心ない者から不快な行動を受ける「ハラスメント」。「セクハラ」「パワハラ」はよく知られるところだ。最近の用法では、「スモハラ(スモークハラスメント、タバコに関したもの)」「ブラハラ(ブラッドタイプハラスメント、血液型で性格を決めつけられる)」など、これまであまり重くとられなかった対象もフォーカスするようになってきている。

 今回の「ヌーハラ」は何かといえば、ヌードルハラスメントのことだそう。これは昨今、日本を訪れる外国人観光客が急増していることと関係している。麺類には「すする」という文化があるが、これはわが国独特のもので、ふだん海外で暮らす者には「ズルズルッ」が不快だというのだ。では、今後気を遣って静かにラーメンを食べればいいのか? どうも極端な意見に感じられる。

 そもそも、すする音を気にしている外国人は、実際にどれくらいいるのだろう。海外では「食事中に音を立てる」ことはたしかにマナー違反だが、数ある国の中で日本に来るくらいだから、習慣も含めて日本の食文化を楽しむ余裕があるはずだろう。……などという議論が、2016年後半に活発化した。無下に否定するわけではないが、どうもこの件は、ツイッターなどで拡散したあやしい情報のようだ。外国人自身が積極的にヌーハラを訴えている例は、少なくともSNS上ではとんと見かけない。
   

   

旬wordウォッチ / 結城靖高   


結城靖高(ゆうき・やすたか)
火曜・木曜「旬Wordウォッチ」担当。STUDIO BEANS代表。出版社勤務を経て独立。新語・流行語の紹介からトリビアネタまで幅広い執筆活動を行う。雑誌・書籍の編集もフィールドの一つ。クイズ・パズルプランナーとしては、様々なプロジェクトに企画段階から参加。テレビ番組やソーシャルゲームにも作品を提供している。『書けそうで書けない小学校の漢字』(永岡書店)など著書・編著多数。
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