12月12日、南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に参加している日本の陸上自衛隊に、新任務である「駆けつけ警護」の実施が可能になった。

 駆けつけ警護は、紛争地域に駐留する国連司令部の要請を受け、武装勢力に襲われた国連職員やNGO職員、他国軍兵士などを保護する任務。2015年9月19日未明に成立した安全保障関連法で、PKO協力法が改正され、紛争地での自衛隊の武器使用の拡大が認められたことで可能になった。

 紛争地で活動する自衛隊の武器使用について、自分自身や共に行動する仲間の身を守る正当防衛と緊急避難を超えるものは、憲法で禁止する武力行使にあたるとして、歴代政権では認めてこなかった。だが、昨年のPKO協力法改正で、防護する対象に「宿営地に所在する者」「保護しようとする活動関係者」が加えられ、任務を妨害する相手を排除する場合にも広げられた。

 そして、今年11月15日の閣議決定を受け、同月20日に新任務を付与された陸上自衛隊第9師団を中心とする派遣部隊が青森空港から南スーダンに出発したのだ。

 今回の駆けつけ警護は、首都ジュバ周辺に限定される予定で、(1)緊急の要請、(2)現地の治安当局や他国軍の歩兵部隊よりも速やかな対応ができる、(3)相手の規模や装備を踏まえ自衛隊で対応可能な範囲が出動要件だ。

 国は、派遣先のジュバの情勢が比較的安定していて、南スーダンでは停戦が成立していると国民には説明。11月15日の閣議後の記者会見で、安倍晋三首相は「自衛隊の安全を確保しつつ、有意義な活動を実施することが困難と判断する場合は、撤収を躊躇することはない」と発言した。

 一方で、南スーダンでは今年7月に大規模な衝突が発生し、停戦が崩壊しているという情報もある。

 PKOの筆頭任務は、現地の住民保護だ。戦闘が始まり、PKO基地に保護を求めてきた住民を守るためには、正当防衛ではなくても自衛隊も武器を取り、現地の政府軍や現地警察とも戦わざるを得なくなる可能性もある。その場合、他国との交戦を禁止している憲法9条に抵触してしまうのだ。

 さらに、PKOで起こった軍事的過失は、それぞれの国の軍法や軍事法廷で裁かれることになっているが、「軍」を持たない日本には、軍事的過失について裁く法律が存在しない。

 そのため、国の命令で参加した交戦であるにもかかわらず、自衛隊の過失は自衛隊員個人の犯罪として取り扱われるだけではなく、大きな国際問題に発展する可能性も大きい。

 つまり、駆けつけ警護は、国内的にも、国際的にも、まっとうな法的整備がされないまま、見切り発車されてしまったのだ。

 取り返しのつかない国際問題に発展させないためには、駆けつけ警護が抱える矛盾を、国民一人ひとりが理解し、原点に立ち返った議論をする必要があるのではないだろうか。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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