『週刊現代』(7/2号、以下『現代』)がテレ朝の『報道ステーション』と日テレの『笑点』の「毎分視聴率」を分析して、テレビからCMが消える日がそう遠くないうちに来るという特集を組んでいる。

 要は、『報ステ』のほうはCMが流れると視聴率が下がるが、『笑点』のほうはそうしたことがないというのである。なぜ『笑点』はそうなるのか。

 「もちろん新司会者である春風亭昇太さん、新メンバーの林家三平さんに注目が集まっていることもありますが、最大の理由は『笑点』の視聴者層が、50代以上が約75%であること。高齢者の多くは新しい番組を探すのではなく、『視聴習慣』で見ていますから、CM中にザッピングすることがないんです」(日テレ関係者)

 では、これからも『笑点』のCMに心配はないのか? そうではないようだ。

 「実はF1層(女性20~34歳)の視聴者層は2%ほど、M1層(男性20~34歳)も同程度しかいません。そのため現在、出稿量が多い携帯電話会社や携帯ゲームのCMは、『笑点』では流れていません。今は問題ありませんが、もし景気が悪化して現在のスポンサーが降りても、IT企業が出稿してくれるかわからない。逆に『SMAP×SMAP』(フジテレビ)などは、視聴率はさほどではありませんが、スポンサーに人気の枠です。視聴者の大半が若い女性という貴重なプライムタイムの番組で、化粧品会社などが広告を入れます」(大手広告代理店社員)

 電通の発表によると、15年のテレビ広告費は1兆9323億円(前年比98.8%)だが、ネット広告費は1兆1594億円(前年比110.2%)と追い上げている。あと数年で逆転するのは間違いないだろう。

 減り続ける広告費を何とか押し留めようと、民放各局は涙ぐましい努力をしている。

 「プライムタイムは各番組とも毎分視聴率が細かく波を打ちます。ウチでは翌日の朝9時には前日の毎分視聴率表が編成部や担当プロデューサーの元に届く。その表に若手スタッフがCM時間や放送内容を細かく記入します。それを基に今日はどこにCMを入れるかを決めるのが、プロデューサーの腕の見せ所です」(テレビ朝日社員)

 日本民間放送連盟は、プライムタイムの番組内で放送できるCMの時間量を定めている。5分以内の番組なら1分以内、10分以内の番組なら2分以内、60分以内の番組なら6分以内となるそうだ。

 「少しでも増やすために、54分の番組と6分の番組で構成して、1時間の番組内で8分のCMを放送できるようにするのが当たり前になっています」(先の大手広告代理店社員)

 だが、視聴率がわずかに上がったからといって、広告料金単価は目一杯上がっているのだから、それによって広告が増えたり制作スタッフに還元されることはないという。

 「民放キー局においては、視聴率というのは、もはや局員の評価指標でしかないんです。プライムタイムでどシングル(5%前後)の数字を取ったら、担当を外されてしまうから、10%は確保したいという意味しかないのです」(民放の情報番組制作会社スタッフ)

 その視聴率も、年配女性の視聴時間は増えているが年配男性や若者の視聴時間は減ってきている。ということは、購買層が見ていないということになるのだ。

 テレビCMの価値がどんどん下がっていく流れは止めようがなく、「視聴率が10%を超えれば合格という今の時代に、企業がかつてと同じだけの広告費をテレビに投入できるかというと、そうはいきません」(上智大学教授の碓井広義氏)。マーケティング会社インテグレート代表の藤田康人氏は、テレビCMは突然死するという。

 「いま広告業界とテレビ業界で恐れられているのは、『テレビCMの突然死』です。私たちの調査では、テレビCMの視聴者へのリーチ(到達率)が最大40%というケースもありました。これが30%、20%となった瞬間に、特に若者向けに事業をしている企業が『もうテレビ広告は必要ない』と一斉に見切りをつける日がくるかもしれません。すでに『この商品は若者向けだから、テレビCMはナシでプロモーションしよう』という企業が増えています」

 テレビを見ながらスマホを使っている人は6割に及ぶという調査結果もあるようだ。当然ながらCMなど見てはいない。

 「若者のテレビ離れ、録画が便利なハードディスク・レコーダーの普及、スマートフォンの登場などテレビCMがパワーダウンした要因はいくらでもある。スポンサーから広告料金を取り、無料で番組を流すビジネスモデルに限界が来るのは自明だ。
 すでに『WOWOW』と『スカパー!』が健闘している。有料放送が浸透し、視聴者は見たいものをカネを払って見るようになってきたのだ」(『現代』)

 先の藤田氏が、テレビCMが危険水域に達する時期をこう指摘する。

 「節目として東京五輪が開催される'20年があります。そこまではなんとか景気も持つでしょうが、その一方で、五輪に向けてデジタルのインフラ整備も進んでいきます。そのときテレビの力がどれぐらい落ちているか、テレビに代わるネットがどれだけ力を付けているのかが、ポイントになります。五輪の後は、どこの国でも景気が下がる。そして、'20年から'23年にかけて世代交代が進みます。テレビとネットのバランスが崩れたとき、まさに『テレビCMの突然死』が起こる可能性があります」

 23年には人口の半分が50歳以上になる。一方で幼少期からインターネットに触れてきた世代が20代~30代になる。社会の中心世代が「テレビ世代」でなくなるのだ。

 テレビ各局も座して死を待っているわけにはいかない。ネットへの投資も行なってはいる。日テレは「Hulu(フールー)」、テレ朝はインターネットテレビ局「AbemaTV(アベマティーヴィー)」をスタートさせ、フジもIT企業「グリー」とVR(バーチャルリアリティ)コンテンツ制作配信事業に進出するそうだ。

