ここ十何年、お笑い芸人が出るテレビ番組を見ていない。横山やすし・西川きよし、漫画トリオ、コント55号、ツービートあたりまではよく見ていたが、あるときからこちらの感性が合わなくなり、どんな漫才を見てもおもしろくなくなってしまったのだ。

 昨年『火花』を書いた又吉直樹のことを調べるためにYouTubeにある彼の漫才を何本か見てみたが、クスリとでも笑えるものが一本もなかった。

 今回書く松本人志(52)についてもほとんど知らないといってもいい。唯一知っているのは、94年に彼が出した『遺書』が大ベストセラーになったことである。

 「『オレは、この芸能界でやっていくのに、一つのポリシーを持っている。〈憎まれっ子世にはばかる〉というヤツだ』。反論も悪口も大歓迎。ダウンタウンの松本人志が自分たちのお笑いを語る1冊」(amazonの紹介文より)

 読んだと思うが、内容はまったく覚えていない。この頃の松本は、彼の顔つきもあるのだろうが、悪ガキが世の中に悪態をついているという印象だった。そういう意味ではビートたけしと同類だと思っていた。

 だが、2009年に結婚したあたりから芸風が変わってきたそうだ。

 「『ダウンタウンのごっつええ感じ』(フジテレビ系)時代の松本さんは、バイオレンスやハラスメント系のエッヂが効きまくったネタも多かったのですが、今は『妻や子どもに迷惑をかけられない』という潜在意識があるのか、そのようなネタは皆無。『ワイドナショー』と『ダウンタウンなう』が生放送ではなく収録放送にしているのは、失言を避ける意味合いもあるのでしょう。
 このあたりの『家庭を大切にする』というスタンスは、『結婚しつつも芸人らしい破天荒さを貫いてきた』ビートたけしさんや明石家さんまさんとは明らかに異なります。(中略)
 いったい松本さんはどこへ向かっているのでしょうか。前述したようにビートたけしさんや明石家さんまさんではないことは明らかですが、気になるのは、今年6月Twitterでの『オレがキモに命じてること。。。万人に好かれたいならテレビになんか出るな!』というつぶやき。他のタレントに向けたメッセージなのか、それとも現在の自分に対する歯がゆさなのか……」(東洋経済オンライン15年10月03日のコラムニスト木村隆志氏の言葉)

 ゴッホやアンネ・フランク、山口百恵が好きだというから、根は真面目で真っ当な芸人なのではないか。テレビでチラッと見た限りでは、年のせいか、人のいいオッサンになったという印象だ。

 彼を天才だと見る向きもあるようだ。彼の「名言」を集めたまとめサイトもある。いくつか見てみよう。

 「笑う事だけが、人間に許された唯一の特権なんや」「神様が人間を作ったと偉ぶるなら、それがどうしたと言ってやる。俺は笑いを作っている」「生み出すだけが発明じゃないんですよ。何かをやめるっていう発明もあるんですよ」「新しい彼氏ができたんですけど、元カレの名前を彫った刺青はどうしたらいい? 松本『その名前の下に「など」って彫りましょう』」

 そんな松本が8億円の土地転売で大儲けしたと『週刊新潮』(6/23号、以下『新潮』)が報じている。

 JR新橋駅の烏森口を出て大きな通りを西新橋方面へ歩き、ニュー新橋ビルを超えた信号の少し先を右に入ると烏森神社に突き当たる。

 ここいらは古い飲み屋や小体な寿司屋などがある飲み屋街。かつては新橋南地と呼ばれた花街があった場所で、私もときどき行く好きな場所だ。松本が買っていた土地は『新潮』によるとこうだ。

 「その飲み屋街からさらに西、やはり飲食店や居酒屋が軒を連ねる一画に件(くだん)の土地はある。
 赤い庇が特徴的な古びたタバコ屋が烏森通り沿いの角にあり、隣には小ぢんまりとした韓国料理屋。この2つの建物を取り囲むL字型の更地は現在、車10台が駐車できる『Times』というコインパーキングになっているが、そここそ、ダウンタウンの松本人志が以前取得し、今年になって売却した土地だ」

