『週刊新潮』(7/21号)は今回の参院選を「我ら凡俗の審判」とタイトルを銘打っている。冒頭のグラビアで、安倍首相は「経済の再生を旗印にしていたのに、株価は低迷、為替は円高、アベノミクスもどこへやら、とても選挙を戦える状況になかった」はずが、蓋を開ければ改憲勢力で3分の2を占める圧勝劇だった、と報じている。

 私を含め多くの有権者たちはこの結果に当惑し、どこの誰がこんな審判を下したのかと天を仰ぐばかりなのである。

 「生活の党と山本太郎となかまたち」の山本が個人的に推していたミュージシャンの三宅洋平(東京選挙区・落選)に対して、熱烈なファンだという首相夫人・安倍昭恵がfacebookを通じて「三宅洋平さん、公邸でお待ちしています!」とメッセージを出した。

 さらに昭恵は選挙戦の中盤に新宿駅前を訪れ、「アベ政治を許さない」の紙を持った男たちと3ショット写真を撮り、自分のInstagramにアップして話題をさらった。

 夫婦揃って野党を舐めきっていたのである。

 そのうえ安倍は、参院選を盛り上げないようメディアへ圧力をかけ続け、「憲法改正」という四文字を封印して選挙戦を戦った

 党首討論を逃げ続け、GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が株の運用で5兆円もの赤字を出したことを選挙中には発表させなかった。

 メディアへ圧力をかけ続ける一方で、潤沢な資金を使って安倍自民党のCMを大量に流す「あめ玉」作戦にも抜かりがなかった

 たしか7月8日のNHK『ニュースウオッチ9』だったと思う。冒頭、東京都知事選挙関連で始まり、次は九州を襲った豪雨のニュース。

 都知事選はいくら関心が高いといってもローカルな話題である。選挙戦最後の金曜日だから、参院選関連のニュースに多くの時間を割くべきだが、NHKの上のほうから参院選にはなるべく触れるなという指示があったのではないか。

 投票当日の朝刊に載った安倍自民党広告を見て違和感を感じた向きも多いだろう。私が見たのは朝日新聞だが、読売、毎日にも掲載されていた。

 YAHOO!ニュース(7月10日)で渡辺輝人弁護士がこう書いている。

 「自民党の新聞広告は公職選挙法違反(法129条。選挙当日の選挙運動の禁止)に該当する可能性が高いはずです。(中略)
 自民党の今日の広告が許されるのなら、投票所の前で、各政党が、例えば消費税増税に反対する署名を集めたり、残業代ゼロ法案に反対するアピールを行うことも特に問題ないことになるはずです。(中略)
 自民党が、『選挙の公正』も『金権選挙の防止』も目もくれず、自分だけはその規制をないもののようにする行為をやったのは卑怯・卑劣というほかないでしょう」

 毎日や読売は、これまでも投票日当日の広告を掲載している、今回の自民党の広告も通常の政治活動の一環と考えているから何の問題もないという見解のようだ。だが、私は納得できない。

 投票前には安倍の経済政策を見直すべきだという世論が55%だと朝日新聞は報じていた。原発再稼働や安保法制に批判的な声は多数だったに違いない。憲法改正についても9条を変えるなら反対という世論が過半数を大きく超えていたはずである。

 だが、こうした真っ当な声は、メディアの沈黙と安倍自民党の宣伝の巧みさ、安倍の改憲隠しが功を奏して、大きなうねりにはならなかった

 憲法改正か否かという戦後最大のターニングポイントになる選挙戦であったはずが、終わってみれば投票率は54.70%、戦後4番目の低さだった。

 朝日新聞は7月11日の社説にこう書いた。「『安倍一強』に対抗できる、あるいは歯止めとなりうる力が統治機構の中に見あたらない」と。おきゃあがれ! 野党がだらしなければメディアが安倍政権をチェックしてやるぐらいの気概がなくてどうする。

 改憲イエスかノーかが最大の争点であったはずが、大メディアは選挙後の安倍の報復に恐れをなし、争点ぼかしに力を貸してしまった。結果、有権者の多くは何が争点かわからず投票してしまったのである。メディアの責任は「犯罪的」といってもいいかもしれない。

 安倍は選挙直後「次の国会から憲法審査会を動かす」と明言した。これまでは絵空事だった改憲に手が届くところまで来たのである。

 「おじいちゃん(岸信介)、ボクやったよ」と仏壇に手を合わせたかもしれない。

 だが、今回の参院選大勝は安倍政権の終わりの始まりだと、私は思う。『週刊ポスト』(7/22・29号)でジャーナリストの山口敬之(のりゆき)はこう書いている。

 山口は、第二次安倍政権が、特定秘密保護法、原発再稼働、安全保障法制といった難しい課題を次々と突破できた原動力は、安倍が「サイレント・マジョリティ」と呼ぶ「非リベラル層」によるところが大きいが、一口に「改憲勢力」と言ってもその内容から方法論に至るまで千差万別、百家争鳴であるとしている。

