人間、健康がいちばんだ。とはいえ、テレビなどのメディアやネット情報は、怖い怖いと食品の不安をあおり過ぎである。口にするものにはおおむねプラスとマイナスがあって、複合的にバランスでとらえないといけない。少しでもマイナスがあるものを次々に除外していけば、かえってカラダとこころの不健康を招くことになる。

 最近問題となっている「オルトレキシア」は、ギリシャ語の「正しい食欲」という意味から来ている。アメリカの医師スティーブン・ブラットマン氏が提唱した言葉で、「正しく、あるべき」食事を摂ろうとして、いつしか強迫観念にとらわれてしまうことだ。一種の摂食障害ととらえられているが、ポイントは「食べる量」ではなく、「食べる質」に固執している点である。

 食品添加物や遺伝子組み換え食品などはたしかにリスクがある。だが深刻なオルトレキシアに陥ると、「問題がまったくない食材」を求めて何時間も店から店をさまよい続けるという。その恐怖感は精神衛生上もよくはないし、栄養失調にもつながる。

 またダイエット中ならば、油や糖質も気になるだろう。しかし、少し口にしただけで深い罪悪感を覚え、中には嘔吐にまで至る症状もある。これは明らかに深刻な状態だ。たとえば「正義」を振りかざすのと同じようなもので、「健康になりたい」という思いもまた、過剰になるとロクなことにならない。結局は、なにごともほどほどがよいということだろう。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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