4月14日夜、16日未明に発生した熊本地震から、半年が経過する。

 この間に報告された人的被害の状況は、死者98名(災害関連死を含む)、重軽傷者2321名(「平成28年 熊本県熊本地方を震源とする地震に係る被害状況等について」平成28年9月14日)。

 大きな災害が起こると、地震の揺れによる建物の倒壊で大ケガをしたり、慣れない避難所生活によって体調を崩したりして、ふだん以上に医療を必要とする人が多くなる。未曾有の大災害となった東日本大震災では、限られた医療施設に患者が殺到した。

 一方で、患者を受け入れる医療施設は、災害による被害で停電や断水したり、医薬品などの供給がストップしたりして、過酷な環境のなかで診療を強いられることになる。場合によっては、地震や津波の被害で建物自体が倒壊するなどで、診療自体がままならないこともある。

 こうした厳しい状況下で行なわれるのが「災害医療」で、限られた医療資源のなかで、命の救命を行なうことが第一の目的となる。

 日常生活では、問診や検査などが丁寧に行なわれ、必要な治療がすべて受けられるが、災害医療では「ひとりでも多くの命を救う」ことが最優先される。いつも通りの医療は受けられないが、その点は理解しておく必要がある。

 混乱する現場で、ひとりでも多くの命を救うために、大災害が発生すると派遣されるのがDMAT(ディーマット、Disaster Medical Assistance Team)などの災害医療チームだ。被災地でも活動できる特殊な訓練を受けた医療チームで、医師、看護師、薬剤師、事務職員などで構成されている。

 災害が発生した急性期(おおむね48時間以内)から活動を始め、現地の医療が正常化するまで、行政などと連携しながら医療行為を行なう。

 また、災害時は医療制度も弾力的に取り扱われるようになり、災害の発生直後は健康保険証なしでも、病院や診療所で医療を受けられるような措置がとられる。災害救助法が適用された地域では、通常なら窓口で支払う自己負担分も、猶予・減免が行なわれる。

 法律用語では「猶予・減免」だが、東日本大震災のときは補正予算が組まれ、実質的に「免除」となった。大災害でケガや病気をした場合は、無料で医療を受けられるのだ。

 また、避難所や救護所で受けた医療は、災害救助法が適用されるので、すべて無料となる。 お金のことは心配しないで、安心して治療を受けて欲しい。

 国の災害医療チーム、医療費の無料措置も、1995年の阪神淡路大震災のときにはなかった災害医療の体制だ。

 人間の力で、自然災害をなくすことはできない。だが、繰り返される災害のなかで、日本では災害に対処するための医療体制を整えてきている。

 このところ、日本では、数年おきに大規模な災害に見舞われており、決して他人事ではない。いざという時に身を守るために、「災害医療」についても知っておきたい。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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