『週刊文春』(12/8号、以下『文春』)で医師&ジャーナリストの森田豊氏(53)がテレビでやっている医療番組は間違いだらけだと告発している。

 氏はハーバード大学専任講師や埼玉県立がんセンター医長などを歴任した人だが、テレビ朝日系の人気ドラマ『ドクターX~外科医・大門未知子~』のシリーズを最初から監修していることでも有名である。

 森田氏は、フジテレビ系の『その原因、Xにあり!』を見て、内容に疑義ありと自身のブログにアップしたのだ。

 10月28日から始まったばかりの番組で、よくある肩こりや冷え性といった身近な健康に対する悩みを題材にして、意外な対処法を提示し、タレントたちがそれを実践するという医療情報バラエティ番組である。

 たとえば、初回では「ぽっこりお腹」を取り上げ、そのお腹の原因は水分を含んだ「むくみ腸」にあるとして、最悪の場合は大腸がんになると脅かし、解決には「最強のぽっこりお腹撃退ドリンク」という生姜とココアを混ぜたものを3週間、朝晩飲み続けるといいと、3人の女性たちに実践してもらう。

 すると全員が、直腸が細くなった、腹囲が約10センチも細くなった、という「驚きの結論」だったと大騒ぎするという趣向である。

 森田氏はこう批判する。

 「実際のぽっこりお腹は、基本的に内臓脂肪や皮下脂肪が溜まった人、つまり肥満の人に多いのではないでしょうか。お腹が出ている人が番組を見て『自分はむくみ腹だ』と生姜ココアを飲み続けても劇的な効果が生まれるとは考えにくい。そもそも、むくみ腹によるぽっこりお腹と、肥満によるぽっこりお腹はどうやって区別するのか、番組では言及していない」

 しかも驚くことに、この生姜ココアを番組で推奨したのが「生姜サプリ販売会社の関係者」(『文春』)だというのだから、やらせだといわれかねない。

 そのほかにも、肩こり解消には、地面についていない「足の浮き指」を直せばいいと、足の指でタオルを引き寄せる運動を奨めていたが、「浮き指だけが肩こりの原因ではないはずです。浮き指を直せば全ての肩こりが治る、と受け止められる危険がある」(森田氏)

 森田氏はこの番組を見て、長期的な効果や症例数の少なさによる医学的根拠の乏しさのため、画期的な効果を望めない可能性も高いと思えてしまうと手厳しい。

 また、この番組に通底する大きな問題は、紹介した対処法が「ほぼ100%効果が出た」と結論付けられることだと指摘する。

 「新しい研究が成功するのは百回に一度あるかないか。全く新しい治療法や対処法は簡単に見つかりません。きちんとしたエビデンスがある新たな治療法が毎週幾つも出てくる事はあり得ないんです」

 怖いのは、本当にそれで悩んでいる人が、番組を真に受けて「独自の解決法」に身を委ねてしまうことだと言い、「決していい事ではないはずです」(同)

 批判されている番組は「やらせ」とまではいえないが、フジテレビにはやらせの「前科」がある。

 フジテレビ系列局の関西テレビが2004(平成16)年4月4日から2007(平成19)年1月14日まで放送していた『発掘!あるある大事典II』で、納豆によるダイエット効果を取り上げたところ、放送後、全国のスーパーやコンビニで納豆が売り切れる大騒動となったのである。

 これに関心を持った『週刊朝日』が取材を開始したところ、「捏造」や「無断引用」とみられる個所が続出したのだ。

 その後関西テレビが社内調査した結果、実際には血液検査を行なっていないにもかかわらず虚偽のデータを放映したことなどが露見し、千草宗一郎関西テレビ社長が謝罪し、放送を中止することを発表したのである。

 だが、こうした健康&医療情報番組は老舗のNHK『ためしてガッテン』(現在は『ガッテン!』)をはじめ、形を変えて後を絶たない。

 その背景には高齢化が進み、自分の健康に不安を覚える視聴者の増加がある。

 週刊誌では「飲んではいけない薬」「受けてはいけない手術」というキャンペーンを始めた『週刊現代』が注目を集め、他誌もこれを真似して毎週、危なっかしい「医療情報」が氾濫している。

 『文春』は、『週刊ポスト』が11/25号と12/2号でやっていた「『塩分を減らせば血圧は下がる』は間違いだった」という特集に対して、

 「一部分のデータを切り取って、都合のいい解釈をしているとしか考えられません」(金沢大学附属病院総合診療部長の野村英樹特任教授)

 と批判している。

 私も血圧が高いので読んでみたが、これを素直に信じると、酒の肴にしている塩辛や漬け物はどんどん食べてもいいんだと思いかねない記事である。

 週刊誌が、世相を切り取り、面白おかしく取り上げることはあっていいが、こと、病気や生死に関わることは、きちんとしたエビデンスに基づいた記事を出すべきことは言うまでもない。

 というのも、私も昔は、サルノコシカケががんに効く、紅茶キノコがすごいという記事を山ほどやってきたから、反省を込めて言うのだが。

 週刊誌の記事よりひどいのは新聞の書籍広告である。以前某紙の新聞評を1年やったことがある。そこで、新聞の書籍広告に「がんが治る!」「末期がんに効く」と謳っている本を無審査で載せるのは問題だと書いた。

