑定云々はほかに何か事情がありそうだ。愛之助は自身のブログで、「今の時期に突然のことで、しかも事実とかけ離れた記事の内容が出ており、僕自身大変驚いております」と書き、「この件に関しましては、弁護士を立て以前より話をさせて頂いております」としている。
 だが、どんな事情があったとしても、愛之助が“不実”を重ねてきた男ではあるようだ。紀香との結婚も共白髪までといくかどうか、前途は多難のようだ。

 第1位。今週の第1位は、『アサ芸』と『新潮』の発売前から話題になっていた、バドミントンのエース・桃田賢斗(21)の「美人ママとキス現場写真」である。
 この写真は火曜日に発売された『アサヒ芸能』に出ている。写真も同じものだ。ワイドショーなどでは『新潮』によればと、『アサ芸』については触れていなかったようだが、発売日からすれば『アサ芸』堂々のスクープである。
 『新潮』は「キス“以上”の現場写真」とタイトルがうまい。
 『アサ芸』は暴力団関係者が「桃田が錦糸町界隈で派手に遊んでいるのは有名だった。キャバクラやスナックを飲み歩くうちに、複数のヤクザと顔見知りの関係になったと聞いている」と話し、桃田がしている超高級時計の一つはヤクザにもらったと、桃田がひけらかしていたと報じている(NTT東日本広報室はヤクザとの交友については否定)。
 写真の1枚は、女性にせがまれて桃田が目を閉じてキスに応じているもの。もう1枚は、マイクを持って唄っている桃田に、ミニスカートがまくれ上がった女性が馬乗りになろうとしている。
 『新潮』によれば、一昨年の年末頃、墨田区内のカラオケスナックで撮られたものだという。だとすると桃田はまだ20歳になったばかり。
 闇カジノに何度も出入りしていたことが明るみに出て、田児(たご)賢一(26)はバドミントン界から無期限の登録抹消、桃田は無期限の試合出場停止になったことは多くのメディアで報じられた。
 この第一報は産経新聞だが、『新潮』はことが明らかになり警察が動き出したのは、桃田にかかってきた1本の電話だったと報じている。
 その電話は3月30日の午後だった。「桃田さんですか。私は代理の者です。あなたは違法な会員制の店に通っていましたよね。女性と一緒に写っている写真も見ましたよ。よろしければ一度、お会いして話しませんか」。丁寧だが有無を言わせない口調だったという。
 21歳の世間知らずの若者が震え上がったことは想像に難くない。『新潮』が取材を進めると、この電話の主はある映像ディレクターで、闇人脈にも通じているという。彼によれば、知人のフリーライターが、田児が闇カジノで遊んでいるという情報を掴んできたので、取材に協力するつもりで関係者を当たってみたら、桃田も一緒にカジノに出入りしていたことがわかった。写真も目にした。そこでライターに代わって桃田に電話をかけたというのだ。
 この人物、脅したり写真を買い取らせたりするつもりはなかったと話しているが、裏がありそうだ。それはともかく、驚いた桃田はそのことで動転して、結果として警察が動き出し、産経新聞が嗅ぎつけたということらしい。
 有名になって派手な生活がしたいという桃田の夢は、身から出た錆というしかない乱脈な私生活が暴かれ、消え去ってしまったのである。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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