10月26日に世界経済フォーラム(通称、ダボス会議)が発表した「ザ・グローバル・ジェンダー・ギャップ報告書2016」で、日本は「男女格差111位」という不名誉な烙印を捺されることになった。

 この報告書は、経済、教育、保健、政治の4分野について、各国の男女格差を数値化し、その総合点で順位付けが行なわれる。

 日本は前年の101位から順位を下げ、144か国中111位。先進7か国中では最下位だ。 4つの分野別では、教育が76位、保健が40位で、比較的、男女格差は少ないものの、経済は118位、政治は103位。日本の女性は、高等教育(大学など)の進学率の上昇は評価されたが、男性に比べて相対的に低い女性の所得水準、圧倒的に少ない女性の技術職や専門職の人数などで、経済分野での評価が低くなった。

 また、国会議員の女性比率は122位、女性管理職の比率は113位で、過去50年間で一度も女性の首相が誕生していないことも男女格差拡大の要因として挙げられている。

 アベノミクスでは、しきりと「女性活躍」が謳われているが、実態には程遠いことが、この報告書によって浮き彫りになったのだ。

 一方、2016年に男女格差がもっとも少なかったのは、8年連続でアイスランド。ついで、2位がフィンランド、3位がノルウェー、4位がスウェーデン、5位がルワンダとなっている。これら男女格差の少ない国に共通するのが、クオータ制を積極的に取り入れていることだ。政治に関わる人などを男女平等にするために、一定の比率で人数を割り当てるクオータ制を導入することで、男女共同参画を進めてきたという経緯がある。

 日本では、女性の社会参加が進まない理由を、女性自身の意識の問題として片付けようとする風潮がある。だが、今回の報告書の結果は、クオータ制の導入が生み出したことはあきらかで、男女格差が少ない国でも法整備なしでは、ここまでの成果を上げられたかどうかはわからない。

 「女性の活躍」と掛け声だけ勇ましくても、それを実現するための法整備がなければ、なかなか社会は変わっていかない。日本が、本気で女性の社会進出を促すなら、努力義務に留めるだけではなく、明確な数字を示した平等法の導入が必要ではないだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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