京都の人は、豆を本当によく食べる。名物の「五色豆」、生姜砂糖や青海苔で風味を付けた炒り豆、空豆を煎った「ハジキマメ」、大豆の素朴な塩豆などもお茶請けの定番である。豆はおばんざいの材料としても欠かせないもので、大豆を海老や鰊、ワカメなどと炊いたもの、小豆をカボチャと炊き合わせた「いとこ煮」、ひじきと大豆の煮物「ひじき豆」、「トウロクマメ」と呼ばれる隠元豆を使った料理も多い。そのような数ある豆や料理のなかで、「まめさん」や「おまめさん」と、敬称付きの代名詞で呼ばれているのは「えんどう」である。春から夏にかけ、いったい何度口にすることだろう。

 京都の「まめさん」料理といえば、まず塩味だけで炊き込んだ豆ごはんが定番だろう。そして、家庭でも、料理屋でも好まれるのは「まめさんの葛ひき」。昆布だしのお汁で豆を炊き、お汁を塩、砂糖で味付けしてから、溶いた葛を流し入れ、とろりと固めたものだ。いかにも京料理らしい初夏の味がする。少し暑くなってくると、蕗などと一緒に甘辛く炊いたり、ワカメと一緒にお汁にして食べたり。

 先日、京都人随筆家の代表といえる大村しげさんの著書『京暮し』(暮しの手帖社)を読んでいたら、「まめさんの皮」という料理話が載っていた。これは知らなかった。「えんどう」の皮を剥くとき、鬼皮の内側にある薄皮を分けて取り出し、この薄皮を豆と一緒に炊き合わせるのだという。すると、薄皮はぼっとり柔らかく炊きあがり、大村さんは、豆よりもこちらの皮のほうを好んで食べていたという。

 晩酌にはまめさんがもう一菜。初夏の楽しみとして増えそうである。


まめさん、いろいろ。手前から、やや甘く炊いたえんどう豆、大豆の五目豆、そら豆。


   

京都の暮らしことば / 池仁太   


池仁太(いけ・じんた)
土曜日「京都の暮らしことば」担当。1967年福島県生まれ。ファッション誌編集者、新聞記者を経てフリーに。雑誌『サライ』『エスクァイア』などに執筆。現在は京都在住。民俗的な暮らしや継承技術の取材に力を入れている。
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