客寄せのために、実際の販売内容とは異なるものを表示する「おとり広告」。

 本当は手元にないものを販売するかのように偽っていたり、販売量が限定されているのに正しい個数が書かれていないなど、消費者に誤解を与える広告は、不当景品類及び不当表示防止法(景品表示法)で禁止されており、処罰の対象となっている。

 ところが、おとり広告は一向になくならず、とくに最近、問題となっているのが不動産情報サイトに掲載されるおとり物件だ。

 客寄せ目的で、すでに入居者がいる物件、最初から仲介する意思がない物件などをインターネットに掲載。それを見て連絡してきた客に、内見(入居前に実際に部屋の内部を見学すること)の予約をとって来店させ、「タッチの差で他の人に契約されてしまったが、ほかにこんな物件がある」と、自社の都合のいい物件を勧めるという手法だ。

 ただし、おとり広告で来店しても、そのほかに希望に合致する物件を見つけられれば、騙されたと感じない人もいる。これまでなかなか表面化してこなかったが、悪質なケースが目立つようになってきたため、「首都圏不動産公正取引協議会」が対策に乗り出すことになったのだ。

 おとり広告は景品表示法に違反するだけではなく、宅地建物取引業法でも誇大広告として禁止されている。違反すると免許取り消しや営業停止の対象となるが、今回は景品表示法に基づく自主ルールを適用。来年1月から、厳重警告・違約金(初回は最大50万円)に該当する場合は、違反した不動産業者が扱うすべての物件を1か月以上、5つの主要な不動産情報サイトに広告を掲載させないことになった。

 対象になる不動産業者は、前出の協議会に加盟する関東甲信越の1都9県にある約5万5000社。近畿圏でも同様の対策が講じられる予定だ。

 来店したのに、難癖をつけて内見の予約をした物件を見せてくれず、強引にほかの物件に誘導するような不動産業者は、おとり広告を使っている可能性がある。そのような業者は、のちのちトラブルに発展する可能性が高いので、早々に話を切り上げるのが賢明な判断だ。

 12月~3月は、会社の転勤、学校の入学などに伴い引越しも増える。都市部で、「新築・駅近・間取りが広くて、家賃が安い」など好条件の物件は、めったにあるものではない。おとり広告の被害に遭わないためには、不動産業者に任せっきりにせず、自分でも家賃の相場を調べたり、街の雰囲気を下見したりして、トラブルが起こらないようにしたいもの。

 うまい話には裏があるものだ。
   

   

ニッポン生活ジャーナル / 早川幸子   


早川幸子(はやかわ・ゆきこ)
水曜日「ニッポン生活ジャーナル」担当。フリーライター。千葉県生まれ。明治大学文学部卒業。編集プロダクション勤務後、1999年に独立。新聞や女性週刊誌、マネー誌に、医療、民間保険、社会保障、節約などの記事を寄稿。2008年から「日本の医療を守る市民の会」を協同主宰。著書に『読むだけで200万円節約できる! 医療費と医療保険&介護保険のトクする裏ワザ30』(ダイヤモンド社)など。
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