 だが、こうした事業が本格化しビジネスになっていけばいくほど、これまで稼ぎの柱だったテレビCMがやせ細っていくことは間違いない。

 視聴率の下げが止まらないフジテレビは、2016年3月期決算で売り上げこそ2897億円でテレビ東京の1073億円を大きく引き離してはいるが、当期純利益ではテレビ東京が約41億円に対してフジテレビは約33億円と、テレビ東京の後塵を拝したことが業界の話題になっている。

 格安の電波使用料でテレビを独占してきた民放のビジネスモデルが崩壊しようとしている。それにたかってうまい汁を吸ってきた電通のパワーもダウンしていくのだろう。それとも今度はインターネットにたかってうまい汁を吸おうと画策しているのだろうか、電通は。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 大橋巨泉さんとのことは以下に書いたから読んでいただきたいが、編集という仕事をしていると、一時期だが、作家や文化人、芸能人と親しくお付き合いしたことが幾度かある。櫛の歯が欠けていくようにその人たちがいなくなると、昔は電話帳に印を付けていたのだが、あるときからやめてしまった。存命している人のほうが少なくなってしまったからだ。アホな副総理が「90になっても老後を心配する。いつまで生きているつもりだよ」という暴言を吐いたが、長生きは罪だという風潮が広がっていくのかもしれない。嫌な時代だな。オレだけはどんなに嫌がられてももう少し生きてやろう。亡くなっていった人たちの“無念”を抱きながら。

第1位 「安倍自民党と公明党はなぜ『共産党』をこんなに怖れるのか」(『週刊ポスト』7/8号)
第2位 「女性警官役で人気の高島礼子 夫の薬物乱用『ダメ。ゼッタイ。』」(『週刊朝日』7/8号)
第3位 「大橋巨泉『今週の遺言』最終回」(『週刊現代』7/9号)

 第3位。大橋巨泉さんとは長いお付き合いになる。最初に会ったのは確か競馬場だったと思う。作家の山口瞳さんの競馬連載に出てもらった。当時巨泉さんのレギュラーが多かったTBS近くの小料理屋でよく飲んだものだった。
 銀座へ流れて、途中で「元木、オレ日テレに行くから」と席を立つことが何度もあった。『11PM』に出るためである。テレビのある店へ移動して番組を見ていると、あれだけ呑んだのに司会の進行にいささかの乱れもなかった。
 ときどきは一緒に日テレに行き、後ろで見ていたこともあった。忙しいのに私の結婚式の披露宴に出席してくれ、新婚旅行は、当時、彼がハワイにもっていた旅行会社のお世話になった。
 セミリタイヤしてからも、ときどき会って酒を呑んだり、巨泉さんの家で一緒にカラオケを歌ったことも懐かしい思い出である。
 私が『週刊現代』の編集長のとき、連載コラムをお願いした。巨泉さんは山口瞳さんの弟子を自認し、『週刊新潮』の「男性自身」のような人気コラムにすると張り切って引き受けてくれた。
 コラムのタイトル「内遊外歓」は私がつけた。94年に始まり586回続いた。がんに罹ったことなどもあり中断するが、08年に「今週の遺言」として再開し、今週号で344回になる。
 合計930回。もう2年近く続ければ1000回になったのに、今回で「最終回」となってしまった。何回目かのがんで、今回はかなりきつそうだなとは思っていた。ずっと休載が続いていたが、その日が来てしまった。
 巨泉さんのことだから、まだまだ闘い続けるとは思うが、お別れの日は近いのかもしれない。
 巨泉さんがこれだけは言わないと死んでも死にきれないという言葉をここに書いておく。

 「最後の遺言として一つだけは書いておきたい。安倍晋三の野望は恐ろしいものです。選挙民をナメている安倍晋三に一泡吹かせて下さい。7月の参議院選挙、野党に投票して下さい。最後のお願いです」

 第2位。さて、人生とは皮肉なものである。『朝日』によれば、高島礼子(51)は昨年4月に神奈川県の薬物濫用防止条例をPRする「薬物乱用防止対策官」を委嘱されたとき、こう言ったという。

 「違法薬物を絶対に買わない、使わない、関わらないという強い意志と勇気を持とう」

 その夫で、元俳優の高知東生(たかち・のぼる)(51)が、6月24日に、覚醒剤取締法違反(所持)などの容疑で、厚生労働省関東信越厚生局麻薬取締部に現行犯逮捕されてしまったのである。
 それもホテルでクラブホステスと寝ている現場に踏み込まれたのだから、高島の心中いかばかりか。
 高知は少し前に、俳優として限界を感じ、妻を内助すると主夫宣言したばかりである。
 だが、妻として夫の覚醒剤好きに気づかなかったのだろうか。酒井法子は夫とクスリをやっていたことがバレて芸能活動ができなくなった。
 小股の切れ上がったという表現が似合う高島だから、知っていたら「ふざけんなよ」と夫に言ったと思うのだが。

 第1位。『ポスト』は自民党や公明党が共産党の勢いに脅えていると報じている。何しろ産経新聞とFNNの6月18日から19日の調査では、共産党の政党支持率は5月の調査の3.8%から5割増しの5.7%に急伸、参院選比例代表でも投票したい政党で7.4%になっている。
 共産党の党員は約30万人といわれる。この人たちが「赤旗」を配ったり党のチラシをポスティングするのだから、公明党以上の組織と動員力がある。
 『ポスト』によれば、前回の総選挙のデータをもとに今回の参院選のように共産党、民進党などが野党統一候補を立てた場合の議席数をシミュレーションすると、54選挙区で与野党の得票が逆転したという。
 今回の参院選で共産党の票が増えることは間違いないだろうが、どこまで自民党を追い落とすことができるか、期待を込めてお手並み拝見である。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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