大手広告代理店・電通で痛ましい事件が発覚した。24歳の女性新入社員が2015年12月、過労自殺し、長時間労働による精神障害が原因と労災認定されたのだ。

 政府が「働き方改革」を看板政策に掲げ、長時間労働の是正に取り組もうとしている、そのさ中の事件発覚。これを受け、「36協定」に注目が集まっている。

 36協定は労働基準法36条に基づく労使協定。そもそも労基法は、労働時間を「1日8時間、週40時間まで」と定めている。しかし、労使が労基法36条に基づく労使協定を締結すれば、労働時間を延長したり、休日出勤させることができる。事実上、「1日8時間、週40時間労働」が骨抜きになっているのだ。

 厚生労働省(2013年度労働時間等総合実態調査)によると大企業の94.0%、中小企業の43.4%がこの36協定を結んでいるのが実態だ。

 件の電通も、時間外労働の上限を月70時間とする労使協定を結んでいたが、実際には上限を超える違法な時間外労働が行なわれていたようだ。実際、電通は労働基準監督署から是正勧告を受けていることが明らかになった。

 一方、「働き方改革」を進める政府は、36協定の見直しを検討中だ。専門家会議による議論を始めた。2016年内にも長時間労働の是正策をまとめるという。36協定の見直しは待ったなしだ。

 気になるのはその一方で、政府が、労働時間ではなく仕事の成果に給料を支払う「脱時間給制度」の導入を目指していることだ。「36協定の見直し、長時間労働の是正」と「脱時間給制度」は真逆で、矛盾した政策ではないか。政府は国民・労働者にきちんと説明する必要があるのではないか。
   

   

マンデー政経塾 / 板津久作   


板津久作(いたづ・きゅうさく)
月曜日「マンデー政経塾」担当。政治ジャーナリスト。永田町取材歴は20年。ただいま、糖質制限ダイエットに挑戦中。
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