 「2/3という遠かったはずの目標が目の前まで来た安倍にとって、憲法改正はもはや、リベラル護憲派との戦いではなくなりつつある。いわゆる『改憲勢力』内部の不統一にこそ、最も深刻なリスクが内在している。さらに、衆参両院で憲法改正の発議を勝ち得た先には、国民投票という最後の難関が控えている。
 安倍は消費税先送りと衆議院解散の是非を巡って麻生と対峙した5月30日、こう漏らしたという。
 『憲法改正はもちろん悲願だが、どう実現できるか、心が揺れないと言ったら嘘になる』 
 もし安倍が憲法改正に向けて逡巡したり、決断を先送りしたりすれば、今度は『非リベラル層』の中の『保守層』が黙っていない。安倍を強く支持してきたコア層の失望は、政権の求心力を大きく毀損するだろう」(山口)

 保守といっても様々である。今話題の「日本会議」は「西洋の植民地主義から東アジアを解放した日本を称え、再軍備をし、生徒たちに愛国心を植え付け、天皇を敬えと訴えている」(英国『エコノミスト』2015年6月6日号)というウルトラ保守派である。

 さらに憲法改正発議にまで何とか漕ぎ着けたとしても、国民投票になれば国論を二分することになる。そうなれば英国のEU離脱のように、投票後にさまざまな遺恨が残り、憲法改正どころか自分が総理の座から降りざるを得なくなるはずである。

 もちろん『新潮』が言っているように、「お試し改憲」という姑息な手を安倍が使ってくることも考えられる。

 「国民的合意の得られていない9条改正はとても無理でしょうから、環境権や緊急事態条項を加えるといった、多くの人が反対しないであろう『つまみ食い改憲』から手をつけることになると思います」(政治アナリストの伊藤惇夫氏)

 公明党は改憲には及び腰だが、加憲には賛成するといわれているから、乗ってくる可能性はある。

 『新潮』によれば、最短の場合は来年秋の臨時国会で憲法改正の発議をして、その年末に国民投票を行ない衆院を解散して信を問うという「奇策」に打って出るかもしれないと見る。

 しかし安倍の悲願である9条改正には至らず、後継を指名して引退後に夢を果たすというシナリオがあるというのである。

 だが、田中角栄のような大派閥を率いているわけではない安倍が、引退後に院政を敷けるわけはない。中途半端な憲法改正は、先ほど触れた思惑がバラバラの保守層からも強い批判を浴びることであろう。

 どちらにしても、勝つ理由のほとんどない選挙で大勝してしまった安倍首相は、憲法改正というルビコン川を渡りきらないうちに沈没することになると、私はゆったりした気持ちでこれからの政局を眺めたいと思っている。(文中一部敬称略)

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 参議院選挙の結果のように「嫌な話」が多いので、人気グループのお目出度い話を中心に選んでみた。「水曜日のカンパネラ」のコムアイという女性の同棲話が『フライデー』にある。カラッとしてどこか飛んでいる女性で、インタビューにきた記者を誘って彼氏と食事に行っちゃうところがすごくいい。YouTubeで900万回再生されたという『桃太郎』は、彼女のキャラもあって乗りのいいラップ。プレスリーやビル・エバンスばかりでなく、たまにはこういう曲を聴かなくちゃね。

第1位 「二宮和也を離さない!野心の35才美人女子アナと真剣愛」(『女性セブン』7/21号)
第2位 「人気AV女優〈香西咲〉実名告発『脅迫・洗脳・囲い込み地獄』」(『週刊文春』7/14号)
第3位 「『水曜日のカンパネラ』コムアイ『秘密の同棲生活』直撃!」(『フライデー』7/22号)

 第3位。水曜日のカンパネラのコムアイ(23)が同棲生活を送っているという『フライデー』の記事。なんのこっちゃと思われる方が多いと思う。私もそうだった。
 『フライデー』によれば、12年から活動を開始し今注目を浴びている音楽ユニットのボーカルだそうだ。ちなみにカンパネラはイタリア語で「鐘」を意味する。

 「『きびだーん♪』というラップがクセになる『桃太郎』は、YouTubeで900万回以上の再生を記録している」(『フライデー』)

 私も聴いてみた。なかなかカネがかかったミュージックビデオで、昔話をラップにしてコムアイが魅力たっぷりに歌っている。いいよ!
 慶應大学の環境情報学部を卒業した才媛だが、なかなか個性的な女性らしい。同棲相手は30代のクリエイターのようだ。
 『フライデー』が直撃すると、その答えっぷりが堂々としていて、またいい。『フライデー』に撮られるのは紅白歌合戦に出てからだと思っていた。この人の恋愛事情はどうなっているんだろうと謎にしておきたかったと言いながら、その彼氏と食事をするから一緒に来ないかと記者氏を誘うのである。
 行ったところが大衆中華屋というのも泣かせる。結婚するかどうかはわからないらしいが、このコムアイはナイスキャラで売れると思うな。