 広さは約261平方メートル、約80坪。松本個人で10年8月10日に取得している。抵当権も根抵当権も設定されていないからキャッシュで購入した可能性が高いと、『新潮』は言っている。

 地元の不動産屋は、松本が買ったのはリーマンショック後で比較的地価が下がっていた頃だから、購入価格は8億円ほどではないかと話し、続けて、現在地価は倍増しているから、売却価格は16億円ぐらいになるのではないかと言っている。

 まあ、ようござんしたね松本さん、という話だと思うのだが、『新潮』は難癖をつけたいらしく「この土地を買うとは松本は相当な玄人」だと言う。

 それは、韓国料理屋とタバコ屋が立ち退いてくれれば、長方形の土地になって価値は増大するのだが、韓国料理屋は頼めば承諾してくれそうだが、タバコ屋の高齢姉妹が頑として売りたがらない「有名な土地」だからだというのである。

 多くの一儲けを企んだ業者が姉妹との交渉に挑み、玉砕してきたというのだ。そういう曰く付きの土地に目をつけたから、松本は玄人ではないのか。

 姉妹は、ウチは江戸時代からやっているから手放さないと言っているという。姉妹の一人とおぼしき女性に『新潮』が話を聞くと、

 「価値が違うでしょ、全然。ここを手に入れれば。あんな狭い入口で、奥がいくら広くたって、価値が違うわよ。そりゃ当たり前でしょ。でもウチは昔から売るつもりはない」

 と、けんもほろろである。

 だが、そんな話はどこにでもあるし、この姉妹が悪いわけではない。また松本が誰かの入れ知恵(『新潮』では島田紳助ではないかと推測している)でその土地を買ったとしても、それだけでとやかく言えることではないはずだ。だが、コインパーキングにして固定資産税分を賄いつつ、5年以上経つと、長期譲渡所得として税率は20%で済むという(5年以内だと短期譲渡所得ということで売買で得た利益の39%が税金として持っていかれる)。

 『新潮』が出た後、松本はこうぼやいているという。

 「ワイドナショーで松本さんは、『怒ってるわけじゃないんですよ。土地を売った。それだけのことなんですよ。「こんなんネタになるん?」ってことですよ。どうせならもう少し面白いネタをね...若手が俺の名前だしてスベったみたいな感じ。もっと面白く、文春に負けへんぐらいのネタを持ってきてくれよ』と苦言を呈した。また、『金額は嘘。土地転がし感を出してる。ありえない』と、金額についても否定した」(『ハフィントンポスト日本版』6月19日 11時08分より)

 今のお笑い芸人には不動産で儲けているのが結構いるという。人気商売は世間から飽きられればそれで終わり。その日のために、不動産や飲食店を経営する芸人が多いのは「自己防衛」なのだろう。清原和博のように、あれだけ稼いだのに今は一文無しというケースもあるのだから。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 舛添要一都知事辞任フィーバーがようやく終わって、次のターゲット探しに各誌狂奔しているはずだ。そこはさすが『文春』。東京五輪招致のために多額の裏金がIOCの委員に渡ったのではないか、その窓口をやったのは元電通の専務ではないかという疑惑が出ているが、大手メディアは電通の力の前にひれ伏して、ほとんど独自取材はしていないようだが、それならオレに任せろと、『文春』が追及に乗り出した。見物ではあるが、どこまで電通タブーに迫れるのか

第1位 「『東京五輪招致』電通元専務への巨額マネー」(『週刊文春』6/23号)
第2位 「気をつけろ!『保険ショップ』にダマされる中高年が急増中」(『週刊現代』7/2号)
第3位 「医者に言われても『受けてはいけない手術』『飲み続けてはいけない薬』」(『週刊現代』7/2号)

