小池百合子新都知事が誕生した。初の女性都知事だが、石原慎太郎元都知事が“厚化粧”と失礼な表現をしたが、清新というよりも、大年増の遣り手婆さん都議会へ乗り込むというイメージではある(これまた大変失礼!)。

 メディアは選挙中から小池氏が批判していた「都議会のドン・内田茂」との対決を煽っているが、その内田都議(77)とはどんな人物なのか。

 私は、彼の言動を、テレビなどを通じて知っているだけだが、田舎のオッサンか夜店の縁日のテキ屋のような風情である。

 しかし『週刊ポスト』(8/12号、以下『ポスト』)によると、都庁のベテラン職員たちは彼のことを畏怖を込めて「神田大明神」と呼んでいるそうだ。ここは内田氏の地元・千代田区にある神社で平将門を祀ってあるが、彼に逆らうと、よほどの祟りがあるのだろうか。

 「都の重要政策から副知事、局長人事まで、内田都議の承諾がなければ一歩も進まない。内田さんの意向はさながら明神さまのご託宣」(都庁関係者)

 小池氏が自民党の推薦を得られなかったのは、「オレの言うことを聞かない候補はだめだ」と内田氏が反対したからだという。

 それだけではなく、自民党東京都連が所属議員に対して〈非推薦の候補を応援した場合は除名等の処分〉をするという恫喝文書を出した。

 小池に入れたら承知しないぞということだが、ここに都連幹事長である内田氏の名前があったから、この文書が威力を発揮したと『ポスト』は言う。

 だが、それだけ締め付けたにもかかわらず、小池氏は圧勝した。内田氏のご威光はなかったようだ。

 小池氏は出馬会見の時「(都連は)ブラックボックスだ」と語り、都議会の黒幕である内田氏をクローズアップさせたが、これも彼女の“謀(はかりごと)”だったのだろうか。さらに彼女は、都議会の冒頭解散、利権追及チームの創設を公約していた。

 小池氏は猪瀬、舛添両氏が短期間ですげ替えられてきたことに言及し、「誰かにとって都合が悪い、もしくは不都合なときに捨てられるということが続いてきたように思う」と言った。

 名指しこそしなかったものの、内田氏や一握りの幹部による都政運営を改め、「都民のための東京大改革を進めます」と参院選中にツイートした。

 2人の対決は日に日に盛り上がってきている。

 内田氏のプロフィールとはどんなものだろう。『週刊文春』(8/4号、以下『文春』)によると、内田氏は1956年に高校を中退して以降、75年に千代田区議選に初当選するまでの約20年間が空白だという。

 「中退後、内田氏はテキヤに出入りして、世の中の“裏側”に接していたようです。今でもテキヤの親分は『露店の陳情で頼れるのは内田氏だけ』と言っています。同級生の経営する電気屋で働いたり、喫茶店の店番をしたり。神田の雀荘にも入り浸り、自ら雀荘を経営している時もあった。長男の不良ぶりに、内田氏の母親も『茂だけが出来損ない』と嘆いていました」(内田氏の親しい知人)

 内田氏のブログによれば、28歳の時に火事で一家離散に陥ってしまう。障害を持つ2つ年下の弟を抱えて途方に暮れていたところを、後の参院議長の安井謙氏らに助けられ、政治の道を志したそうである。

 「実際は、知人が出馬した千代田区議選で、神田地区の票を取りまとめる中、政治の世界に接近して行きました。本人は『俺の周りは不良ばかりだから』と言っていましたが、伝手(つて)を頼り、鳩山威一郎元外相の下足番になりました。秘書の名刺も持ち歩き、政財界に人脈を広げていった。そして、知人の後釜として、七五年に区議選に初当選以来、四期区議を務めました」(支持者)

 89年、木村茂都議(当時)の千代田区長選出馬に伴う補選に出馬し、都議に初当選する。

 だが、木村氏の元側近はこう吐き捨てたという。

 「内田氏は当時から議会で大して質問をせず、ヤジばかり飛ばしていた。淡路町の事務所には、建設会社をいつも呼び寄せていました。木村区長室にも入札の予定価格を聞きに来るので、木村氏は秘書に『内田をもう部屋に入れるな』と言って締め出したほどです」

