まれにテレビのバラエティ番組で「鉄道マニア」が題材になることがある。旅番組のフォーマットで食や絶景を紹介しつつも、フィーチャーされるのはマニアたちの個性的な生態。なぜその道に就職しなかったのかと疑問を覚えるほどに、鉄道を愛しているのが門外漢にも伝わってくる。車内アナウンスの文言までみごとに再現する様子は、もはや笑ってしまうほどだ。

 そこに潜在的なニーズが見出されたのだろう。エクシングの通信カラオケ「JOYSOUND」が、2016年4月29日から「鉄道カラオケ」の配信を行なっている。第一弾は京浜急行電鉄(京急川崎~京急蒲田編、上大岡出発編、三崎口~三浦海岸編)。モニターには運転席から見た車窓の映像が流れ、「発車定時 快特 次 蒲田停車」「第2 出発進行!」といった運転士の喚呼(声出し確認)や、「まもなく京急蒲田 京急蒲田です」といった車掌によるアナウンスなどがテロップ表示される。8月には東武鉄道バージョンの配信も始まった。

 カラオケ業界はここ数年勢いがない。普段はカラオケに行かない層に向けた企画が求められていた。そこで白羽の矢が立ったのが鉄道というわけだ。背景には、エクシングが音楽・映像ソフトのテイチクエンタテインメントを傘下にしたことが挙げられる。テイチクは鉄道関連の商品も多く、映像を流用することが可能だったのだ。これはグループ内のコンテンツをうまく連結させたビジネスといえよう。大きな利益となって確立するか否かはまだ未知数だが、マニアからの評判は上々のようである。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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