安倍政権の看板政策の一つ。主なテーマは(1)長時間労働の是正、(2)正社員と非正規労働者の間で賃金に差をつけない「同一労働同一賃金」の実現、(3)女性、高齢者の活用促進、(4)病気の治療、子育て、介護と仕事の両立など。政府は2016年度中に実行計画をまとめ、これを踏まえて、2017年の通常国会に関連法案を提出する方針だ。

 政府で旗振り役を務めるのは「働き方改革実現会議」。その議長には安倍首相が就任した。会議は、加藤勝信担当相、塩崎恭久厚生労働相ら関係閣僚と労使の代表、有識者で構成する。安倍首相は「働き手の視点に立つ」と述べ、改革実現会議の基本的立場を強調する。

 政府がいま「働き方改革」に力を入れるのは、労働者が働きやすい環境をつくるという労働政策的な目的があるのはもちろんだが「経済成長を図るための構造改革」という側面も大きい。

 人口減少と少子高齢化が加速する中で、労働力の底上げを図り、消費を活性化させるためには、女性や高齢者が働きやすい社会環境の整備が必要だからだ。また、高齢者や女性が働き手となることは、厳しい財政運営に直面している公的社会保険制度(年金、医療、介護など)を持続させることにもつながる。

 ただ、そうした経済成長の下支えや社会保険制度の維持は、あくまでも働き方改革の結果もたらされるものである。

 やはり、非正規労働者をなくし、長時間労働を減らして、労働現場に人間性を取り戻すことが本務であることに留意すべきである。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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