 第2位。今週の『文春』には読み応えのある特集が多いが、人気AV女優の香西咲(こうざい・さき)の実名告発が興味深い。
 このところタレントとして勧誘したと思わせてAVに出演強要させる悪徳プロダクションの実態が明るみに出て社会問題化しているが、実名・顔出しの彼女の話は微に入り細を穿ち、この業界の悪辣さを浮かび上がらせる。
 香西氏が「マークス(後にマークスインベストメントと社名変更)」の社長・青木亮氏(40)と出会ったのは2010年だという。
 青木氏は当時六本木ヒルズに拠点を構え、投資会社という触れ込みだったそうだ。

 「面会した青木は、『俺なら君を売り出すのに、まずはストーリー仕立てのイメージDVD三本セットを発売して、芸能活動のフックにする』と持論を展開しました。肌の露出は『背中が見える程度』だと」(香西氏)

 だがそれから彼女をAVに出演させるべく追い込んでいく「洗脳」が8か月も続くのである。
 週1回の面談と自分の未来設計をノートに書き込ませるなど、私が見ても念の入った洗脳の仕方である。
 一人の魅力ある女性をAVに出せば、どれほど儲かるのかが透けて見える。相談係の女性をつけたり、マネジャーも何人かいた。そうして彼氏や家族から切り離され、彼女のまわりは青木氏の関係者ばかりになってしまう。
 その上占い師まで動員して洗脳した。そうして最初のAVに出演するときには「“思考停止”状態になっていました」(同)
 約3年の間に30本余のAVに出演し、ようやく独立を果たすのだ。

 「私は、AV業界そのものを否定するつもりはありません。知っていただきたいのは、一部には悪質なプロダクションが存在すること。そして、私のように何本もAV作品を出し続けた女優たちの中にも、実は苦しみ、のたうち回っている人間がいるんです。なぜ辞めなかったんだと思われるかもしれません。ですが、抜けるに抜けられない状況に追い込まれ、搾取され続ける絶望感は、体験した者にしか分からない。青木の支配下に置かれていた頃、私にとってAV撮影は、自傷行為そのものでした」(同)

 青木氏は『文春』の取材に答えて「出演するよう脅迫したことはないですし、AVであることを隠してきたつもりはありません」と話している。
 香西氏ともう一人の女性は、青木氏を相手取って訴訟の準備に入っているという。

 第1位。このところ『女性セブン』(以下、『セブン』)がすごい。今週も大スクープだが、ワイドショーはどこもやらなかったのではないか。
 あの『嵐』の二宮和也(かずなり)とフリーアナ・伊藤綾子とが「厳戒態勢」交際中であるというのである。

 「ふたりの逢瀬は、いつもマンションの部屋の中だ。
 東京都心にそびえる超高級タワーマンション。多数の監視カメラ、オートロックはもちろん、警備員やコンシェルジュが24時間常駐で、セキュリティーは万全。住民のプライバシーは守られ、多くの芸能人が住んでいる。
 その最上階近くの一室に、嵐・二宮和也(33才)が暮らしている。
 部屋の広さはゆうに100㎡を超える。彼にとってリラックスできる空間は何事にも代えがたい。二宮は、オフの時間があってもほとんど外出はしない“引きこもり”。家にこもってテレビゲームをしたり、マンガを読んだり、ギターで曲を作ったり。過去にテレビ番組で、『外食は年に2回だけ』と明かしたこともあった。
 そんな生活を送る二宮のそばに、最近、1人の女性の姿がある。彼女は、夕方のニュース番組『news every.』(日本テレビ系)で、『カルチャー&スポーツ』などを担当する伊藤綾子アナ(35才)だ」(『セブン』)

 6月のある週末、二宮が朝早く東京ドームに向かった日の夕方、「マンションの裏口から出てきたのは、ブルーのTシャツ、ジーパン、白スニーカーというラフな格好の伊藤アナだった。小さな斜めかけバッグを肩からかけている。ときおり左右を見渡したり、後ろを振り返ったりと周囲を気にしながら、近所にある高級スーパーへ。店内では手慣れた様子で食材を選ぶと、マンションに帰っていった」(同)という。
 仕事帰りに二宮のマンションへ向かって、近所で買い物を済ませると部屋に戻る。そんな伊藤アナの姿が連日、目撃されているという。
 二人の出会いは2012年8月。その年の『24時間テレビ』(日本テレビ系)の総合司会を務める二宮が、番組の宣伝のために『news every.』に出演したときだそうだ。
 二人はお互いのマンションを行き来し、外では絶対会わないという。
 彼女はすでに自分の家族に二宮を紹介したと関係者が話している。周囲にも結婚式の司会は誰にしようかなと言っているというから二人は本気のようだが、「ジャニーズ事務所」が許すか、そこが大きなハードルかもしれない。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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