 中には、本に載っているわけのわからない薬や健康食品を販売している会社が小さな出版社にカネを出し、本を出しているケースもままあるからだ。

 これでは薬事法違反を新聞が奨励しているようなものだと書いたら、担当者は頭をかいて「そうなんですよね。社内でも問題にはなるんですが」と言うだけだった。

 こうした真偽の定かではない夥しい医療情報が巷に氾濫するのは、医療不信が高まり、そのうえ医療費負担がどんどん増えていることへの“怨嗟”の声があると思うのだが、茶の間の視聴者ももっと賢くなるべきである。

 楽して痩せたい、呑んで食べて健康でいたい、そうした視聴者の無知に付け込んで、こうした同種の番組がつくられ、3か月で何十キロ痩せますなどというアスレチックジムのCMが洪水のように流れるのだ。

 どこぞのジムのCMで、醜く太った経済評論家が、何か月でこれだけ痩せて筋肉モリモリと、トレーニング後の痩せ細った醜い身体を晒していたのがあった。

 あれはジムから多額の出演謝礼が出ているはずだ。それに厳しいトレーニングと食事制限が課せられる。痩せたからといって、そのままにしておけばリバウンドが来て、以前より太ることになる。

 それだけの「覚悟」があれば、ジムなどへ行かなくても自分で痩せることができるはずである。

 健康は大事だが、テレビをボーッと見ているだけで健康になることは絶対ない。さあ、テレビから離れて、街へ出て、そぞろ歩こうではないか。チョット寒いけど。

元木昌彦が選ぶ週刊誌気になる記事ベスト3
 私は「暴走老人」という言葉が大好きだ。自分が年寄りになってわかるのは、人間年を取ると丸くなって、他人に優しくなどならないということだ。
 手足が不自由になるから、しょっちゅう不機嫌だ。映画館で映画を見ても、最初の15分で面白くないと、出てきてしまう。シルバー料金ということもあるがね。
 ワイドショーのコメンテーターの寝ぼけた発言に、テレビの前で怒鳴り狂い、家人に毎日嫌な顔をされる。
 駅でスマホをいじってノロノロ歩く若い奴を見ると、ケツを蹴飛ばしたくなる。だが安心していい、運転免許はないから。持ってたら……自分が怖い。

第1位 「成宮寛貴『コカイン吸引』疑惑の現場写真!」(『フライデー』12/16号)
第2位 「ジャニーズ新モテ男 伊野尾慧(26)『めざまし(フジ)』『あさチャン(TBS)』女子アナ“ザッピング二股愛”撮った!」(『週刊文春』12/8号)
第3位 「『優先席を譲れ!』老人が大炎上『けしからん』のは若者なのかジジイなのか」(『週刊ポスト』12/16号)

 第3位。先日ニュースでも流れたが、電車内で優先席の前に立つ老人と、その老人が怒鳴りつけている様子を、優先席に座りながら撮影しているバカ者、いや若者の動画が話題になった。
 『ポスト』によると、この動画への反応は、老人への賛意ではなく、非難のほうが多かったというのだ。
 ネットのバカどもの寝言にいちいち腹を立てていたらとは思うが、老人の一人として言わずにはいられない。おきゃがれ!
 今さら優先席とはなどと言わないが、ネットの「なんで上から目線で命令するのか」「まさに老害」「他人の善意を要求するのは不作法」というふざけたバカどもの言い分を、そのままお前たちにぶん投げ返してやる。
 それにしても今の若い奴らは、どうしてあんなに座わりたがるのだろうか。きちんとした食事をせずに、ファーストフードばかり食べているから、身体の芯から腑抜けているのであろう。
 第一、このごろの母親もいけない。電車に乗ってくると血眼になって空いてる席を探し、ガキを座らせる。
 ガキは、これから世間の荒波に揉まれて生きていくのだから、立たせておいて、足腰を強くしなければいけないはずだ。そんなことは母親たちの空っぽの頭には浮かばない。
 そのガキが長ずると、今回のようなバカになる。
 ジジイは座りたいなんて思っていない。優しい若者が席を譲りましょうと言ってくれても、結構ですと断る。その若者には可哀相なことをしたとは思うが、ジジイは自分の脚で立ち、歩けるのが嬉しいのだ。
 それができなくなったら喜んで席を譲ってもらおう。それにジジイは気が短いのだ。優先席にふんぞり返っているバカ者を見ると怒鳴りたくなるのだ。
 これからは映画『グラン・トリノ』のイーストウッドのようなジジイがたくさん出てきて、若者面したバカ者に容赦しないから、そう思え。