 そんな内田氏にとって最初の転機は、91年の都知事選だったという。自民党と公明党はNHKキャスターの磯村尚徳(ひさのり)氏を擁立。一方、都議会自民党の主流派は現職の鈴木俊一氏を支持した。

 都議3年目の内田氏は磯村氏についた。負けはしたが、自民党幹事長の小沢一郎氏との太いパイプを作り、都議会公明党の重鎮、藤井富雄氏とも親密な関係を築いたという。

 内田氏の娘の結婚披露宴に、小沢氏が主賓として出席した。内田夫婦は小沢夫婦とパリへ旅行に行ったりするほど親しかったそうである。

 時の権力者に取り入るのがうまい人物に思えるが、対する小池氏も“政界渡り鳥”の名をほしいままにしているから、似たもの同士ではある。

 『ポスト』によればドンの威光を広く知らしめたのが昨年12月、東京・港区芝の名刹、増上寺で営まれた内田氏夫人の通夜と葬儀であった。参加者は、その盛大さに圧倒されたという。

 葬儀委員長を務めたのは安倍首相。首相はその日(16日)、防衛省での自衛隊高級幹部会合や皇居での宮中昼食会などの公務の合間を縫って通夜に駆けつけた。

 内田流喧嘩の作法は、新米知事に就任初日から痛烈な先制パンチを見舞うことだそうだ。都政の絶対君主のように見えた石原慎太郎・元都知事でさえ翻弄されたという。

 「当選したばかりの石原知事が都議会の各会派に挨拶回りをした際、内田氏率いる都議会自民党の控室はもぬけの殻だった。内田氏の指示で知事の就任挨拶をボイコットしたわけです。この事件の後、知事は都議会運営で大苦境に立たされる」(過去5代の知事を取材してきたジャーナリスト)

 何しろ東京都のGDPは韓国一国に匹敵し、予算規模(年間約13兆円)はスウェーデンの国家予算に等しい。それだけの巨大組織の運営は都知事1人では不可能だから、4人の副知事が補佐する仕組みになっている。

 石原都知事は国会議員時代から政策秘書を務めた浜渦武生(はまうず・たけお)氏を副知事に起用しようとしたが、内田氏はこの人事案を都議会で否決し続けた。

 都知事の権限がいかに強大でも、予算案や人事案は議会の同意がなければ通らない。結局、折れたのは知事のほうだった。

 これを機に、内田氏は都議団だけではなく、東京選出の国会議員、都議、区議を統括する自民党東京都連幹事長に就任し、名実ともに都連のドンとなったというわけである。

 猪瀬氏が07年に石原都政の副知事に就任したが、この副知事時代に内田氏の利権の虎の尾を踏んだそうだ。

 当時、東京・千代田区の参院議員宿舎を移転する計画が持ち上がり、内田氏は移転後に更地となる地域の再開発を推進していた。

 それに対して、猪瀬氏は移転中止を提案し、現地を視察した石原都知事も反対を表明、計画は白紙撤回された。

 激怒した内田氏は石原氏が12年の都知事選で猪瀬氏を後継候補として指名すると、「都議会に根回しがない」と抵抗し、内田氏は選挙ポスター貼りも協力しなかったと当時の猪瀬氏の選対関係者が語っている。

 そんな彼も選挙では苦杯をなめている。自民党は09年7月の都議選で大敗して第一党の座を民主党に奪われ、内田氏も落選しているのである。

 だが内田氏は、石原都知事の息子・伸晃(のぶてる)氏を都連会長に留任させ、議席を失ったにもかかわらず、自らも都連幹事長に留任したのだ。議席を持たない幹事長は前代未聞だった。そのため内田氏は落選中も都政への力を全く失わなかったそうだ。

