スマホの位置情報機能を利用したゲーム『ポケモンGO』が、2016年を代表するヒット作になっている。専門的には「拡張現実(AR)」と呼ばれる技術を用い、現実世界とゲームとのあいだの壁を取り払った。プレイヤーはポケモントレーナーとなって、リアルに街を散策してポケモンをゲットするのだ。

 よく「任天堂のゲーム」とされるが(キャラクタービジネス的に間違っているわけではないものの)、アメリカのナイアンテック社が開発した『イングレス』というゲームがベース。そこに任天堂の関連企業・株式会社ポケモンなどがパートナーとして参加しているかっこうだ。まず先に位置情報による先駆的なゲームがあり、これによって集められたデータをもとに、『ポケモンGO』が生まれた構図がある。

 アメリカなどでは7月頭から先行配信、その熱狂ぶりは日本のユーザーにも期待を与え、7月22日の日本版スタートでまたたく間に社会現象化した。予想されたことではあるが、スマホを見ながら運転したり、立入禁止のスペースに無断で侵入する輩が現れ、マスコミでも連日取り上げられている。それはたしかに問題だが、誤解をおそれず言うなら、個人の公共マナーの話ということに尽きる。今回の配信、新しいことを始めるとき過剰にリスクを心配し、とかく時間がかかる日本において、案外と速かった印象もある。

 『ポケモンGO』をめぐっては、運動不足が解消された、うつ病を改善した、引きこもりを外に連れ出した……など、ポジティブな事例も多く伝えられている。「ポケモノミクス」と呼ばれる経済的な成功もさることながら、「ゲームがフィジカル・メンタル両面で好影響をもたらしている」という事実に対して、もっとマスコミは多く取り上げていい。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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