4月1日から電力自由化がスタートした。

 これまで、家庭向け電気は地域ごとに決められた電力会社からしか購入できなかったが、電力小売りが全面的に自由化され、「どこの会社から買うか」を自由に選べるようになったのだ。

 自由化に合わせて、参入に名乗りをあげた新電力(小売電気事業者)は286社(4月18日時点)。ただし、家庭向けの販売を予定していない会社もあり、そのすべてが利用できるわけではない。

 家庭向け販売を始めた新電力のなかで、テレビや新聞の広告で見かけることが多いのが、ガス会社、通信会社、鉄道会社、商社など大資本の異業種からの参入だ。こちらは、自社のガスや通信などとセットで使うことで、大手電力会社で契約するよりも、電気料金が安くなるようなプランを組んでいるところが多い。電気の調達先は、天然ガスによる火力発電のほか、既存の大手電力から融通を受けるところもある。

 新電力のもうひとつのグループは、大きな資本に頼らない市民電力だ。こちらは、おもに太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電した電気を供給する。自社の自然エネルギー施設、提携しているメガソーラー施設などからの供給によって、再生可能エネルギーの割合を高めているところが多い。

 料金は、全体的に大資本の新電力のほうが安くなる傾向にあるが、契約する電力会社選びのポイントは料金ばかりではないようだ。

 東日本大震災による東京電力福島第一原発の事故を経験した日本では、市民の間に「自分が使う電気がどのようにつくられたものか」を意識する人が増えている。そうした人のなかには、料金は高くても、原子力や化石燃料など、環境に負荷を与えるエネルギーでつくられた電気ではなく、太陽光や風力などの再生可能エネルギーで発電された電気を使いたいと考える人もいる。そのため、今回の電力自由化では価格だけではなく、「どんなエネルギーで作られた電気なのか」という電源構成にも注目が集まっている。

 それぞれの発電所でつくられた電気は、エネルギー源が化石燃料だろうと太陽光だろうと、送電線のなかで混ざってしまうので、実際に家庭で使う電気は、どこでつくられたものかを特定することはできない。

 だが、再生可能エネルギーで発電している会社に自分のお金を支払えば、太陽光や風力の発電所にお金が回って、自然エネルギーの発電施設を増やすことを手助けできるかもしれない。電力会社を選ぶことは、この先の未来を選ぶことにもつながっているのだ。

 今のところ、実際に契約を切り替えた家庭は、全体の1%にも満たない。「電力自由化に興味はあるけど、どこにしようか迷っている」という人もいるだろう。そんな人は、料金だけではなく、電源構成にも注目をしてみてほしい。

 自分のお金は、どんな電力会社に支払うのか。電力会社を選べば、自分が望む社会をつくることもできるかもしれない。そんな視点で、電力会社選びをしてみてはどうだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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