「地方の時代」がうたわれて久しい。思えば1970年代頃から存在することばだが、実際のところ、いまもって地方には明るい話題が少ない。その現実を直視しつつも、だからこそ地方は必死になる必要がある。

 いま、「自虐的な地方PR」が注目されている。その先陣を切ったのは、広島県の「おしい!広島県」といえるだろう。毒舌で知られる有吉弘行を観光大使として、「いいものはたくさんある、しかし知られていない」という思いを、「おいしい」に一文字足りない「おしい」という表現に込めた。

 他の自治体も追随して、ユーモアのセンスを競っている。茨城県では、都道府県別の魅力度調査でいつも最下位を争っている現状を「ポジティブに自虐」して、「のびしろ日本一。いばらき県」というスローガンを打ち出した。

 2011年から自虐ネタのカレンダーを発行しているのは島根県。その笑いのセンスは反響を呼び、いまやちょっとした「ベストセラー」である。2016年バージョンも「元祖、過疎県!」 「帰宅部がハードだ」 「教習所の中の方が交通量が多い」。……そのセンスの良さよ。

 観光客としての若い世代を地方に誘うためには、まずはネットで話題を集める必要がある。そのためには、聞こえがいい爽やかなアピールだけでは難しい。自虐型のPRは、成功率の高い手法として認知されつつあり、今後もどんどん広がっていくとみられる。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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