他人の吸ったたばこの煙。実に不快なものだが、これを吸い込んでしまうことを「受動喫煙」という。健康増進法(2003年施行)は、飲食店や学校や官公庁など多くの人が出入りする場所では、その管理者に対し、受動喫煙防止の「努力義務」を課している。だが、あくまでも「努力義務」でしかない。2016年8月公表された「たばこ白書」は、日本の受動喫煙防止対策は「世界保健機関」(WHO)が、「世界でも最低レベル」と判定したことを紹介している。

 そこで厚生労働省は、日本の受動喫煙防止を世界水準にあげようと、2016年10月、受動喫煙防止対策強化の「たたき台」をまとめた。

 たたき台のポイントは(1)多くの人々が利用する官公庁、社会福祉施設、スタジアムなど運動施設、大学は「建物内禁煙」、(2)医療機関、小中高等学校は「敷地内でも禁煙」、(3)飲食店内やホテル・旅館のロビー、職場、駅、空港ビルなどは建物内では原則禁煙としたうえで、喫煙室の設置を認める、(4)違反者には勧告や命令などを行ない、それでも是正されない場合は、施設の管理者などに罰則を科す――というものだ。

 厚生労働省は、2020年の東京五輪・パラリンピックに向けて、受動喫煙防止の強化に必要な法案を国会に提出することを目指している。ただ、飲食店など業界団体には、規制強化策に反対する声が少なくない。客離れを懸念しているからだ。そのため、たたき台は「関係者の意見を踏まえながら調整を進める」としている。法案化は難航する可能性がある。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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