 第3位。『現代』が毎週やっている手術は受けてはいけない、薬は気をつけろという特集だが、これだけ続けているというのは、売れ行きがいいのだろう。
 だが、私のような「成人病の宝庫」のような人間が読むと当たり前で、失礼だがおもしろくもおかしくもない。
 そう思いつつ、一応紹介しておく。
 まず、初期のがんであっても医者が手術に失敗することがある。当たり前じゃ。
 父親を食道がんの手術がきっかけで亡くした平山久美さん(47歳・仮名)は「メスを持った若い医師が頸動脈を傷つけるミスを犯した。まさか、あれほど自信満々だった医師の手術が失敗するとは思いませんでした。安易に手術を選択したことを悔やんでいます」と語っている。
 特に外科医はメスを持ってナンボというところがあるから、すぐに手術をしたがる。だが、手術したことでより悪化させてしまうことはよくあるのだ。
 また外科医の平岩正樹氏はこう言う。

 「胃瘻(いろう)(腹に穴を開け、直接胃に栄養を送ること)をするようなことになってしまうと、『自分の口で食事もできずに長生きするくらいなら、手術はせずに死んだほうがマシだった』と考える人も出てきます」

 私の父親がそうだった。誤嚥性肺炎には何度もなったが、自分で食事することは最後までやめなかった。
 しかし、若い医者が熱心に勧めるので渋々胃瘻にしたが、したとたん、気力が衰え寝たきりになって、数か月で亡くなってしまった。今思い返しても痛恨事である。

 「65歳を過ぎて、体力の衰えが目立ってきた高齢者にとっては、手術がベストな選択肢とは言えないのですが、医者はそこまで考えてないし、教えてもくれません」(都内大学病院の呼吸器外科医)
 「医者がいくら『安全だ』と言っても手術後、身体にどんな弊害が出るか分からない。しかも腰や膝、眼といった、手術をしなくても命に別状はないような病気であればあるほど、『なぜ手術したのか』『保存療法のほうが、健康寿命が延びたのでは』という後悔も大きい」(『現代』)

 最近とみに増えてきた内視鏡や腹腔鏡手術には危険が伴う。

 「開腹手術なら術中の思わぬ出血にも適切に対処できますが、腹腔鏡手術では予期せぬ出血が起きてしまうと止血がままなりません。(中略)
 特に肝臓やすい臓におけるがんは大量出血の恐れが高く大変危険です。肝臓やすい臓の場合、大血管が周囲に存在している上、体内の奥深くにあるため、内視鏡のモニターでは見えづらく、誤って傷つけてしまう可能性が高いのです」(浜松労災病院の有井滋樹院長)

 腹腔鏡手術は非常に高度な技量が要求され、一歩間違えれば「死」のリスクを伴うことを忘れてはならないと『現代』は言う。
 また全身麻酔もよく言われるが大きな危険を伴う。麻酔薬の分量を正しくコントロールするには熟練が必要だし、もっと言えば、なぜ麻酔薬を投与されると人は意識や感覚を失うのかというメカニズムそのものが、いまだ完全には解明されてはいないからだ。
 私の年上の友人は、昨年夏に肺がん、それも末期ではないかと診断された。相当悩んだが、医者の言うとおりに抗がん剤治療をはじめた. やはり副作用がきつく、日に日に身体が痩せて、食事も喉を通らない。
 そういう姿を身近で見ていると、あのとき、抗がん剤治療ではなく、緩和ケアのようなやり方のほうが、好きな食事をしたり仕事を続けたりできたのではないかと、後悔している。
 自分の最期のときは、絶対抗がん剤はやらないと決めているのだが、医者から、抗がん剤治療をしたら完治するかもしれないと言われたら、拒み続けられるだろうか。自信はない。
 こうしたテーマは、いい悪いではなく、ケースバイケースで、個々の例を詳細に追っていかないと、わからないことが多い。もっと工夫がほしいテーマである。