 第2位。ジャニーズの「Hey! Say! JUMP」のメンバーに伊野尾慧(いのお・けい、26)というのがいるそうだ。
 伊野尾はフジテレビ系の『めざましテレビ』のコメンテーターをやっているが、その裏番組TBS系『あさチャン』の女子アナ・宇垣美里(25)との局の壁を乗り越えた「JUMP愛」が発覚したと『文春』が報じている。
 それだけではない。『めざまし』で共演しているフジの女子アナ・三上真奈(27)が伊野尾のマンションから出てくるところもバシャッ! していたのだ。
 伊野尾は明治大学理工学部建築学科を卒業しているそうだが、女の子みたいな可愛い外見が売りの王子様キャラだという。
 朝のワイドショーでシノギを削っているライバル局同士だから、宇垣にとって、この恋愛発覚はさぞ肩身が狭いことだろう。
 三上のほうも、同じ番組に出ている男といい仲になったのでは、こちらも居づらいのではないか。
 AV女優から女子アナまで喰う雑食系のイケメンに惹かれる女心はわからないでもないが、もう少し自分の立場をわきまえる分別がなくてはいけないと思うのだがね。こんなことを申す私のほうが古いのでしょうな。

 第1位。今週の第1位は、ワイドショーが大騒ぎしていた『フライデー』のコカイン疑惑報道
 成宮寛貴(なりみや・ひろき、34)は、ドラマ『相棒』(テレビ朝日系)で、水谷豊演じる杉下右京とコンビを組む刑事・甲斐享役を15年3月まで務めた人気俳優。
 成宮が11月9日、自宅に友人2人を呼び、午前3時半頃から酔った成宮がコカインを吸い始めたというのだ。

 「ヒロキは部屋のなかでクラブミュージックを大音量で流したり、曲線がグニャグニャとうねる奇妙な映像をYouTubeで検索して『これヤバいよね』と笑っていました。酒も入っていたし、かなり上機嫌でしたよ。そして無造作に机の上に置かれていたコカインを小さなマドラーで掬(すく)い上げ、鼻から“シュッ”と吸い始めたんです。クスリが効いてくると目がトロンとしてきて、やたらとカラダをすり寄せてきた。それを避けようとしても、『なんで嫌がるの?』とジリジリ迫ってくるんです」

 こう証言するのは成宮の友人だと名乗るA氏。
 成宮はさらに、大麻やケタミンいう違法薬物までやり始めたという。
 『フライデー』にはコカインらしきものを前に下着姿の成宮が写り、次の写真ではそれを吸おうとするように、白い粉に手を伸ばしている成宮が写っている。
 この写真を見た薬物の更生施設関係者が、大麻を吸うための潰れた空き缶、コカインを掬いやすいスプーンなど「(成宮は=筆者注)かなり使い慣れている」と解説している。
 A氏は告発した理由を、成宮といるとクスリを買いに行かされるし、成宮は自分のことを恋人だと言いふらすのが嫌で、関係を断ち切るためにしたと語っている。
 写真を見る限り、隠し撮りではないようだ。成宮が安心していつものようにリラックスして薬物を使用しているように見える。
 A氏らは一緒にやっていないのだろうか。
 『フライデー』に直撃された成宮は、しどろもどろながら薬物はやっていないと否定している。
 さらに『フライデー』発売前に成宮は、報道各社にファクスで「事実無根の記事に対して非常に強い憤りを感じます。私、成宮寛貴は薬物を使用したことは一切ございません」と明言している。
 また事務所も、「講談社(フライデー編集部)に対し、断固として抗議し、民事・刑事問わずあらゆる法的措置をとって参る所存です」とコメントを発表した。
 万が一これが誤報だったら、『フライデー』廃刊もあり得るはずだ。成宮は裁判できっちり真偽を争うべきであること、言うまでもない。
 だが、ASKAや酒井法子の元夫が再び覚醒剤を使用したとして逮捕された。芸能界に蔓延する違法薬物汚染はまだまだ広がるに違いない。


 最後に『文春』恒例のミステリーベスト10を紹介しておこう。
 国内部門1位は『罪の声』(塩田武士)、2位が『真実の10メートル手前』(米澤穂信)、3位が『涙香迷宮』(竹本健治)
 海外部門は第1位が『傷だらけのカミーユ』(ピエール・ルメートル)、2位が『熊と踊れ』(アンデシュ・ルースルンド/ステファン・トゥンベリ)、3位が『ミスター・メルセデス』(スティーヴン・キング)
 私は『カミーユ』と『メルセデス』『暗幕のゲルニカ』(6位、原田ハマ)は読んだが、正直それほど感心したデキではない。
 『罪の声』はグリ森(グリコ森永)事件を題材にしているようだし、『熊と踊れ』も実際にあった事件を下敷きにしているらしいから、読んでみようと思っている。
   

   

読んだ気になる!週刊誌 / 元木昌彦   


元木昌彦(もとき・まさひこ)
金曜日「読んだ気になる!週刊誌」担当。1945年東京生まれ。早稲田大学商学部卒業後、講談社に入社。『FRIDAY』『週刊現代』の編集長をつとめる。「サイゾー」「J-CASTニュース」「週刊金曜日」で連載記事を執筆、また上智大学、法政大学、大正大学、明治学院大学などで「編集学」の講師もつとめている。2013年6月、「eBook Japan」で元木昌彦責任編集『e-ノンフィクション文庫』を創刊。著書に『週刊誌は死なず』(朝日新書)など。
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