 内田氏の差配で自由に使えるカネが約10億円あるという。国会議員並みの集金力の背景には建設会社や不動産会社が潤う規制緩和をやっているからだと『文春』が書いている。

 『ポスト』は内田氏にはいくつかの疑惑があるという。内田氏は前回の都議選で返り咲きのために無理を重ねたそうだ。

 選挙事務所を開くにあたって地元にビール券を配ったのだ。選挙区内の有権者への金券配布は公選法違反に当たる。

 警視庁は捜査に動き、本人を書類送検した。ところが、東京地検は最終的に「違法性が認められるが、金額が少ない」という理由で不起訴処分にしたのである。

 また、内田氏は落選中、地元に本社を置く「東光電気工事」の監査役に就任し、現在も都議と兼職している。

 同社は五輪特需で業績を伸ばし、今年1月には東京都発注の2つの競技施設建設を大手ゼネコンと共同で受注した。

 しかし、地方自治法92条の2では、地方議員がその自治体の事業を請け負っている企業の役員を兼ねることを禁じており、違反すれば「その職を失う」(147条)と定めている。

 「『兼職』にあたるかどうかは議会が判断するが、果たしてここでもアンタッチャブルさを発揮するのか」(『ポスト』)

 内田氏の口癖は「知事と議会は二元代表制なんだ」。二元代表制という言葉は憲法にも地方自治法にも出てこないが、知事と議会はどちらも選挙で選ばれる有権者の代表で、知事をチェックする役割の議会は知事と対等な力を持つという意味で使われるそうである。

 「事実、都政は、たとえ都知事が何人交代しようと、127人の都議会に君臨するドンの意向に左右される議会の体質と構成が変わらない限り、改革が容易にできないという問題を抱え続けている」(『ポスト』)

 週刊誌報道を読む限り、小池氏の“敵”は少しばかり手強そうだが、私は「張り子の虎」ではないかと思っている。

 なぜなら、ドンといわれる人間はこれまでも多くいたが、ロッキード事件のときの児玉誉士夫(よしお)を見ればわかるように、その存在が明るみに出て表舞台に引きずり出されればドンは神通力を失うのである。

 メディアによって内田氏は最凶のヒールに祭り上げられてしまった。内田氏が小池イジメをはじめれば、都民やメディアの多くを敵に回すことになる

 内田氏は当面、小池氏と“和睦”するしかないはずである。そういう意味では小池新都知事は週刊誌に感謝すべきである。

 だが、小池氏に何かスキャンダルが出れば、ハイエナのように襲いかかってくるのは間違いない。私は、小池知事も短命に終わる気がするのだが。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 相模原市の「津久井やまゆり園」で起きた障がい者大量殺人事件は、やりきれないとしか言いようがない。この男は薬物使用や精神科への入院歴があれば極刑を免れると考えているふしがあるが、そんなことはない。衆院議長に渡そうとした手紙を見ればわかるように、犯行は計画的で冷静である。幼い子や障がい者のような究極の弱者をいたぶるヤツは人間のクズだ。そう何度呟いても、やりきれなさはますます強くなってくる。嫌な世の中になったものだ。

第1位 「『障害者ヘイトの狂信者』を育てた家庭環境」(『週刊新潮』8/4号)/「相模原障害者施設45人殺傷犯 植松聖『共犯になりかけた親友』の懺悔告白」(『週刊ポスト』8/12号)
第2位 「予約1万組! 西麻布『裸のレストラン』お楽しみガイド」(『週刊新潮』8/4号)
第3位 「ポケモンGO 誰がどうやっていくら儲けているのか」(『週刊現代』8/13号)

 第3位。「ポケモンGO」なる不可思議なものが流行っているらしい。私はこのゲームはいかがわしいと思っているが、『現代』を読んでその感を強くした。
 これは従来のスマホゲーム以上に莫大な儲けを稼ぎ出すまったく新しいビジネスモデルになる可能性が高いそうだ。
 経営コンサルタントの鈴木貴博氏は、企業から巨額の広告料を得られるのが大きいという。

 「ポケモンGOの凄みはユーザーを特定の場所に誘引できる『広告機能』を持ち合わせていることで、これがおカネを生む。具体的に説明すると、ゲーム内では『ポケストップ』と呼ばれる、ポケモンを捕まえるためのアイテムをゲットする場所があります。ユーザーはゲームを進める中で、このポケストップに立ち寄る必要がある。おのずとそこには、ユーザーが大挙して押し寄せます」