 第2位。以前から気になっている「保険の何々」「保険を考えるなら〇〇へ」などという、保険の相談を無料で受けるところが増えてきた
 それも儲かるのか、大きな陸上大会などへの宣伝やテレビのCMなども打つようになってきた。
 私も前に一度相談に行ったことがある。驚いたのは、お宅は無料相談というから、どうやっておカネを稼いでいるのかと聞いたら、しらっとして「保険会社さんから協賛金のような形でおカネをもらっています」と言うではないか。
 保険会社からカネをもらっていて、客観的な判断ができるわけはないと、早々に引き上げたが、その後もそうした窓口が増えているのは、保険に無知な人が多いのだろう。
 『現代』が「気をつけろ!『保険ショップ』にダマされる中高年が急増中」だと警鐘を鳴らしている。
 神奈川県在住の女性(40代)が初めて「保険ショップ」を訪れたのは、軽い不整脈で入院したことがきっかけだった。小学生の子どもと共働きの夫がいる。
 そこで提案されたのは「投資型保険」だった。払い込んだ保険料を保険会社が株式等で運用し、その運用結果次第で受け取れる保険金額等が増減する商品である。
 彼女は後で知ることになるが、実は元本割れのリスクがあり、損をするかもしれない商品だったのだ。
 ファイナンシャルプランナーの宮崎貴裕氏はこう言う。

 「保険ショップは『乗り合い代理店』として、様々な保険会社の商品を取り扱い、それを売ることで保険会社から契約手数料をもらっている。手数料は商品によってだいぶ差があります。
 本来、彼女にとって望ましいのは学資保険や終身保険など、元本が保証されている保険商品のはず。ところがこれらは、保険ショップが保険会社からもらえる手数料がものすごく安い。一方で、投資型の保険は元本割れのリスクをともなう分、ショップが手にするマージンが大きい。このケースでは、ショップ側が手数料欲しさに『安全運用』を望む彼女の意向を無視したわけです」

 保険屋が信用をなくしているから、こうした代理店を隠れ蓑にして保険を売ろうという、悪徳商法ともいえる手口である。
 こんなところにダマされないためには、少しでも自分で保険の知識をつけることしかない。気をつけよう、甘い言葉と保険の勧誘。

 第1位。今週の第1位はやはり『文春』。『文春』の見事さは、ターゲットにする人物の「選定」のうまさだが、今週は東京五輪の招致に絡んで、多額のワイロを贈ったのではないかという「疑惑」が言われている電通の元専務・高橋治之氏(72)に絞ったところなんぞ、憎いね。
 だが、疑惑に迫れたのかといえば、道半ばであろう。舛添スキャンダルのように連続追及してもらいたいものである。
 『文春』追及の要点は二つある。一つは高橋氏がJOC会長兼組織委員会副会長、招致委員会理事長だった竹田恒和氏(68)と極めて親しいこと。竹田氏の兄と高橋氏が慶應幼稚舎からの同級生で、竹田氏は高橋氏に頭が上がらないらしい。
 もう一つは興味深いカネの話。電通を退職した高橋氏は「コモンズ」という会社の代表を務め、電通時代の人脈を生かしてコンサルタント業務をはじめた。
 2020年五輪招致委員会の「スペシャルアドバイザー」に就任する。この「コモンズ」に関しては、大手民間信用調査会社が詳細な調査レポートを作成していると『文春』は言う。
 それによると、売上は2012年12月期の約6億3000万円から、招致活動が山場を迎えた翌年には約14億9000万円に跳ね上がっているというのである。
 その原動力は会社のコンサルタント部門の収入で、2012年12月期に約3億3000万円だったが、翌年には人脈を見込まれ調整活動を委託されて、コンサル部門は11億円を超える大口収入となったと書かれているそうだ。
 現在問題になっている2億3000万円を超える巨額な資金が招致委員会などから「コモンズ」に支払われているのである。しかし、調整活動に奔走したことで支出も増えて増収効果は薄く、営業利益は約1億8000万円に終わっている。
 調整活動に多額のカネが使われたためだが、その活動の実態とはどのようなものだったのか。元電通とはいえ、その会社に五輪招致のために巨額のカネを払うのは、IOCの有力委員たちへのロビイング&ネゴを期待してのことであろう。
 きな臭い臭いがプンプンするが、舛添やショーンKとは違って、高橋氏の後ろには電通が控えている。自民党と通じ、メディアを押さえ威嚇している電通タブーを打ち破り、五輪招致の闇に切り込めるのか、『文春』。お手並み拝見といこう。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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