2016年9月、政府税制調査会が2017年度の税制改正論議をスタートさせた。改正の目玉は、「夫婦控除」。政府が、従来の「配偶者控除」に代わって、新たに導入を目指している新制度である。

 そもそも配偶者控除とは、配偶者(妻)が家事専業や年収103万円以下の場合、世帯主(夫)の課税所得を一律38万円減らす制度だ。要は、専業主婦がいる家計の税負担を軽くするものだ。

 そのため、パートの主婦らが、パート収入を103万円以下に抑える「103万円の壁」が問題となり、それが、「女性の社会進出」を阻む壁にもなっているという。

 「働き方改革」を旗印に掲げる安倍政権は、「アベノミクス」を再興させるためには、「女性の労働力アップが不可欠」との判断から、配偶者控除の廃止が喫緊の課題だとする立場だ。そして、その代替制度として浮上したのが、夫婦控除というわけである。

 夫婦控除は、簡単に言えば、夫婦であれば、年収や働き方を問わず、誰でも控除が受けられる制度。政府は、「導入が実現されれば、女性の社会進出が促進され、国内の労働力が増大する。経済発展をもたらす」とそろばんをはじく。

 ただ、専業主婦が減ることで、「伝統的な日本の家族像が崩れる」との懸念が保守層の間で強固に存在しているのも事実。また、内縁関係にある「夫婦」や「同性婚カップル」の扱いをどうするかの課題も整理する必要がある。

 導入に際しては、丁寧な議論が必要だ。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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