 そのポケストップの場所をどこに指定するかは、ゲーム制作会社のさじ加減ひとつで決められるという。
 要は、ポケストップになれば集客できるから、企業から広告費を取るビジネスが成立するというわけだ。
 何のことはない、制作者に操られて右往左往しているだけじゃないか。
 ITジャーナリストの三上洋氏は、自治体からの提携依頼が増えると言う。

 「たとえば自治体が観光ルートに沿って、アイテムを入手できるポケストップを大量申請する。そこがポケモンの『聖地』と認知されれば、旅行客を誘引する効果が期待できる。訪日する人が増える効果も期待できます」

 世界の広告市場は50兆円規模なので、その1割でも5兆円の売り上げが見込めると言うが、とらぬタヌキではないのか。
 ポケモンGOのビジネスモデルはそこにとどまらないそうだ。
 スマホジャーナリスト(そんなのがいるのか?)の石川温(つつむ)氏がこう話す。

 「どういう人がどういう街を歩いてゲームをしているか。今後はそうしたビッグデータがどんどん溜まっていくので、このデータを使った新規ビジネスができる。商業施設などを運営する企業へのマーケティング支援や、販促イベントをやりたい企業へのコンサルティング事業もやるでしょう」

 こうして得られる(つもりの?)莫大な利益は誰の懐に入るのか? 楽天証券経済研究所の今中能夫(やすお)アナリストは、こう試算する。

 「今期の課金売上高を1000億~1300億円と仮定すれば、まずその3割はグーグルとアップルに決済手数料として入ります。残りをポケモンGOを開発した米ナイアンティックと株式会社ポケモンの2社で分け合う。任天堂はポケモンの利益のうち出資分の32%を収益計上する形で、それは金額にして今期60億~80億円ほどになる」

 経済アナリストの森永卓郎氏も、「長期的な経済効果は、10兆円では済まない。政府の経済対策並みの効果で、その恩恵は回り回ってわれわれの賃金に反映される」と言うのだが、ホントかいな?
 たかがゲームとは言わないが、意図的に作り出されたものでは、一時的に大騒ぎするが、消えるのも早いと思う。
 それにこのゲームをやっていてわれを忘れ、痴漢に遭う女性や、車にはねられる人間も出ている。社会の不安を煽るようなものは、結局淘汰されていくと思うのだが、いかがかなご同輩?

 第2位。『新潮』が巷で話題の「西麻布 裸レストラン」について報じている。
 こうしたレストランの発祥の地はロンドンだという。ヒンドゥー語で“自然”を意味する名のレストランが6月中旬にオープンし、申し込みが殺到しておよそ3万人がキャンセル待ちだという。
 それを知って「これはいける」と思い立った人間が、東京にもつくってみんべェと港区内に「THE AMRITA(アムリタ)」という、サンスクリット語で“不老不死の薬”を意味する店を7月29日にオープンさせたのだ。
 ホームページには「ボディに自信の無い方は、ご相談ください」「20歳から60歳まで」「身長に対する平均体重の15キロ以上オーバーの方は入店が出来ません」と謳ってあり、違反した場合は前払い代金も戻らないという。
 まあ抜け道はあるようだが、3種類のコースのうち安いのでも1万4000円だから、かなり高いと言わざるを得ないだろう。
 だが、店に言わせると見物客が殺到して、あわてて店の場所を変えたという。
 客は入るとウェルカムドリンクを飲んでから更衣室に入り服を脱ぎ、薄手のカーテンでしきられたテーブル個室に入る。
 ロンドンはそのまま全裸だが、東京は規制が厳しいので、男は紙パンツ、女は紙ショーツと紙ブラジャーを着ける。
 スタッフは筋骨隆々の男ばかり。男のショーもあるそうだ。
 よほどの身体に自信のある人間しか入れなさそうだが、予約はすでに1万組を超えているという。
 男女比は男4に女6、全体の4割が外国人だという。「日頃から鍛えている肉体を披露する場所を探していた」というのが多く、スポーツジムで筋トレに励んでいるグループ40人の貸し切りも入っているそうだ。
 身体に自信のあるあなた、行ってみませんか。私は遠慮しておきますが。

 第1位。今週最大の話題はこれである。神奈川県相模原市の「津久井やまゆり園」(以下やまゆり園)で起きた障がい者大量殺人事件は極悪非道などという言葉も色あせてしまう鬼畜の犯行だ。
 火曜日(7月26日)早朝に事件が起きたため、『新潮』はさすがに事件に強いところを見せて3ページ、『文春』はワイドの1本として突っ込んでいる。だが両誌ともに内容にも切り口にも新味はない。
 1時間足らずの間に職員たちを結束バンドで縛り上げ、死者19人を含む40人以上をナイフや包丁で刺していった。異常なまでの障がい者に対する憎しみがなければ、これほど残忍な犯行ができるわけはない。
 容疑者とつけるのもけがらわしいが仕方ない。植松聖(さとし)容疑者(26)が大学を出てやまゆり園に入ってきたのは2012年の夏。最初はアルバイトの形で、冬に非常勤、翌年4月に常勤になっている。
 園には「学生時代に障がい者のボランティアをしていた」と志望動機を語っていたようだが、『新潮』で植松の同級生が、彼の本性をこう語っている。

 「教職免許を取るために学生時代に児童養護施設でボランティアをしていたのですが、そこにいる障害者の人たちを話題にして『キモい』『あいつら生きている意味がない』なんて言うのです。『お前、それやばいよ』と注意したのですが、度々口にしていました」

 『ポスト』は、植松が尊敬する彫り師に弟子入りし、本格的に彫り師修業を始めていたと友人が語っている。
 だが、尊敬していた彫り師との師弟関係も昨年末頃、突然絶たれてしまったという。植松が憧れた彫り師の友人がこう話す。

 「師匠だった彫り師が植松を“破門”にしたんです。言動がおかしく、会話もままならない状態だった。とくに“障害者を皆殺しにすべきです”と告白したことに彫り師が怒ったようです。ドラッグの使用が濃厚だったため、彼は植松との関係を断ち切った」

 やがてその本性をやまゆり園でも隠すことがなくなっていった。今年2月頃、園の関係者に「障がい者を殺す」「ずっと車椅子に縛られていることが幸せなのか。周りも不幸にする」と言っていたとスポニチ(7月28日付)が報じている。
 同じ頃、大島理森(ただもり)衆院議長の住む公邸に行き、警備の警察官に、今回の犯行を予告する手紙を手渡している。
 『ポスト』は植松から手紙の代筆を頼まれた親友がいたが、断ったと言う。当然だろう。
 「常軌を逸する発言であることは重々理解しております」と書いてはいるが、常人のものではない。特に、文面(『新潮』から引用)のここに注目するべきである。

 「障害者は人間としてではなく、動物として生活を過しております。(中略) 障害者は不幸を作ることしかできません。(中略)今こそ革命を行い、全人類の為に必要不可欠である辛い決断をする時だと考えます」

 植松容疑者がやったことは「障がい者テロ」である。弱者である障がい者に寄り添い、共に生きていくというのではなく、生きていく資格のない者、社会の迷惑者だというおぞましい考え方である。
 これは最近の「年寄りは早く死ね」「長生きは罪だ」「親に恩義など感じることはない。親を捨てろ」という年寄り排除の風潮と共通するものがあると思う。
 この事件に対して、障がい者施設の関係者たちやボランティア団体から非難の声が上がっているのは当然だろう。
 障がい者や高齢者を疎ましい者、社会保障を食い潰す怠け者と見做す空気が、植松のような歪んだ人間を生んでしまったと、私は思うのだ。
 そのうち国家による「老人狩り」が始まらないかと、心底心配している。
 大量殺人といえば、昭和13年に近隣住民を散弾銃で殺した「津山三十六人殺し」事件があるが、今回の事件と共通する、ある“符号”に気がついた。
 不謹慎だがお許しいただきたい。津久井やまゆり園。「津」「やま」となるのだ。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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